先日行われた川崎記念。去年のJRA最優秀ダートホース=カネヒキリと地方競馬の年度代表馬=フリオーソとの一騎打ちという、最高のドラマが展開されました。
実況の山中アナウンサーが「この2頭のがっぷり四つ!」と言っていましたが、まさに東西両横綱による力のこもった大一番となりました。
今年の川崎記念の馬券売り上げは7億7147万5400円で、ヴァーミリアンが勝った2年前のレースを上回り、同レースのレコードを更新した、とのことです。
最終オッズは、カネヒキリの単勝が1.1倍、カネヒキリとサクセスブロッケンとの馬複が1.5倍、カネヒキリ→サクセスブロッケンの馬単が1.7倍、カネヒキリ→サクセスブロッケン→フリオーソの3連単が4.0倍。
1番人気がこれほどの低倍率だと、いわゆる馬券的妙味はなく、馬券は売れないように思われるのですが…。
今回の馬券がこんなに売れたのは、カネヒキリという“大看板”に加え、サクセスブロッケン、フリオーソなど、“看板役者”がソコソコ揃ったから、ということになるでしょう。
でもそれだけじゃぁ、当コラムも「今回はこのへんで」で終わっちゃいます。そこで、馬券が売れるのはどういうレースなのかを、最近のデータをもとに考えてみました。
まず、当日の川崎競馬の、川崎記念とそれ以外の全レースの賭け式別売り上げ割合(シェア)を比べてみました。前の数字が川崎記念、後ろがそれ以外の全レースです。
単勝=3.0%・2.1%、複勝=1.8%、2.6%、枠複=2.2%・4.6%、馬複=6.3%・9.6%、ワイド=3.2%・4.2%、枠単=1.5%・2.5%、馬単=11.3%・11.8%、3連複=9.1%、15.9%、3連単=61.7%、46.8%。川崎記念では単勝と3連単のシェアが他の全レースより大きくなっている、とくに3連単は大幅に(14.9ポイントも!)上回っているのがわかります。
みんながよく知っていて、安心して買える大本命馬がいると、(1)大本命馬の単勝でドカッと勝負する、(2)大本命馬を1着に固定し、2、3着の馬単を買うつもりで3連単を買う、(3)馬単の大本命馬2着軸流しより、3連単の2着に大本命馬を据えるほうが、同じ“ウラ目”でも妙味があり、それを狙って3連単を買う、という人とその購入額が増える、といった“プラス効果”が生まれるようです。
今回の川崎記念と同じようなレースが、つい最近、JRAにもありました。1月24日(土)の中山競馬メインレース、アレキサンドライトSです。これには、そう、カジノドライヴという大本命馬が出ていました。
単勝1.2倍、ドリーミーペガサスとの馬連2.7倍、同馬への馬単3.2倍、カジノドライヴ→ドリーミーペガサス→ダイワルビアの3連単が11.3倍。
カジノドライヴとの勝負を敬遠して(?)関西馬は参戦せず、11頭立ての少頭数。しかも人気は偏っています。「馬券を買うレースじゃない」と言っている人もいました。
ところが、同レースの売り上げは、前週、前々週に中山で行われた土曜日のメーンレース(前週は16頭、前々週は14頭立て)の売り上げを上回ったんです。“給料日”(23日)の直後だったから、という見方もあるでしょうが、やはりカジノドライヴの存在が大きかったと思います。
今度は、このレースと前週、前々週の中山土曜メーンレースの賭け式別売り上げ割合を比較してみました。最初がアレキサンドライトS、次が前週(ジャニュアリーS)、最後が前々週(ニューイヤーS)です。
単勝=3.6%・2.5%・2.8%、複勝=7.4%・4.0%・3.9%、枠連=2.4%、3.5%、3.6%、馬連=12.1%・18.4%・18.0%、ワイド=3.5%・4.1%・4.0%、馬単=12.0%・10.0%・10.5%、3連複=12.0%・18.8%・17.4%、3連単=47.1%・38.8%・39.8%。
ここでも、アレキサンドライトSの単勝と3連単のシェアが、前2週より大きくなっています。その主な理由は、川崎記念とほぼ同じでしょう。
この数字の中でおもしろいのは、複勝も大幅に増えていること。これは、JRAが実施している“プラス10”の効果と考えられます。
同レースのカジノドライヴの複勝オッズは1.1〜1.1倍。同馬が3着以内に入れば、100円につき10円の儲けが出るというものでした。そのため、川崎記念の(1)〜(3)に加え、(4)単勝よりさらに堅い複勝でも「10円つけば御の字」なので買う、という人とその購入額が大幅に増え、さらなる“プラス効果”を生んだものと思われます。
こういう分析は、主催者はもちろん、熱心な競馬ファンの方々も取り組んでいるでしょう。
今回のデータ分析から結論を出すのは早すぎますが、とりあえず、私が考える“馬券が売れるレース”とは、「世間に名の通った“千両役者”と、その脇を固める数頭の“名脇役”がいて、『これは堅い、銀行預金や株よりマシ』とばかりに大口購入者がドカンと大金をつぎ込んでくれる、10〜12頭立ての、“給料日”(通常は25日)から間を空けずに行われるメーンレース」としてみました。
今回のテーマについては、前に書いた「地方騎手の総合評価システム」とともに、まだまだ考えなくてはならないことがたくさんありますので、今後も機会があったら書かせていただくつもりです。
おしまいに、今週もいちおう私の狙い馬を。根岸Sはオフィサー、京都牝馬Sはザレマで行ってみます。では、今回はこのへんで。
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