この道39年の長島厩務員
京成杯AHで古馬を一蹴し、マイル戦線の主役に躍り出たレオアクティブ。今週末のスワンステークスから、GIマイルチャンピオンシップを目指します! ここまでのご苦労や現在の状態を、この道39年の超ベテラン・長島五郎厩務員にお聞きしました。
赤見 :秋初戦の京成杯は、ものすごい切れ味でしたね!
長島 :「あの内がよく開いたよ。その前の朱鷺ステークスもいい脚でびっくりしたけど、さらに磨きがかかった感じだね。
NHKマイルの後に放牧に出して、戻ってきてからすごく大人しいんだよ。今まではコースの入り口まで僕が引っ張って行かないとダメだったけど、今はだいぶ落ち着いて、付いて行かなくても素直に行けるようになったから。その辺りが成長したね。
でも、今でもよくテキと話すんだけど、「この体で何であんなに走るんだろう」って(笑)」
赤見 :あの爆発力はどこから来るんですかね?
長島 :「ホントにそうなのよ。以前担当していたテレグノシスも爆発力があったけど、もっとガーっと長く使う感じだったからね。レオの場合はホントに一瞬。すんごい脚だよね。
似ているところといえば、テレグノも若馬の時はうるさかったよ〜。曳き運動はそうでもなかったけど、馬場の中が大変そうだった。レオは馬の少ない北馬場じゃないとダメ。周りに馬がいると興奮しちゃうから。もし北馬場がなかったら、こんなに走れなかったと思うよ」
赤見 :長島さんの曳き運動って、すごくゆったりしたペースで歩いてて、馬がリラックスしてるように見えるんですけど。
長島 :「だって早く歩けないから(笑)。でもね、いいところもあるんだよ。よく、馬は担当に似て来るって言われるでしょ。セカセカした人がやればセカセカした馬になるし、のんびりした人がやればのんびりした馬になる。僕は絶対に馬を急かさないから、だんだん落ち着いてくれるのかもしれないね」
一段と成長したレオアクティブ
赤見 :杉浦先生もその辺りを見越して長島さんを担当にしたんですかね。
長島 :「どうかなぁ。こんなに走るとは思ってなかったでしょ(笑)。思ってた?」
赤見 :だって、先生にとってすごく想い入れが強い馬だって言ってましたよ。
長島 :「そうそう。先代のオーナーが最後に買った馬なんだよね。それに、1歳の時の火事もあったでしょう。テキの話では、一緒にいた馬はみんな死んじゃったんだって。レオと一緒にもう1頭助け出されたけど、結局その仔も煙を吸っててダメだったって。
それが、うちの厩舎のショウワモダンが勝った安田記念の日なんだよ…。テキがすぐに会いに行ったら、レオの前髪がチリチリになってたっていうから、相当怖い思いをしたと思うよ」
赤見 :馬は火事になると、パニックになって住み慣れた馬房から絶対出ようとしないそうですね。
長島 :「そうなんだよね。他の馬たちは本当に可愛そうだけど…、レオは助けに行ったら自分からスタスタ出て来たらしいよ。本当に生命力の強い馬だよね」
赤見 :辛い経験を乗り越えて入厩して来たわけですが、最初の頃の印象はいかがでした?
長島 :「パッと見た瞬間、これは2歳戦の早いうちに勝たないとまずいなと思った(笑)。でも新馬戦でものすごい脚を使って、びっくりしたよ。これは走るわって僕も周りも感じたね。
2歳の頃は胴が詰まってて線が細かったけど、今はだいぶしっかりした。横から見るとわかるけど、すごくバランスがいいんだよ。クビもグーっと入るし、全身バネみたいな感じかな」
赤見 :スワンステークスに向けての調整はいかがですか?
長島 :「テキが2週前の11日にパーっと流して、もうだいぶ体は出来たって言ってたよ。先週併せでやったんで、今週はもう強いのはいらないんじゃないかな。仕上がりの早い馬だし、気持ちの面もあるから。それに今回は輸送もあるしね。
スワンの後、そのまま関西に滞在するか美浦に戻って来るか、テキと相談してるんだよ。美浦は馬場が2つあるから、馬の多い南馬場を避けて北馬場で調整出来るけど、栗東は1つでしょ。もしそこで興奮するようなら困るしね。マイルチャンピオンシップまで中2週でも、美浦に戻って来た方がいいのかもしれない。この馬は、輸送は大人しいから」
右側だけ刈り上げたタテガミ
タテガミが立っていた朝日杯
赤見 :あれだけコースで燃えてると、輸送とか新しい場所とか興奮しちゃうのかなって思うんですけど。
長島 :「意外とね、そうでもないのよ。カイバ食いも全然落ちないし、初めての場所で運動しても落ち着いてるから。燃えるのはコースだけ、それ以外は本当に大人しいの。でもスイッチ入ったら一気だからね。その辺りが爆発力の所以じゃないかな」
赤見 :レオくん、ピッカピカの毛づやですね。しかもタテガミが浮いてる(笑)。
長島 :「そうでしょ。今すごくいい状態だから。タテガミ、気付いちゃった? この馬のタテガミは特別剛毛なんだよ(笑)。縛っても編んでも立っちゃうの。朝日杯の時ノリちゃん(横山典弘騎手)に怒られてさ。「GIなんだからこんなザンバラ頭じゃダメだよ」って。それから色々研究して、究極の方法を編みだしたんだ!」
赤見 :あ〜!! よく見ると右側半分、根本から刈り上げてますね?
長島 :「そうなの。パッと見、刈り上げてるってわからないでしょ。半分の量でやっと普通に見えるんだから。こんな馬、なかなかいないよね(笑)」
今回の調整も順調そのもののレオアクティブ。京都競馬場にお越しの方は、ぜひパドックで特別使用のタテガミにも注目してみて下さいね。[取材:赤見千尋/美浦]
◆次回予告
次週の「競馬の職人」は、栗東担当の常石勝義さんが専門紙のトラックマンに密着。知られざるプロの仕事ぶりをご紹介します。公開は10/30(火)18時、お楽しみに。