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凱旋門賞の挑戦者〜世界に一番近づいた馬、ナカヤマフェスタの真実

  • 2012年09月18日(火) 18時00分
 2010年、2011年と2年連続で凱旋門賞に挑戦したナカヤマフェスタ。中でも最初のチャレンジだった2010年のアタマ差2着には、多くのファンが驚かされ、同時に感動を覚えたのではないでしょうか。デビューからフェスタと共に歩んだ堀内岳志持ち乗り調教助手に、詳しいお話をお聞きしました。

堀内岳志持ち乗り調教助手

堀内岳志持ち乗り調教助手

赤見 :ナカヤマフェスタというと、2010年の宝塚記念前後から急激に強くなったイメージがあるんですが。

堀内 :「実はね、馬は変わってないんですよ。僕たち人間側が接し方を変えたんです。この仔は調教でゴネたり、成績的にもムラがあったりするから誤解されがちなんですけど、本当はすごく頭がよくて、扱いやすい馬なんです」

赤見 :頑固にゴネてる印象が強いので、かなりヤンチャなのかと思ってました。

堀内 :「そもそも最初に調教を嫌がり出したのは皐月賞前だったんですけど、その頃は無理やり躾というか、力づくで押え込んでいたんです。レースに行って悪さをするわけじゃないし、負けたレースでも敗因がハッキリしていたので、それでいいと思っていたんですけど…。秋に戻って来て、セントライト記念の前辺りからさらにゴネるようになって、追い切りの時に蛯名正義騎手を振り落して…でも、落すだけで逃げないんですよ」

赤見 :多くの馬は人間を振り落したら、そのまま走って逃げますよね。

堀内 :「そうなんです。要は、調教が嫌なだけなんですよ。ただその時もセントライトを勝ったので、『よかったよかった』となったんですけど、レース後上がって来る時に蛯名さんが首を傾げていたんですよね。『ちょっとイマイチだな』って。

 そうしたらもう菊花賞前に本当に調教が出来なくなったんです。コースを変えたり、他の馬たちで挟み込んでなんとか調教したんですけど、菊花賞は惨敗でした。その次の中日新聞杯でも惨敗して、レースのVTRを見たら馬が走るのを嫌がってたんです…そこでようやく、これじゃダメなんだってみんな気づきました」

赤見 :そこからどんな風に変えたんですか?

堀内 :「もう馬の好きにさせることにしました。今までは後ろからムチをチラつかせて、行け行けという風に促していたんですけど、とにかく馬が納得できるようなスタンスを取るようにしたんです。これで結果が出なかったら本当にダメだと思っていたので、メトロポリタンSを勝った時が一番嬉しかったですね」

赤見 :そのメトロポリタンSの直後くらいに凱旋門賞に登録したんですよね?

堀内 :「その頃は、宝塚記念で好走出来れば、秋は大きいとこ狙えるかななんて思ってたんです。もちろん国内でですよ。だから、まさか宝塚記念を勝って本当にフランスに行くことになるとは…。

 実はエルコンドルパサーの時、現地で見ていたんですよ。まだ厩務員になる前で茨城の牧場にいたんですけど、そこの研修旅行でフランスに行っていて。すごく感動して、『いつか自分も馬と一緒に来たい!』と思いましたけど、まさかその後二ノ宮厩舎に入ってこんなに早く夢が叶うとは思ってなかったです」

赤見 :実際フランスは大変でしたか?

堀内 :「僕自身は初めてですが、二ノ宮厩舎はエルコンドルパサーでの経験がありますからね。それにフェスタって、調教以外は本当に扱いやすいんですよ。ゴネることもあったけど、フェスタにとってはフランスの環境が合ってるみたいでした。日本みたいにコースがきっちりラチで区切られてるわけじゃなくて、森の中で今日はここ、今日はこっちみたいな感じで走るのでやりやすかったです」

赤見 :そしてレースへと向かうわけですが。

堀内 :「正直、半信半疑でした。フォワ賞はまだ次があるんで、体も少し余裕があったんですけど、いきなりフランスの馬場に対応してくれたので、これは次もいい競馬出来るかなと。でもまさかあそこまで走ってくれるとは…。

 凱旋門賞では3コーナーで他馬とぶつかったので、『終わった…』と思ったら、そこからまた頑張ってくれましたからね。直線は人生で一番叫びましたよ。何て言ってたか覚えてないですけど(笑)」

種牡馬生活を送る現在のナカヤマフェスタ

種牡馬生活を送る現在のフェスタ

赤見 :堀内さんにとって、フェスタはどんな存在ですか?

堀内 :「今までの僕の馬に対する考えをすべてブチ壊してくれましたね(笑)。いろいろ教えてくれた先生です。馬に対する視野が一気に広がりました。

 本当に頭が良くて、驚かされることが多かったです。1年ぶりにフランスに行って、森の中を覚えてるんですよ。大人しく歩いてるかと思ったら、『ここは立ち上がるところだ!』って、コースの入り口で急にゴネ出すんですから(笑)」

赤見 :今年の凱旋門賞は日本から見ているわけですけど。

堀内 :「オルフェーヴルの担当の森沢くんは競馬学校で同期なんで、頑張って欲しいですね。こうやって凱旋門挑戦て聞くと、僕もまた行きたいなって思います。いつかフェスタの子供で行けたら…それが新しい夢ですね」

 日本馬として凱旋門賞最先着している、記憶に残る馬ナカヤマフェスタ。同じ父を持つオルフェーヴルは、フェスタの結果を上回ることが出来るでしょうか。フォワ賞を快勝し、期待はさらに膨らみます!![取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
前哨戦のフォワ賞を見事勝利し、きたる凱旋門賞に弾みをつけたオルフェーヴル。次回の「競馬の職人」は、父池江泰郎元調教師のディープインパクトでの凱旋門賞遠征を見届け、今年はついにご自身が同じ舞台に管理馬を送りこむ池江泰寿調教師を直撃。世界制覇への意気込みを伺います。公開は9/25(火)18時、ご期待ください!

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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