根多のデットーリ/かしわでちょうほう

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きたさん全力投球!

2017年06月22日(木)12時00分

注目数:84人
武豊は暴走しない。騎乗馬が大惨敗するようなペースでは逃げない。騎乗馬の力を的確に判断して、ペースを作って逃げる。たまには逃げて惨敗するときもある。でも少なくとも人気を背負った馬で逃げた場合はめったに惨敗しない。

暴走と思えるペースだとしてもそれはその馬の力を発揮するためのペースであって、暴走ではない。

キタサンブラックの大阪杯、天皇賞春は逃げてはいないけれど、番手からペースを判断して、早めに仕掛けて連勝した。
「少し仕掛けが早いかな」と思っても、「この馬なら大丈夫と判断して、スパートした」(週刊競馬ブックより)とコメントしていた。

その武豊が函館スプリントSでは、2人気の馬で逃げて惨敗してしまった(シュウジ10着)。なぜだろう? テン乗りだけが理由とは思えない。「少しペースが速いかなと思ったけど、この馬のリズムで運んだ」というコメントからも、シュウジの力なら踏ん張れるという判断があっての逃げだったことがわかる。

函館スプリント
1.06.8
3F32.2 1000m54.6

テンの3F32.2は速い。速いけれど、その日の競馬の流れ的には暴走とも言い切れない。

前日の芝1200のHTB杯で函館芝1200のレコードが出た。
1.07.6
3F33.3 1000m56.1
1000万での時計だ。

翌日の8R・平場の500万の芝1200で、再びレコードが出た。
1.07.5
3F32.7 1000m55.1

3F32.7のペースで逃げて1着したエリシェヴァの鞍上が武豊だった。
500万のレースで、このペースで逃げ切った。
でも、このレースをこのペースで逃げ切れてしまったことが函館スプリントの伏線になったのかもしれない。

500万のレースで32.7で、G3の函館スプリントで32.2。0.5速い。
「ちょっと速い」と感じても、重賞クラスの、しかもG1でも短距離なら人気になるほどの馬なら持つと考えてもおかしくない。

しかしシュウジは持たなかった。前記のコメントに付け加えるように「休み明けだったし、まだだったのかも」とあった。「まだだったのかも」の「かも」いうコメントから察すると、万全ではなくても持つと見立てていたように思える。

今週の宝塚記念の焦点は、キタサンブラックに尽きるだろう。
2000の大阪杯、3200の天皇賞春を着差以上の強さで連勝しているキタサンブラックが2200の宝塚で負けるとは思いにくい。

予想オッズ1.7〜1.8倍。この数字からもキタサンブラックの評価が圧倒的に高いことがわかる。

頭数も最大で11頭だ。
宝塚記念は13頭立て以下だと単4倍未満の馬が勝ちやすい。予想オッズで単4倍未満の馬はキタサンブラックしかいない。過去歴もキタサンブラックが負けないと教えてくれている。

逃げてよし、2番手、3番手に控えてよし。脚質も安定感抜群。
しかも類希なるスーパー勝負根性もある。負ける要素は見つからない。

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だけど、ふつうに心配ごとも当然ある。誰もが思うあの心配ごとだ。
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1シーズンで、G1を3つ連続で勝てるものなんだろうか? 
秋のG1・天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念を3連勝した馬はゼンノロブロイとテイエムオペラオーの2頭がいる。だからG1・3連勝はできない芸当ではない。

でも、大阪杯はこの10年で3番目に速い時計だった。天皇賞春はディープインパクトのレコードを0.9秒更新するスーパータイムだった。しかもゴール前は脚が上がって、根性だけで走っていた(そういうコメントもあった)。

最近は秋のG1の中距離3戦を全部取ろうとしている陣営はいない。1つでも取れればベスト、2つ取れれば超ベスト的なローテーションを組んでいる馬ばかりだ。それだけ最近の競馬で3つ頑張るのはしんどいということだろう。

キタサンブラックがG1を3連勝できないとは思わない。ただこの春の2戦は想定よりも死力を尽くしていないか? 調教的には「反動なし!」の見出しが躍っているとしても、調教と実戦は別だ。

大阪杯も天皇賞春もあえて仕掛けを早めて勝利をもぎ取っている。つまり相手の力を利用して、最後に力を発揮する戦法というより、自ら仕掛けて自力で勝負する、肉を切らせて骨を断つ戦法で2連勝しているとも言える。要は常に全力投球しているってことだ。

ディープインパクトの天皇賞春のレコードには死闘感はなかった。でもキタサンブラックのレコードには死闘感があった。だからふつうに、まっとうに心配だ。キタサン全力投球を3球連続でつづけられるか? いや常に全力投球する馬のはず。その全力投球で今回も1着できるか? そういえばnetkeibaニュースにあった武豊騎手会見でも、清水久師会見でも「宝塚を全力投球」というコメントがあった。

キタサンブラックには全力投球ということばが似合う。たのきんかキタサンかってぐらいだ。今回も今までと同じように全力投球で走ったら、誰も太刀打ちできないだろうな…。おっと、心配するはずが感心してしまった。

いかん、いかん!ここはあえて心配する場だった。決死の覚悟で心配せねば!

つまり、3つの全力投球が考えられる。
1 いつも通りにちょっと早い仕掛けで後続を振り切る全力投球。
2 いつも通りにちょっと早い仕掛けをするも、疲れが残っていて、いつもより早めに脚が上がってしまう全力投球。
3 いつもと違う雰囲気を察した武豊がいつもより仕掛けを遅らせる全力投球。

1番なら圧勝だ。
2番なら1着もあれば、3着もありそう。疲れていてもスーパー勝負根性もあるから、凌いでしまうかもしれない。でも去年と同じようにちょっとだけ負ける可能性もある。
3番が一番危ない気がする。それでもスーパー勝負根性で頑張るのだろうけど。仕掛けを遅らせる行為そのものがやや心配を募らせる。

大阪杯も天皇賞春も早めの仕掛けで1着してきた。その戦法がキタサンを一番輝かせる答えだとしたら、今回もそうするはずだ。で、そこにちょっとだけ心配をまぶす。つまり自分の選択は2番だ。

セントライト記念 1着
菊花賞      1着
有馬記念     3着

産経大阪杯    2着
天皇賞春     1着
宝塚記念     3着

京都大賞典    1着
ジャパンカップ  1着
有馬記念     2着

大阪杯      1着
天皇賞春     1着
宝塚記念     ?

これまたわかりきったことだけど、死角があるとすれば3戦目だろう。
今年の強さならそれも杞憂に終わるという見方もできるけど、今回はG1を2連勝しているところでの3戦目、それも遅くないペースを先行して、自力で仕掛けての3戦目だ。

うむ、やっぱり心配するならここだろう。

キタサンブラックを負かすのは大変だ。それは大阪杯、天皇賞春の週に記した「キタサンブラックの負かし方」のとおりだ。それをよく咀嚼して、飲み込んだ上で、キタサンブラックを決死の覚悟で、ちょっとだけ心配してみることにした。

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きたさん全力投球の死角、いや桃源ゾーン
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有馬記念と大阪杯で逃げたマルターズアポジーは、キタサンブラックに交わされると「しゅん」となってズルズル後退したように見えた。1頭で逃げると多少ペースが速くても頑張れるアポジーだけど、キタサン全力投球の前では気力が吸い取られるかのような後退ぶりだった。

力の違いといえば、それまでだけど、自分はキタサンブラックの放つオーラ(威圧)に圧倒されてしまったのではないか? と思った。そしたら大阪杯のレース後にアポジー騎乗の武士沢騎手が面白いことをコメントしていた。

「自分のペースに持ち込めたけど、来られてからのプレッシャーが違うのか、思ったようにギアが上がらなかった」(週刊競馬ブックより。以下同じ)

武士沢騎手は、キタサン全力投球のオーラをプレッシャーと表現していた。自分の表現が当たっているとは思わないが、素っ頓狂でもないはず。

同じく大阪杯では横山の典さん騎乗のサクラアンプルールが道中で、キタサンブラックに外から横付けで併走した。しかし、これまた思った以上の早さで後退してしまった(位置3-3-5-7)。2角を回って、すぐに後退して、最終的には13着に負けた。

力の違いといえばそれまでだけど、2角を回ったところで、後退する馬でもない。これもキタサン全力投球のオーラに威圧されたのではと思ったものだった。

レース後の典さんのコメントは「今日は機嫌が悪かった。それに尽きるね」だった。

キタサンブラックと併走して機嫌が悪くなったというのが自分の見立てだ。少々都合のいい解釈だと我ながら思うけど、ここは個人的にお気に入りのシーンなので、この解釈で行かせてもらう。

とにもかくにもキタサンブラックへの横付けは危険極まりないということだ。
しかし、その一方で、キタサンブラックの背後には走りやすい桃源っぽい環境が生まれているようにも思う。

大阪杯で2着に頑張ったステファノスは、キタサンブラックの背後を取って、最後まで垂れることなく追走した。
天皇賞春でキタサンブラックの背後を取ったのはアドマイヤデウスだった。デウスは4着に敗れたけれど、あわや3着のクビ差4着だった。10人気を思えば大健闘だ。

横付けは危険なオーラに巻き込まれるけれど、背後はオーラが流れて、むしろ走りやすいのかもしれない。思えば、去年の産経大阪杯でキタサンブラックを負かしたアンビシャスはキタサンの背後をずっと追走していた。直線でも典さんは馬体を合わせないように追っていたように見えた。

今回、キタサンブラックの背後を取る馬はどの馬かな?

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宝塚記念・注目馬
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ゴールドアクター
サトノクラウン

ゴールドアクターはどこまで本気で天皇賞春を狙っていたのだろう? 初めから宝塚記念を勝負と決めて、典さんを招聘し、鞍上と輸送の練習を兼ねて、天皇賞春を使ったということはないか。

天皇賞春の出遅れも狙ったものとは思わないけど、結果的にはゴールドアクターの資質を知る良い機会だったとしたら、今回はちゃんとスタートして、背後を取りに行くかもしれない。 

先週まではレコードの出る馬場だったけれど、今週の雨や週末に予報されてる雨で馬場が渋ったら、桃源ゾーンに入れるのではないか? 入れたからといって、勝てるかはわからない。ただきたさん全力投球が2番だったら、チャンスはあるはず。

サトノクラウンは、1着か6着の馬と決定していいのではないか。
全成績6-0-1-6。
気分がよければ1着。気分が乗らなければ6着(6着は過去3回)。

サトノクラウンは、香港でハイランドリールを差し切った。今回、キタサンブラックを差したら、大物食いとも認定できる。

大阪杯は気分が乗らなかったようだけど、その前の京都記念では、3番手を追走し、逃げる馬、番手馬が直線で内に入るのを尻目に外に出して、抜け出した。キタサンブラックとは馬体を合わせずに遠くから差したほうがいい。それがここでも出来るなら大物食いだ。

キタサンブラックの背後にゴールドアクター、ゴールドアクターの背後にサトノクラウン。そんな2段構え。馬場が渋って、きたさん全力投球が2番だったら少しは楽しめそう。
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コラムニストプロフィール

かしわでちょうほう
かしわでちょうほう
競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。