常石勝義&赤見千尋が見つけた 競馬の職人/常石勝義&赤見千尋

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LVR初代女王!高知・別府真衣騎手の奮闘

2017年03月21日(火)18時00分

注目数:22人
別府真衣騎手1

レディスヴィクトリーラウンド初代女王に輝いた別府真衣騎手(撮影:井上オークス)




別府騎手「波が激しいので、いい波のまま行きたいです」


 今年度から新たに始まったレディスヴィクトリーラウンド(以下LVR)。地方所属の女性騎手5名(鈴木麻優騎手、宮下瞳騎手、木之前葵騎手、別府真衣騎手、下村瑠衣騎手)が、盛岡、名古屋、佐賀、高知で各2レースずつ戦い、ポイントで争いました。レースには地元の男性騎手も参加しましたが、ポイントがつくのは女性騎手のみという形で、総合優勝を果たしたのは高知の別府真衣騎手でした!

赤見:最終戦を勝って、大逆転の総合優勝でしたね。おめでとうございます!

別府:ありがとうございます。優勝はすごく嬉しかったですし、思った以上に馬が走ってくれてびっくりしました。(最終戦で勝ったメイショウユピテルは)ずっと乗ってた馬で、これまで走るイメージが全然なかったんですよ(苦笑)。当日の朝、厩舎で馬の顔を撫でながら「いつもよりちょっとだけがんばってね」ってお願いしたんです。その効果があったのかはわからないですけど、レースでは本当に強い走りをしてくれて、嬉しい驚きでした。

別府真衣騎手2

宮下瞳騎手(左)、木之前葵騎手(右)を抑えて高知ラウンド優勝、総合優勝も果たした(撮影:井上オークス)


赤見:シリーズを振り返っていただきたいのですが、まずは盛岡で第1ステージが行われ、7着8着で4位という成績でした。

別府:わたし自身、本当に乗れてない時だったので、盛岡のレースを終えて、「この先どうなるんだろ…」って思いました。不安からスタートしたんですけど、名古屋(3位)、佐賀(2位)と、シリーズが進むごとに調子が上がっていって。特に、佐賀で人気薄の馬で1勝できたのが大きかったですね。余分な力が抜けたというか、すごくホッとしました。

赤見:最終ステージは地元高知でしたが、第1戦は7着という結果に。最終戦に挑むときはどんなお気持ちでした?

別府:高知で騎乗する馬が抽選で決まった時点で、「やばっ」と思いました(苦笑)。馬を知ってるだけに、さっきも言いましたけど走るイメージが持てなくて、正直優勝は厳しいかなって。1戦目が7着だったので、最後のレースに挑む時は、「後ろからは絶対イヤ」と思って、とにかく見せ場を作ることを意識しました。

赤見:レースは積極的に動いて、早め先頭から押し切りました。

別府:向正面に入った時点で手ごたえが普段と全然違ってて、「これ勝つかもしれない」って思って、3コーナーで勝利を確信しました。本当に強かったですし、勝てて嬉しかったです。

赤見:見事初代女王に輝いたわけですが、女性騎手のシリーズが久しぶりに始まって、女性騎手の注目度も上がっていますね。

別府:前みたいに女性騎手だけでレースができるほど人数がいないのは残念ですけど、こうしてまたシリーズで戦えることは有り難いですね。今は後輩たちもすごくがんばってますし、特に(木之前)葵ちゃんは勝ってますしね。瞳さんも復活して活躍してますから、みんなからいい刺激をもらっています。

別府真衣騎手3

宮下瞳騎手(右)からレディスヴィクトリーラウンド優勝の祝杯を受ける別府騎手(左、撮影:井上オークス)


赤見:瞳さんの復帰は本当に驚きましたが、別府騎手はあと少しのところで瞳さんの持つ女性騎手最高勝利記録を抜ける位置(633勝 / 2017年3月21日現在)まで来ていました。復帰と聞いた時はどんなお気持ちでした?

別府:聞いた時は正直びっくりしました。自分でもその数字を意識はしていましたけど、それ以上に周りの反応がすごかったですね。復帰を目指しているという話を聞く前は、「あと少しで抜けるぞ」ってすごく言われてて、復帰するってなったら、「もっともっと勝たなあかんぞ」って。そういう風に言われることが、いつの間にかすごくプレッシャーになっていたみたいなんです。勝たなきゃいけないって、かなり焦ってて…。ただただがむしゃらにがんばって、それで精神的にも肉体的にも疲れちゃったんですよね。「逃げてしまいたい」って思うくらい張り詰めていたんですけど、ある時、壊れたじゃないですけど、パンって気持ちが弾けて、「もういいや」って思えるようになりました。

赤見:かなり苦しんだんですね。

別府:正直、年々肉体的にはしんどくなっていくわけじゃないですか。その中で瞳さんが復帰して、体はキツいだろうなって思うんです。でもすごく活躍してて、わたしより年齢も上で、2人の息子さんを出産して、5年のブランクがある瞳さんがこんなにがんばっているんだから、自分にもできないはずはないって思ってから、またがんばれるようになって。すごくいい刺激になっているんですよね。今は吹っ切れて、またレースが楽しくなりました。でも年齢的にも毎年しんどくなっていくわけで、ただがむしゃらなだけじゃダメだなって思って、馬のことをすごく考えるようになりました。今回も、その効果が出ているかわからないけど、朝とかレース前とか馬に「お願いね」って伝えたりして。あんなこと前は絶対にしなかったんですけど、そういうのも自分の中で変わったというか、馬ありきで騎乗できるようになったかなって思います。

赤見:瞳さんはどんな存在ですか?

別府:前にやってたレディースジョッキーズシリーズの頃は、あんまりしゃべれなかったんです。年の近い先輩もいっぱいいたし、同期もいたし、なんだか遠い存在で。ただただ憧れていたんですけど、最近は話す機会が増えて。話せば話すほど「この人絶対抜けないじゃん」て思います。もう、やってることがすごすぎて。競馬に対しても超ストイックだし、今は家事、育児もやりながらじゃないですか。いつか数字的なことは抜けたとしても、この人を抜けることはないんだろうなって思うくらい、本当に尊敬しています。女性としてだけじゃなくて、人としてもカッコいいですし、強いですよね。

赤見:瞳さんもすごくカッコいいですし、別府騎手も可愛い上にカッコいいです!今回、わたしは高知に取材に行けなくて残念だったんですが、写真を井上オークスさんに送ってもらったんですよ。

別府:まさかうちの先生のじゃないですよね(笑)?なんか嬉しかったのか、写真を撮って20人くらいに一斉送信してました(笑)。もう、恥ずかしくて…。

別府真司師

別府騎手にとって父であり、師でもある別府真司調教師(撮影:井上オークス)


赤見:親子であり、師弟でもあり、仲いいですよね。

別府:今はいい関係ですね。昔は反抗したり、素直に先生の言うことを聞けなかった時期もありました。でも今は先生のこと尊敬しているし、言ってることも合っているなって思います。

赤見:去年は藤田菜七子騎手がデビューしてかなり注目され、高知に遠征に来た時もすごい盛り上がりでしたね。

別府:すごかったですね!なんかわたしも緊張しました(笑)。1レースからたくさんファンの方が来てくれて、馬もめっちゃ物見するし、すごかったですホントに。菜七子ちゃんも一生懸命がんばっているし、女性騎手が注目されるのは嬉しいですね。

赤見:では、今後の目標を教えてください。

別府:数字的に瞳ねえさんを抜かせていただいて、長い目で見たら1000勝を目標にしたいです。今年はここまで好調なので(15勝 / 2017年3月21日現在)、このままの勢いで行きたいですね。もう、本当に波が激しいので(苦笑)、いい波のまま行きたいです。そして、今年こそ優秀女性騎手賞を獲って、NARグランプリに行きたいです!
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コラムニストプロフィール

常石勝義&赤見千尋
常石勝義&赤見千尋
常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

赤見千尋
1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミックシリーズ」の「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍中。