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“まじめ”な日本、“したたか”な世界

  • 2008年10月11日(土) 23時50分
 凱旋門賞のメイショウサムソン、レースをさせてもらえませんでしたね。意図的だったかどうかはわかりませんが、ザルカヴァのスタートのタイミングを見計らうための目安になってしまったようです。

 現地からの映像には、各馬が続々と枠入りする中、ゲートの後方で待機するメイショウサムソンが映っていました。カメラが切り替わって、ザルカヴァの枠入りとゲート内の様子が大写しになったと思ったら、アッという間にスタート。一瞬、「メイショウサムソンはゲートインしたのか?」と思ったほどのタイミングでした。

 みなさんご存じの通り、ザルカヴァは凱旋門賞の前哨戦・ヴェルメイユ賞で大出遅れしています。そのときは、むしろ大出遅れのおかげで馬群に包まれることなく、スムーズに外に持ち出して、胸のすくような追い込み勝ちを決めました。ところが、本番の枠はよりによって最内の1番。再び出遅れたら、ライバルたちに前をふさがれて、厳しいレースを強いられるでしょう。当然ながらそのライバルたちは、前哨戦とは比べものにならないほど強くなっています。したがって、今回の凱旋門賞でザルカヴァが歴史的快挙を達成するには、ゲートをいかにうまくこなすかが、大きな課題だったのです。

 そこで、同馬を16頭中15番目に枠入りさせて、長くゲートの中で待たせることなく、次=最後の馬がゲートインしたタイミングで間髪を入れずにスタートさせれば、前走のような大出遅れをしないですむ、となったんじゃないですか? で、こともあろうに、その“最後の馬”を務めさせられちゃったのがメイショウサムソンだったわけです。

 もちろんこれは、あくまで私の推測。実際のところ、どうしてああいう段取りになったのかはわかりません。ただ、今回のレースのスタートに関して、私のような印象を持たれた方は大勢いらっしゃると思います。「あれは日本馬に対する嫌がらせ」という人もいるはずです。

 でも、フランスの競馬関係者やファンにとってみれば、ザルカヴァは国を代表する“期待の星”。凱旋門賞に勝てば、“何十年に1頭の名牝”、いや、ひょっとしたら、“フランス競馬史上最強の名馬”という称号が与えられるかもしれません。彼らが、そういう馬による歴史的快挙達成の瞬間を目撃したいと思うのは当たり前。われわれ日本人だって、ディープインパクトの時に、そんな雰囲気になったでしょう?

 考えてみれば、メイショウサムソンが最後の枠入りだったから、あれはいかがなものか、と思ったわけですが、ザルカヴァの前に枠入りさせられた他の14頭だって、ザルカヴァのために待たされていた、とも言えます。そういう、いろんなことがあるのが、競馬ってものですよね。

 ありきたりで大ざっぱなまとめになりますが、日本は“まじめ”、世界は相当に“したたか”です。オリンピックでもそう思いましたが、今回の凱旋門賞を見て、あらためて(勝手に)そう思っちゃいました。そりゃぁ、日本が負けるのは悔しいですよ。でも、何度跳ね返されようと“まじめ”を貫き通して、何十回か何百回に一度、“したたか”な世界をアッと言わせて勝つ、というのも、日本らしくていいと思うんですけど(なので、どうか日本が“不まじめ”になりませんように)。

 オッと、何の話を書いているのかわからなくなってきました。凱旋門賞はさておき、スプリンターズSの私の予想は、グチャグチャでしたね。“清原馬券”で3、4、5番を狙ったのに、それぞれに10を足した13、14、15番の3頭で決まるなんて…。毎日王冠は“まじめ”に、ウオッカとカンパニーの2頭軸3連複流しとしておきます。ではまた来週!

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テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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