生産地だより/田中哲実

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JRAブリーズアップセール・前篇

2017年04月26日(水)18時00分

注目数:20人
ブリーズアップセール会場全景

ブリーズアップセール会場全景


行き先が決まり、夢が大きく膨らむことになった


 4月25日(火)、中山競馬場にて今年度のJRAブリーズアップセール(以下BUS)が開催されたので、現地取材してきた。まだ朝晩はぐっと冷え込むこともある北海道と比べると、この時期の関東地方は本当に過ごしやすい。昨年ほど気温は高くならなかったが、それでも道産子の私たちには十分すぎるくらいの陽気だ。日当たりの良い場所にいると汗ばむくらいだ。

 今回の主たる目的のひとつは、当コラムでも度々触れてきた道立静内農高生産馬のゴートゥザノースの15(父バゴ、牝馬、血統名・叶夢=かのん)のセリを見届けることであった。去る4月11日に日高育成牧場で行なわれた育成馬展示会では、比較展示こそされたものの、やや歩様に気になる部分があるとのことから、その後の騎乗供覧を見合わせていた。

 それはあくまで、このBUS上場が最大の目標であることから、無理をさせずに自重したわけである。その甲斐あって、ゴートゥザノースの15は、中山競馬場に移動してからも順調に調整され、晴れてBUSを迎えることができた。

 BUSは2日間の日程で開催される。まず前日24日は、午後1時から上場馬の比較展示が行なわれた。熱心な馬主や調教師が、予めチェックしていた購買予定馬を1頭ずつ丹念に見て歩く姿が見られた。ただ、前日展示から会場入りしている人はそれほど多くはない。

前日展示風景

前日展示風景

 よく晴れた午後の日差しの下で、磨かれた各馬が10頭ずつ装鞍所に入ってきて、2列に並べられる。この日は比較的のんびりとした雰囲気である。午後3時前には展示も終わり、解散となった。

 さて翌25日(火)。BUS当日は、まず午前9時の騎乗供覧から日程が始まる。中山のダートコースを使って、全上場馬を10頭〜15頭ずつ7班に分割し、単走で向こう正面からスタートする。3コーナーあたりから徐々に速度を上げて行き、残り400(2ハロン)地点から計時される。

 名簿上では82頭が上場予定であったが、この時期の2歳馬は、調教が進むにつれて、あちこちに問題も出てくる。今年は最終的に13頭が欠場することになり、騎乗供覧には69頭が出てきた。その中でも、外傷や炎症のために調教進度の遅れた馬がいて、それらは軽めに追われる。改めて、1頭のサラブレッドがレースに出られるようになるまでには、さまざまなアクシデントがついて回るということを思い知らされた。

 騎乗供覧には、JRA職員の他、競馬学校騎手課程3年生や、現役の騎手数人も騎乗する。昨年に引き続き、藤田菜七子騎手も、計3鞍に騎乗していた。

藤田菜七子騎手(28番ルドラの15)

藤田菜七子騎手(28番ルドラの15)

 タイムは、ハロン12秒〜13秒台が標準的だが、中には11秒台で走破する馬も多くいて、それらは注目度が高くなった。2ハロン計23秒0が最速時計で、ゴートゥザノースの15は、12秒7-11秒8とまずまずの時計であった。騎乗していたのは競馬学校生徒の山田敬士君である。

ゴートゥザノースの15公開調教

ゴートゥザノースの15公開調教

 BUS当日のスケジュールはかなり忙しい。騎乗供覧が終わると、前日と同じ装鞍所にて比較展示が行なわれる。さすがに当日ともなれば人の数が圧倒的に増えて、ゆっくりと馬を見て歩く余裕はない。10頭ずつだいたい10分おきに馬が入れ替わるので、あっという間に終わる感じだ。

当日展示風景

当日展示風景

 ゴートゥザノースの15も、スタッフに引かれて装鞍所に出てきた。走った後のせいか、やや疲れたような表情である。何人かこの馬を熱心にチェックする姿が見られた。

ゴートゥザノースの15当日展示

ゴートゥザノースの15当日展示

ゴートゥザノースの15当日展示顔アップ

ゴートゥザノースの15当日展示顔アップ

 セリ開始は午後1時。用意された椅子がほぼ埋まる中、定刻通りにセリが始まった。ゴートゥザノースの15は32番だ。お台付け価格は200万円。ここでは日高のセリと異なり、お台付け価格を下回る購買者からの価格提示は認められない。またセリ上げは最低10万円単位である。

ゴートゥザノースの15、ステージに登場

ゴートゥザノースの15、ステージに登場

 セリが進み、いよいよ32番の登場だ。鑑定人が「200万円からお願いします」と場内に告げると、小刻みにではあるが、声がかかり、10万円ずつじわじわと価格が上がって行く。2人の競り合いになり、最終的に武田修氏が475万2千円(税込)で落札した。

 日高育成牧場の関係者も一様にホッとした表情であった。「いやぁ、これで中央デビューできそうですし、できることなら札幌あたりで走ってくれると本当に嬉しいですね」と平賀敦・日高育成牧場場長が語っていた。価格は決して高くはないが、とにかくこれで行き先が決まり、夢が大きく膨らむことになったのは何よりである。

 なお、全体では、69頭(牡38頭、牝31頭)中、67頭(牡37頭、牝30頭)が落札され、総額6億7219万2千円(税込)を売り上げた。1頭平均では1003万2716円(税込)という結果である(4月25日時点)。

 次回、もう一度、BUSについて触れる予定でいる。
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コラムニストプロフィール

田中哲実
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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