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札幌記念

  • 2007年09月03日(月) 13時00分
 3場で「3重賞」がほぼ同時に行われた。3戦3勝となった牝馬エフティマイア(父フジキセキ)の新潟2歳Sも、マルブツイースター(父サクラバクシンオー)が抜け出して3戦2勝となった小倉2歳Sも中身はあったが、2歳戦はこれからまだまだ一戦ごとに評価が激しく変動する。たちまち秋のビッグレースに結びつく位置にあったのはGII格の「札幌記念」。しかし、こちらも難しい結果の大波乱だった。

 勝ったのは牝馬フサイチパンドラ。クイーンS・5着のあと連闘で札幌記念に出走の構えをみせたが、レースの中止延期とともに同馬にもカゼの症状が見られ、診断結果は陰性だったものの発熱もあった。そのため追い切りは直前の一本。そこで5番人気にとどまったところもあり、心持ち余裕のある体に映ったが、単騎マイペース。ちょっと気難しい面もあるフサイチパンドラにとってもっとも気分良く能力を発揮できる積極策だった。

 飛ばしそうな先行型は不在。藤田騎手は最初から行く気だったのだろう。前半の1000m通過60.7秒(後半の1000mが59.4秒)。絶妙のマイペースで後半の3Fをすべて11秒台でまとめる完勝だった。繰り上がりの幸運があったとはいえ、昨年のエリザベス女王杯の勝ち馬は、今年も秋のビッグレースに向けて上々のスタートが切れた。自分でレースを作れる戦法を身につけたのは大きい。ヘヴンリーロマンス、ファインモーション、さらには少し以前のエアグルーヴなど、札幌記念を制した牝馬は秋のビッグレースでの好走が半ば約束されている。

 明らかに先行馬有利の流れを考えると、楽に先行しながら1番人気で7着に失速のマツリダゴッホ、2番人気で早々と脱落し11着に沈んだサイレントプライドは不可解だった。同じ国枝厩舎のこの2頭。インフルエンザの不安を最小限でくぐりぬけたように見えたが、そろってここまで凡走すると(ともに2000m前後のレースでは崩れない馬だけに)、今回の日程変更は予想以上に大きかったのだろう。秋の展望と出発は、それぞれオールカマー、毎日王冠に持ち越されることになった。

 サクラメガワンダーは、後方追走から外を一気に伸びて函館記念とほとんど同じような形でまた3着。日程変更で札幌、函館を行き来した心配はあっても、直前は札幌に入っての最終追い切りだったから馬体減りの不安は少なかった。レース内容に進境が乏しいのは不満でも、滞在場所が移っても以前ほど飼い食いの不安が生じなかったから、一応は秋に向けて納得の札幌記念だったろう。

 今回は好走必至の好気配とみえたアドマイヤフジは、やや難しいタイプに乗り替わりの死角があったとはいえ、見せ場もなしの9着。賢い馬ゆえに逆に変則日程になったりすると良くないといわれるが、確かにそんなレース内容で、日程の変更が一番痛かったのは実はこの馬だったかもしれない。

 明るい展望が再び開けたのは、2着に突っ込んできたアグネスアーク。4戦4勝のあと、ちょっときついローテーションが堪えてスランプに陥っていたが、体調さえ戻ればトップクラス相手にもヒケを取らない素質馬であることを改めて示した。巧みに好位のインで折り合って進み、直線だけ外に出した津村騎手の好騎乗も光った。本当はもっとふっくらして欲しい体つきだが、初の2000mをこなしたのは大きい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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