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秋華賞勝利!岩田騎手『美味しい飯を食いたかったら自分の体で稼せがな』

  • 2012年10月16日(火) 18時00分
秋華賞勝利の岩田騎手直撃

秋華賞勝利の岩田騎手直撃

 いよいよ秋本番、GIレースが楽しみだあ。秋って楽しいことがいっぱいありますよね。僕はまず…食欲の秋かな。いやいや、やっぱり「馬肥ゆる秋」ですよね。みなさんもうーんと肥ゆる秋にしてくださいね。

 さて、秋華賞を勝ってジェンティルドンナを牝馬3冠に導き、今週はダービー馬ディープブリランテで菊花賞に挑む岩田騎手。昨年・今年と大活躍している胸のうちを覗いてきました。

*秋華賞直後の岩田騎手の生の声です*

常石 :競馬史上4頭目の3冠牝馬「ジェンティルドンナ号」誕生しましたね。おめでとうございます。岩田さんが言っていた通りのレース展開で迫力ありました(パチパチ)。秋華賞は、昨年アヴェンチュラ号でも勝って連覇でしょう。素晴らしいです。勝利を確信したのは、どの辺りですか?

岩田 :ありがとうございます。なんか照れるな。接戦だったのでゴールして掲示板を見るまでは確信できなかった。京都の内回りの2000mを積極的に乗ったけど、難しいレースやった。ダービーも今回も鼻差なんで、まるで俺の人生みたいやな。

常石 :今年はもうすでにGI5勝目ですよね。今年は特にダービー制覇、3冠牝馬誕生と勢いが違いますね。そのパワーは何処からきているんですか?

岩田 :馬に乗ること!今回は、ジェンティルドンナの能力に勝たせてもらった。仕掛けてもいつもの反応がなくて、中団でじっと我慢。最後の1ハロンから差しきったんだからすごい馬だよ。

ファンの多さにびっくりして、返し馬のとき落馬してしまい、俺も一瞬ドッキリだったけど、放馬させてはダメだと必死で手綱につかまってよかったわ。こんなとこで落馬しとったら格好悪いでしょう。

パドックで乗る前にドンナにキスしたのはちょっとプレッシャーもあったので、「共に頑張ろうな」とプレッシャーに勝つためにやったことだよ。人馬共に勝つことができ、またひとつ大きくなれたと思う。

やらねばいけない馬なんよ。どんな競馬でもできるし、直線を追い出すときは「オークスの時みたいな脚を使うで」と思っていた。まだまだ子供っぽいところはあるから、もっともっとお姉さんになってくれる馬なんよ。

勝ったから言えるんやけど、ブエナビスタみたいになってくれると思うから、先が楽しみやな。俺が弱気になったら馬に伝わってしまう。「オレが勝たしてやるんだ」という強い気持ちでこれからも行きます。この馬と一緒に世界に挑戦したい。チャンスのある馬やし、世界でも通用する名牝になると思う。ありがとう! みなさんに感謝せなあかんな。

「かっこよく走ったのを見てよ」

「かっこよく走ったのを見てよ」

*秋華賞1週前のインタビューです*

常石 :G1・スプリンターズS、ロードカナロアが外から襲い掛かり、台風みたいに突き抜けましたよね。1分06秒7のレースレコードでした。

あの時のパフォーマンスがとってもかっこよかったですよね。ガッツポーズではなく、手を大きく横に広げ「どうぞこの馬の勇姿を見てあげてください」って感じでした。こんな姿を最近よく見かけるんですが?

岩田 :そうか? 気のせいちゃうか? いやいや、僕は何でもしゃべるけど、馬は懸命に走っても何も言えないやろ。「こんなにかっこよく走ったところをどうぞ見てよ」、そんな意味をこめてね。恥ずかしいな(照笑)。

常石 :僕の知っている岩田さんは、ずっと強い競馬をしているんですが、何歳から馬に乗ってるんですか? 印象に残っている馬は?

岩田 :15歳から乗っていますよ。印象に残っているのは園田競馬でデビューしたときの馬ですね。デビューしたときはアラブの馬しかいなかったんですよね。JRAはサラブレッドの馬がいたので、憧れでしたよ。夢の世界でした。

移籍は、JRAは夢の世界でしたから、まさかの出来事なんよ。安藤騎手や小牧騎手が移籍し大活躍しているし、サラブレッドに乗ってる先輩がかっこよかったですね。僕もサラブレッドに乗ってみたかったです。安藤さんがいなかったら今のJRAでの僕はいなかったと思う。

人にも運にも恵まれ、JRAに移籍できたのはいろんな人に感謝しないといけないと思う。僕より上手い人いっぱいおるんやけど、門が開けたのはラッキーやなと思う。この世界に入って楽しく競馬人生を過ごさせていただいています。感謝ですね。

常石 :園田競馬といえば、今年からナイター競馬が始まりましたよね。ナイターって乗りにくいですか。

園田競馬のナイターで

園田競馬のナイターで

岩田 :ナイターは慣れやな。朝早い調教はナイターみたいなもんやで。つねちゃんも朝早く乗ってたやろ。

地方競馬がもっと盛り上がって活性化して欲しいですよ。僕が頑張ることによって盛り上がるとは思わないけど、地元を応援したいです。交流競走にも積極的に参加しています。交通の便もいいところやしね。もっと身近に感じて欲しいです。何らかの形で恩返ししたいです。

馬に乗るのが馬と自分のトレーニングにもつながってる。馬に乗ることで自分の健康管理ができ快調なんよ。馬に乗ってるのが楽しい。結果っていうのは後からついてくるもの。

JRAに来て7年になるけど、やっとやわ。やっと慣れてきたかな? やっとよ。自信持って乗れるようになったわ。認めてくれるようになってきたと思う。まだまだ未熟だし失敗もあるけど、もっと新しい自分になって輝きたい。大きな怪我もあったけど、ここに戻ってこれたのは、「もっと競馬に乗れ」ということやと思う。

頚椎をやって3か月休んだ時、はじめの1か月はまったく動けなかった。辛かったな。手術して開けようと思ったけど、神経がむちゃくちゃ入ってるから、今思うと開けんかってよかったわ。馬が好きやし、気力だけで戻ってこれた。次の世代にも渡していかなあかんと思うけど、そう簡単には渡されへんよ。あと何十年かは自分の世代で行きたい。まだまだ譲られへんな。

馬に乗ってなんぼやもんな。美味しい飯を食いたかったら自分の体で稼せがなあかんと思う。この世界は厳しい世界なんでハングリー精神を持ってるよ。

「この馬が強かったから勝たしてもらったんや」ではあかんと思う。「この馬と一緒に勝ったんや」って、馬を支配できるようにならないといけないと思う。この頃チョコチョコ強気で乗れるようになってきた。馬の気持ちになって馬のことを考えて乗らなあかんな。

常石 :自分なりに努力していることありますか

岩田 :馬と会話すること。馬語でね(爆笑)。落馬しないこと。騎乗停止にならないこと。

常石 :馬語って話せるんですか?

岩田 :話せるで。つねちゃんは話せないんか? あかんな(笑)。

やったらやっただけ応えてくれる。馬の口から手綱を伝わって、手にぞくぞくとくるものを感じるやろ。いろんな馬がおるけど、賢いし素直な動物なんで大好きやな。馬はうそつかないしね。人間はうそつくから嫌いやな。実は人間恐怖症ですよ(爆笑)。いろいろあるけどやっぱり馬に乗ってると暖かさが伝わってくるわな。

常石 :子供さんは素直で裏切らないでしょう。乗馬しているんですよね。
  
岩田 :息子は小学校6年生だから挑戦できるのにちょうどいい。「俺を追い越して見ろよ」と思っている。僕からは教えることいっぱいあると思うから、もっともっと乗って腕磨いていかなあかんと思ってます。一緒に乗れたら最高やけど、まだ譲られへんよ。

ええ仕事やで。オトコ馬もオンナ馬も乗せてもらって、ジェンティルドンナやディープブリランテの背中に乗れるのは、緊張感を持って楽しみたい。この背中に乗れるのは誇らしいことだから堂々と乗りたい。ちょっとしたチャンスを生かすことがやっとできるようになって、馬主さんにも信頼され、まだまだもっともっと輝きたいですね。

2012年、悲願のダービージョッキーに

2012年、悲願のダービージョッキーに

常石 :そんなに輝いたら「岩田さん」って声をかけられなくなりますね。今年はいい年でしょう。

岩田 :そうやな。今年はいい年やな。嬉しいわ。でも、良い時も悪い時もあるからガンバラな。まだまだやで。つねちゃんも一緒に頑張ろうな。この頃ちゃんと歩けるようになってきたやん。こうして僕のことも聞いてくれるようになったしな。

常石 :三冠を達成し、今週はいよいよ菊花賞ですね。意気込みは?

岩田 :落馬しないこと。以上(爆笑)。

常石 :それって究極ですね。岩田さんの鞭、変わっていますよね。その鞭で勝ちに導いていくんですね。

岩田 :短いやろ。ヨーロッパでも使える鞭やで。日本の鞭は固くて叩くと痛いけどヨーロッパの鞭は柔らかいからいいよ。つねちゃんお尻出してみー。一発気合入れたるから。(パンパン)

いろんな馬に乗せてもらっているけど、馬の力を僕と出すんやという思いで乗る。馬の最高の走りを見せ、馬の表情を最高に持って行きたい。僕が「どうぞ、見てちょうだい」と披露できるように頑張ります。

常石 :やっぱり痛いですよ(爆笑)。でも気合が入りました。ウイナーズサークルで待ってます。貴重な時間ありがとうございました。

 岩田騎手のお話は笑いが止まらず、とっても楽しかったです。その中で岩田騎手の「まだまだ…やるぞ」の心意気がぐいぐい伝わってきました。ありがとうございました。常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]

◆次回予告
次回は、週末に行われる重賞・スワンSに出走予定のレオアクティブをピックアップ。京成杯AHを制し、秋のマイル路線の主役を狙う同馬は、厩舎が大きな期待を寄せる一頭。その陣営の思いに、赤見千尋さんが迫ります。公開は10/23(火)18時。お楽しみに。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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