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改革相次ぐフランス競馬に学べ

  • 2008年07月19日(土) 20時00分
 「14日、ロンシャン競馬場のパリ大賞典でモンマルトルが優勝、凱旋門賞の本命馬に浮上した」。海外競馬通の方なら、もうこのニュースはご存知でしょう。日本からアドマイヤジュピタ、メイショウサムソンが参戦を予定している今年の凱旋門賞。どんなメンバーになるか、大いに気になるところです。

 パリ大賞典は凱旋門賞と同じコース、同じ距離で行われる3歳牡・牝馬限定戦。それだけに、凱旋門賞に直結するレースとされています。06年にはレイルリンクがここを勝って凱旋門賞も制しました。そう、最後の直線でディープインパクトを交わしていったあの馬です。今回のモンマルトルは、レイルリンクを上回る好タイムでパリ大賞典を制覇。日本勢にとっては強力なライバルが現れたようです。

 ところで、パリ大賞典は、04年までは6月後半の日曜日に距離2000mで行われていました。それが、05年以降はフランス革命記念日の7月14日にナイターで行われるようになり、距離も2400mに変更されました。実はこれ、“フランス競馬改革大作戦”の一環だったんです。

 パリ大賞典の開催日と距離が変更された05年には、フランスダービー(Prix du Jockey Club)の距離も2400mから2100mに短縮されました。ヨーロッパや日本でダービーと言えば2400mが当たり前。それを変更するというのは、“暴挙”と非難されてしまうかもしれません。でもフランスは、距離短縮を断行することで、英・愛ダービーとの差別化を図り、このところ欧州競馬のメーンとなりつつある2000m路線の馬を呼び込もうとしたのです。その代わりに、もともとロンシャン競馬場の初夏の名物重賞だったパリ大賞典を秋の凱旋門賞と同じ2400mに変更し、ステップレースとしての価値を高めました。さらに、フランス革命記念日のナイター開催にしたというのがシャレてますね。フランス競馬は、伝統への固執より、競馬のエンターテイメント性を向上させる現実的な対応を選んだわけです。

 フランスでは、04年にスタッド・ドゥ・フランスにオールウェザートラックを作って競馬を開催したこともあります。1998年にサッカー・ワールドカップのフランス大会が開催されたとき、決勝戦が行われたあのスタジアムです。陸上競技のトラックのようなコースをグルグル周回するレースをやっちゃったんですね。

 フランス競馬は新種の馬券発売にも積極的に取り組んでいます。最近の売れ筋はフランス式5連単の「Quinte+」。1着〜5着を着順通りに当てるものですが、基本は“1点買い”。出走馬の中から5着までに来そうな5頭を選び、その着順まで予想して買い目を決めます。「そんなの、なかなか当たらないだろう」って? その通り。なので、ピッタリ当たらなくても残念賞が用意されているんです。当然ながらピッタリ当たれば文句なしの1等賞。選んだ5頭がすべて5着までに入れば、着順不問の2等賞。1着から4着までが当たっていれば3等賞。選んだ5頭のうち4頭が5着以内に入っていれば4等賞。1着から3着までが当たっていれば5等賞というシステム。さらに昨年からは、この馬券を買うと4ケタの数字が付いてきて、残念賞に終わった馬券でも、抽選で決まるこの数字が一致すれば払い戻しが10倍になる、というボーナスルールもできました。全国で1日に1Rしか発売されない“限定商品”ですが、馬券と宝くじを融合させた“看板商品”として人気を呼んでいるとのことです。

 こういう改革や馬券の開発が相次いでいるということは、競馬人気が低迷しているとか、馬券の売り上げが減少傾向にあるといったことの裏返し。日本にとっても他人事ではありません。フランス競馬に学べることは多いはずです。

 さて、全レース3連単解禁が目玉になりそうな夏競馬。新潟開幕週恒例のアイビスサマーダッシュは、須田鷹雄サンのコラムをヒントに、ダート実績のあるナカヤマパラダイスを狙ってみます。

 そうそう、21日には、ばんえい帯広競馬にJRAのジョッキーが“参戦”する「JRAジョッキーDay」が開催されます。こちらもどうぞお楽しみに!

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テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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