灼熱の太陽がサンサンと…あつ〜い日が続いていますが、皆さん体調はいかがですか?
オリンピックも灼熱のように盛り上がってきましたね。日中は競馬観戦、深夜はオリンピック観戦と、少々寝不足状態ですが、汗びっしょりになりながら必死に前に進むエネルギーに感動です。あとのパラリンピックも応援しましょう。
さて、今日は、前に前に進むエネルギッシュな男、障害の名手・林満明騎手の秘密を公開!
障害最年長・林満明騎手
常石 :騎手生活何年になりますか?
林 :ンー、忘れたわ(笑)。それくらい長いことやってるね。
常石 :馬の仕事をされるようになってからだと、僕の年(35歳)と同じくらいでしょうね。
林 :うん、そうやな。北海道で親父が牧場をやっていたので、小さい時から手伝っていたんやけど、親父が亡くなって牧場を閉鎖する時に、お世話になっていた先生から「騎手にならへんか?」と勧められて、中竹(和也)調教師と一緒に栗東へ来ました。だから、騎手生活は27年目になりますかね。吉田三郎厩舎で騎手候補生として働かせていただき、1986年19歳の時に騎手デビューさせていただきました。
常石 :はじめから障害騎手だったんですか?
林 :いやいや、平地も乗っていたけど、「障害レースのほうが面白いな」と思って、障害に乗ることが多くなってきているね。障害レースは限られているけど、馬の背中に乗って走るだけではなくて、障害物を越えるたびに「ようやったな!」と思う。見るのと乗ってみるのとでは、感覚がまったく違うから面白いんだよ。危険も多いけど、しっかり向き合っていく。平地で活躍できなかった馬が障害レースで活躍してくれると嬉しいです。ひとつひとつ教えていきながら自分で作る魅力もありますね。
常石 :元々競馬の始まりって、森や草原を馬で走り回っている時に、丸太を越えたりして楽しんでいたのが障害レースにつながっているんだそうですよ。
騎手生活27年目「やめられへんわ」
林 :競馬の始まりは障害レースからでしょうね。
常石 :騎手生活27年目ということは、最年長ですか?
林 :もう、おじいさんやな。でも、おかげでたいした怪我も無く続けられているのは嬉しいですね。助手や厩務員は、技術も体力も必要で大変な仕事だと思う。上手に仕上げてくれた馬に乗せてもらうんだから、そういう意味では騎手業が一番楽かな(笑)。やめられへんわ。
常石 :もっともっと続けてくださいね。優秀障害騎手賞を5回も受賞されているんですね。重賞も9勝されて、すごいと思います。その源はなんですか?
林 :いやいや。特に何もないけど、馬に乗ることが大好きなだけです。物心ついた時から親父のそばで、馬と寝起きして乗っていたからね。辛い時もあったけど…。北海道から栗東に来たときは、今調教師になっていますが中竹先生とひとつの布団で寝ましたよ。兄弟みたいに大事にしていただいています。
あとひとつやりたいことが残っているんです。GIの中山大障害を勝ちたいですね。今期待馬がいるんです。中竹厩舎のヴァンダライズです。2連勝中(※取材時)で、夏に1回使って秋のGIへもって行きたいと思っています。たぶん中竹厩舎もそう思っていると思います。
常石 :楽しみですね。チャンスありと狙っているんですね。ヴァンダライズから目が離せませんね。しっかり◎をつけます。中竹先生は2歳年上の先輩で、先生も騎手をされていたんですよね。「あ・うん」の呼吸のお二人に見えるんですが?
林 :尊敬する大先輩です。中山大障害を2つ勝っているしね。悔しいけど、あの領域は超えられないです。「まだまだ修行がたらん」と叱られています。
常石 :函館や中京競馬場がリニューアルされましたが、障害のコースはどうですか?
林 :前の中京競馬場だったら置き障害ばっかりで、スピードがすごい速かったけど、新しくなってからは最初の障害が向こう正面に3つあって、1つ目までの距離が短くなっているので乗りやすくなった。中山大障害の向こう正面の下り坂は、いつ乗っても嫌なコースだけどね。
常石 :あれはすごいですよね。僕も経験がありますが、ジェットコースターに乗っているような下りです。Gショックみたいな感覚になりますね。
林 :そうそう。それに京都の3段跳びも難しいかな? いっぱいあるな。
常石 :障害レースで一番危険だと思うところはどんなところですか?
林 :これは障害レースに限らずだけど、ゲートを出る瞬間かな。外国のようにゲートボーイがいたらいいですね。外国ではゲートの枠のところに一人ずついて、馬を持ってくれているんですよね。競馬王国のヨーロッパはやはり進んでいますよ。
常石 :障害の飛越が上手い血統ってありますか?
林 :オペラハウス・ダンスインザダーク・ニューイングランドかな。
常石 :これからのハードル界を盛り上げていくために、されたいことはありますか?
林 :僕のような年より、若手のイケメンジョッキーが障害レースに挑戦して欲しいですね。危険も多いのであまり強いことは言えませんが、飛越の魅力を分かってもらいたいと思う。
兄の様に慕う中竹和也調教師と
常石 :完走した時は嬉しいですよね。最後になりますが、実は、中竹先生からメッセージを頂いてます。
中竹調教師より
「14歳の時からずっと同じ釜の飯を食べた仲間というより、兄弟みたいです。年齢に関係なく、障害騎手は心身ともにタフでないとやっていけないと思う。りんちゃんが乗ってるときは、返し馬の時から手にびっしょり汗かいてますよ。無事にゴールまで来てくれると、“いいぞ、いいぞ”と手を叩いてる。応援しているというより、お互いに刺激し合っているから、ひと鞍でも多く跨って欲しいと思う」
最近は、何処の世界でも師弟関係が希薄になりつつあると聞きますが、義理人情あふれる関係は、重みがあるなと感じました。りんちゃんこと林騎手、障害レースファンのために記録を更新し続けてください。常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]
◆次回予告
次回は赤見千尋さんが、美浦トレセン近郊の松風馬事センターをご紹介。関東馬の放牧先として活用されている牧場の仕事に迫ります。公開は8/14(火)18時、ご期待ください。