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HBAトレーニングセール開催

  • 2007年06月26日(火) 23時49分
 開催を1か月遅らせて6月25日までずれこんだ今年の「HBAトレーニングセール」は、うす曇りの札幌競馬場を会場に、午前8時半より公開調教、午後0時半よりせりが行なわれ、125頭が上場された。

公開調教 せり風景1

 名簿上では162頭が上場申し込みをしているのだが、結果的に37頭もの欠場馬が出てしまったのはいささか残念なところ。しかし、販売申込者(生産者が多い)の立場からしてみれば、先月開催された「ひだかトレーニングセール」の予想外の不振などから“弱気”にならざるを得ず、事前に商談をまとめたケースもあるだろうし、どうせ売れないと判断して自ら上場を取り下げた例もあるのだろう。

 結果は125頭中、落札が82頭。売却率は65.6%。売り上げ総額は4億5517万5000円(税込み)。昨年と比較すると、上場馬は46頭減少、落札馬も8頭減少、売却率は逆に13%上昇。売り上げ総額は約7300万の減少。最高価格馬は42番「モーリフェアリーの17」(父ヘクタープロテクター、母の父リズム、牡栗毛)の3675万円(税込み)。販売申込者・天羽禮治氏、生産・広瀬正昭氏(浦河)。

モーリフェアリーの17

 この馬は昨年の「八戸市場」にて370万円で落札された馬という。東京の(有)フリーダムトレーディングが購入し、1年後にその約10倍の価格で転売した。激しい競り合いの末にこの馬を落札したのは(有)ビッグレットファーム。ただし、抜けて高かったのはこの馬だけで、次点は53番「リアルターキンの17」(父サクラバクシンオー、母の父リアルシャダイ、牡鹿毛)の2047万5000円。この2頭を含め税込み1000万円以上の落札馬はわずか3頭にとどまった。昨年はこの市場で13頭もいたことから考えると、購買者の財布の紐が固くなってきているのかも知れない。82頭中、43頭が税込み500万円以下であった。昨年も90頭の落札馬のうちこの価格帯に属するのが46頭を数えた。即戦力としての需要の主流がこのあたりにあるとすれば、現在の生産と育成に関わるコストはいかにも高くつく。少なくとも、昨年秋からの育成費用を考えると200万円はかかっているはずで、この落札価格では「馬代金ゼロ」になる。今後、いかの上場馬の平均価格を上げて行くかが課題である。

せり風景2

 なお、今回の市場には、岩手県馬主会が参加し、300万円〜550万円(税抜き)で14頭を落札した。従来、岩手県馬主会は1歳馬市場の常連だったが、今回は、不足する2歳馬を補充するためもあってか、たぶん馬主会単位の団体購買としては初めて(と思われる)トレーニングセールに参加した。この14頭が大幅に売却率を上昇させる原動力になったことは間違いない。

せり風景3

 この市場の平均価格555万円は、2002年〜2006年の過去5年間の中では2005年(504万円)に次いで低く、昨年よりも32万円ほど下がった。ただ、税込み200万円以下の馬が少なかった(2頭)ことで、思ったほど平均価格は下落しなかったのがせめてもの救いか。昨年は200万円以下の落札馬が13頭もいたのだから。

 最後に日高町議連の名前で135番「スイートキャンディ2005」(父ナリタトップロード、牝鹿毛)が210万円で落札されたことについて。翌日の地元紙によればこの馬は道営競馬振興のために同町の議員連盟が共同所有しレースに供する予定という。公設市場での落札であり何ら問題はないのだが、個人的にはこの価格での落札にはやや複雑な感情を持ってしまう。同町の最大手ともいうべき名門牧場からの上場で、別にこの馬の収支が牧場経営に直接響くようなことはないだろうから一応の「美談」で報じられているが、これが零細牧場の上場馬ならばどうだったか。議連の方々により「買い叩かれた」との印象が残っていなければいいが、と思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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