最近はあまり本番と結びついてはいないが、菊花賞のトライアル。その菊花賞候補の少ない今年はここで強い内容をみせ、菊花賞挑戦に展望の広がるような勝ち馬が出現することが期待された。とにかくスケールあふれる成長株が欲しかった。
連勝記録を4まで伸ばしたロックドゥカンブは、集まった支持に応えただけでなく、さらに大きな成長を期待させる素晴らしい勝ち方だった。行きたがる面を見せないのがいい。前回のラジオNIKKEI賞では当時はまだ3戦目とあって、また福島コースの1800mのため、後続のスパートに合わせて動かざるをえなかった。だが、今回は他馬のペースアップを見つつ好位のインで軽く気合を入れながら、抜け出すタイミングを図る余裕さえあった。特筆すべきは、抜け出したあと外からゴールデンダリアが並びかけようとした瞬間、もうひとつのエンジンに点火するようにグイッとストライドが大きくなったことである。誉めすぎかもしれないが、リプレイで確認すると、本気の加速をみせたのはこのときだけだったような印象もある。
南半球生まれでまだ満3歳になっていないことは知られる。馬によって成長曲線は異なるとはいえ、秋のいまが、2着のゴールデンダリアがプリンシパルSを快走したぐらいの時期にあたるかもしれない。落ち着いてはいても体つきには明らかに幼い部分がある。だから、このあとさらに充実.成長するのは必至。
ファインモーションと同じ牝系の近親馬になり、母や祖母にはよりスタミナ色が濃いこと。さらには種牡馬レッドランサム産駒では、同じような配合になるエレクトロキューショニストをイメージしたいなどと考えていたが、まだ全容を現していない余裕のレース運びをみると、一段とこのあとが楽しみになった。先が長いだけに幼さの残るここで3000mの菊花賞に出走のレース選択は必ずしも望ましくはない危険もあるが、期待通りに、菊花賞の有力候補に加わったことだけは間違いない。
ゴールデンダリアは、いかにも2200mらしいペースで流れ、最後が11.8-11.9-11.9秒の決着だったことを考えると、本当はもう少し前で流れに乗りたかったろう。インを回ったロックドゥカンブに対し、4コーナーで外に回ったロスも考えると内容はほぼ互角ともいえるが、届くのか、馬体を並べられるのか、とみえた瞬間からゴールまでの両者のストライドには、スケールの差があったように映った。菊花賞に挑戦することになるが、本当の理想距離は2000m前後のようにも思える。
祖母はダイナアクトレス。そしてステージチャンプの一族になる矢野進厩舎ゆかりのスクリーンヒーローが菊花賞出走を確定させたのは実に楽しいが、ここでの3馬身差は夢の実現を展望するとき、さすがにちょっと大きかった。