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エリザベス女王杯

  • 2007年11月12日(月) 13時00分
 前日まで断然の1番人気に支持されていたウオッカが当日の朝「出走取り消し」。残念ながら興味と注目度はだいぶ低くなってしまったが、快勝したダイワスカーレットの鮮やかなレースぶりは、それを補うに十分。素晴らしい内容だった。

 2着したのが昨年の勝ち馬フサイチパンドラ、3着が一昨年の勝ち馬スイ―プトウショウ。現3歳世代のレベルの高さを改めて証明すると同時に、明快に牝馬トップグループの世代交代も告げる完勝だった。スイープトウショウは当日のパドックで「このレースを最後に引退する」ことが告げられたという。

 スタートもダイワスカーレットが一番速かった。伏兵に行かせて2〜3番手でなだめる策も考えられたが、安藤勝己騎手以上にダイワスカーレット自身が自信満々。これまでよりさらに大きなストライドで自分が主導権を握ることを主張したかのようだった。秋華賞とは異なって中盤のペースダウンのない流れを作り、前半1000m通過60.6秒のあと心持ちひと息入れただけで、後半の4Fはすべて11秒台。後続の目標になりつつ、なおかつ全くつけ入る隙を与えなかった。早めにスパートして追いすがってきたのはフサイチパンドラだけ。全体には盛り上がりの乏しい展開に映ったが、それはダイワスカーレットに少しの隙もなかったのだから仕方がないのだろう。

 フサイチパンドラも、スイープトウショウもほぼ能力を出し切っている。さらには、これに続いたディアデラノビア以下も今回は完敗を認めるしかない。紛れの生じる流れにならなかったのだから、変に動いたところで形の作りようがなかった。見せ場が少なすぎた物足りなさは残ったが…。

 ダイワスカーレットを送るスカーレットインク一族の勢いはとどまるところを知らないかのようで、続く今週はダイワメジャーが注目を集め、次の週はJCダートにヴァーミリアンがいる。さらには2歳キングスエンブレムなども頭角を現しはじめ、ファミリーの広がりとその活力には驚くしかない。

 ウオッカの取り消しの原因は、凱旋門賞遠征を前に断念することになった「蹄球炎」だという。夏の症状ときわめて似た状態だと伝えられている。夏の場合は、蹄球炎そのものは数日で治まって乗り出すことができたが、登録したジャパンC出走はよほど急速に回復しない限り、可能性はあっても万全の状態は難しいだろう。

 今回11着にとどまったローブデコルテもそうだが、3歳春のクラシックを激走して勝つというのは大変なことで、今年はとくに、改めて失う部分も大きい馬が多いことを思い知らされ続けている。とくにウオッカの場合は、世代頂点のダービー馬。能力だけではなく幸運まですべて引き寄せたようなところもあったから、逆にツキに見放されたかのようなスランプ、不振も今は甘んじて受け入れなくてはならないのだろう。ダービー馬ゆえ、ときにはレース選択まで無言の制限を受けることもあるが、あわてることなく、本来のウオッカに立ち直ることを熱望したい。決してウオッカのためにはならない雑音は遮断していい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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