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スプリンターズS

  • 2007年10月01日(月) 12時59分
 この短距離路線は「主役、エース格」不在といわれてきたが、若い3歳牝馬アストンマーチャンが快勝し、2着も芝に転じて一気に本格化の牝馬サンアディユ。期待を上回る可能性を秘めた新しい勢力が台頭してきた。

 3歳牝馬アストンマーチャンは、春のクラシックを展望した時期には距離を考え、なだめて好位に控える形も試みたが、行きたがる快速系。桜花賞の後、すぐ路線をこの短距離に定めて立て直しに成功した。

 早くに中舘騎手を確保したが、この騎乗依頼を決めた時点で勝機が開けたのかもしれない。小倉2歳Sで破格の前半3F32.5秒のダッシュを決めて快勝の典型的スピード馬。独特のピッチ走法(一部のファンの間ではマスタングスペシャル)が決めたダッシュは、先手必勝の馬場状態になった今回、フルにその威力が爆発した。

 中館騎手の短距離戦でのスタートの巧さ、後続に脚を使わせながらの「先行」は、関西陣営でも全面的に知れわたっている。春や秋のローカル開催で彼に飛び込む「騎乗依頼」には、ここで勝たなければもう中央場所に戻れないとか、抹消の危機が迫っているなど、必死の場合が少なくない。中舘騎手のローカルでの1勝の本当の価値を知る陣営の、ここ一番だからこそスタートを決めたい展望がまさにピタリだったといえる。

 体もひと回りもふた回りも大きくなって今回は486kg。いかにもスプリンターの迫力を感じさせた。不良馬場のため勝ち時計は1分09秒4(テンの3Fは33.1秒)にとどまったが、良馬場ならさらに圧倒的なスピード能力を爆発させるだろう。改めて現3歳の牝馬にはさまざまなトップホースがいることを示した秋のGIでもあった。

 今回は人気の中心になったサンアディユは、こちらもまた馬体重が増えて510kg。残念ながら今回はアストンマーチャンの先行力の前に屈したが、あの手応えで追って伸びてきたから立派。前回のセントウルSの上がり33.6秒が示すように、同じ短距離タイプでもこちらは追い比べで差す形になって真価の活きるタイプ。時計がかかったのはこの馬にとって不利ではなかったが、さすがに馬場が悪化しすぎたかもしれない。

 アイルラヴァゲインも中身の濃い惜しい3着。最内はこの日は決して有利な枠順ではなく、また理想は好位でスパートを待ちたかったのだろうが、どうみても切れの生きる馬場状態ではなくなっていたから、アストンマーチャンを目標に自分から動いて出るしかなかった。今春の絶好調の頃と比較すると、まだ良化途上と思える中間の動きだったことも合わせると、展望の広がる価値ある惜敗。

 キングストレイルはずっと外を回される展開。コースロスはあまりにも大きかった。楽々と追走できたからこの1200mには対応できている。スパートのタイミングが結果的には遅れたようにも映ったが、陣営の展望どおり選択レースの幅は確実にひろがった。

 春の高松宮記念で1〜2着のスズカフェニックス、ペールギュントの2頭は、例のインフルエンザ禍の影響が明らかで、不安の馬体づくり。当日輸送なしの入厩なのに、ともに馬体重マイナスの数字以上に小さくみえた。完調にはほど遠い状態だったから、さすがにこの敗戦は仕方がない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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