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アルゼンチン共和国杯

  • 2007年11月05日(月) 12時50分
 GIシリーズの間にはさまったGIIランクのハンデ戦。波乱は毎年のことだが、ここをステップにやがては…の新星が台頭するとき、このあとに続くGIシリーズが一段と充実する。勝った4歳アドマイヤジュピタはまだここが10戦目、通算[5-2-2-1]。期待を大きく上回る、非常に楽しみな新星の出現だった。

 カゼノコウテイが注文を付けた形で飛ばしたため、レース全体の流れは予想以上にきびしく勝ち時計の2分30秒9は東京コースでのレースレコード。結果、こういう距離に実績のあるベテラン勢が見せ場を作り、実際に上位を占めることになったが、2〜3番手追走から早めに自分で抜け出す形でしのぎ切ったのがアドマイヤジュピタ。

 厳しい内容のレースだったことを物語るように、2着のトウカイトリックは天皇賞・春3着など、こと長距離路線ではスタミナ自慢のトップグループの1頭だから、2分30秒9の時計が速いというだけでなく、降した相手を考えてもこのあとが非常に楽しみになる中身だった。

 母ジェイズジュエリーは、プロモーションの半妹。したがって、アドマイヤジュピタは昨年の青葉賞を快時計で逃げ切り、菊花賞3分02秒7の大レコードの立役者となったアドマイヤメインと、いとこになる。骨折から立ち直ったあと厳しいレースが連続したため、いきなりジャパンC挑戦などはせず、ひと息入れる予定というが、メイショウサムソンの世代にまた1頭、楽しみな馬が復活して加わった。村田騎手の思い切りのいい騎乗も新星の可能性を引き出す文句なしのファインプレーだったろう。

 トウカイトリックは今回は休み明け。使いながら良くなるスタミナ型で「目標のステイヤーズSに向けて…」などという陣営の声もあったうえ、平凡な追い切りの動きから10番人気の低評価にとどまったが、無理なく好位のインで流れに乗り、総合力の求められる厳しいレースになって粘りこんだ。さすがというしかない。小さな体を大きく見せていたからこのあとの上昇必至だろう。6歳リキアイサイレンスは、上がり馬というにはベテランすぎるかもしれないが、素晴らしい体つきになっている。少し出負けしたが馬群を割って進出、「他馬のムチが顔に入ってしまったのが痛い」というが、まあそれはともかく52kgの軽ハンデだけではないあと一歩の快走だった。ちょっと残念。

 ダンスアジョイは急に18kgの馬体重減は誤算。また初コースの不利もあったが、京都大賞典の小差4着馬らしい底力を示し、負けはしたがトウカイトリックとともに今年のアルゼンチン共和国杯が中身の濃いレースだったことを裏付ける形になっている。

 牝馬ヤマニンアラバスタはスパートの難しい馬だけに急に乗り代わりは痛いが、坂を上がったところでは届いたかの勢いだった。能力は出し切っている。納得だろう。

 人気のトウショウナイトは、途中までは昨年と同じ自分の形だったが、4角を回りさあこれからという地点でもういっぱい。まだ完調ではないとしても負け方が悪すぎた。体つきは良くなっていたが、以前のスランプ脱出にも時間がかかったことを考えるとこのあとのローテーションは展望しにくい。最終的に1番人気となったネヴァブションは内枠でもまれたとはいえ、最初は同じような位置にいたダンスアジョイ、リキアイサイレンスなどが好走しているのだから、まだ本来の調子ではなかったということだろう。

 ただ、この馬はもう少し積極策というか、強気のレースをした方がいいだろう。注目馬としては、決して結果論ではなくちょっと弱気すぎた気がする。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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