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ジャパンC

  • 2007年11月26日(月) 12時50分
 ドバイデューティーF、宝塚記念に続きアドマイヤムーンが今年3つ目のビッグレースを制し、2007年のチャンピオン古馬、さらには年度代表馬のタイトル争いでも大きくリードすることになった。

 ゴール寸前はポップロック、メイショウサムソンと「アタマ、クビ」差の大接戦となったが、内を通って一気にスパートしたアドマイヤムーンが、絶妙のコース取りをフルに生かしポップロックの猛追を封じてみせた。

 アドマイヤムーンはランキング(レーティング)ではこの組み合わせの中で文句なしにトップの評価。しかし、天皇賞・秋の不利があっての敗戦は別に、トレードされたダーレーグループのどうもすっきりしない一連のゴタゴタも重なるなど、なんとなく人気を落とす形になっていたが、改めて高い総合能力を示すことに成功した。アドマイヤムーンにはいい迷惑だろうが、ズラッと多くの、かつ様々な関係者が並んだ表彰式はファンが引いてしまうムードで、なんとなくあまり盛り上がらなかったから可哀想だった。

 しかし、レースはトップホースの集結した一戦らしく見どころ十分、好カードだった。ヴィクトリーが出負けし、また先手を主張する馬がいなかったため、チョウサンがペースメーカー。前半の1000m通過は60.1秒。決してスローでもなかったが、そこからの3Fが38.1秒。中盤で急にペースがガクンと落ち、後半の4〜3Fが46.5-34.3秒という高速のフィニッシュ。早めにスパートする伏兵がいなかった。

 好位のインにいたポップロックは直線、少し外に出したかったのだろう。その直後に接近したメイショウサムソンも天皇賞・秋とは違って馬場の荒れたインを嫌い外に回った。道中ポップロックの直後にいたアドマイヤムーンは、大きく開いた内をつく形になり、また、残り400mの地点で一気にスパートしたのが大正解。そこでのリードと、コース選択が最後の「アタマ差」だった気がする。ポップロックは、あくまで結果論にすぎないが、外に出したぶんの惜敗。抜かれてまた追い詰める形になってしまった。外のメイショウサムソンを視野に入れていたことはいうまでもなく、また、馬場の内側の芝が荒れていたことも事実なのだから仕方がない。

 メイショウサムソンは4角手前から少しずつピッチを上げ、早めにスパートの形にはなったが、勝ち馬に芝の荒れた内をつかれては体を寄せにいくべき相手がいなくなってしまったのと同じ。というよりサムソン、自身の上がり33.9秒はほぼ限界で、バテはしないがスパッと切れる馬ではない。レース上がりを34.3秒にしてしまった時点で今回は惜敗というより、着差以上の完敗だったろう。

 ウオッカはさすが。直線の中ほどでは差し切るかの勢いだった。前半の1200m1分12秒8の今回の流れはダービーとほとんど同じ。だから、タメにタメ、やっぱり上がり33秒台の爆発力を発揮することができたのだが、東京2400mのこういうペースの競馬は来年までありえず、体調万全ともいえない今回は善戦の形作りで納得だが、有馬記念ではどう動くのだろう。興味と心配はともに大きい。有馬記念の中山の2500mは合わないような気もするが、それはここまでのイメージが強すぎるからで、大きく変身して欲しい。メイショウサムソンは明らかに中山の有馬記念向き。ポップロックもまったく不安なし。引退予定のアドマイヤムーン以外は有馬記念でまた対決する。

 素晴らしい状態にみえたデルタブルースは、もったいない。もう少し早くスパートできれば、もっと接戦だったろう。それ以上にデキ絶好と見えた期待のインティライミはメイショウサムソンと勝負どころでは同じ位置。そこから伸びるかと思えたが、急に失速してしまった。佐藤哲騎手も首をかしげる凡走だが、みんながみんな考えられる通りの力を出し切れるのが競馬ではないから、あそこまで負ける力関係ではないとして渋々納得。迫力負けもあるが、ぜひ有馬記念に出走して欲しい。

 ディラントーマスを欠いた外国勢は、馬場や遠征の不利、レースの流れもあるが、世界のランキングからしてこの結果は妥当だろう。ディラントーマス陣営は、ディープインパクト陣営と同様にちょっと無知だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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