◆未だに残る、交流がほとんどなかった時代の重賞体系
8月13日に行われた大井の黒潮盃。密かに兵庫から遠征のトーコーガイアを応援していたのだが、人気を集めた地元南関東の3頭が人気どおりの順で決着。トーコーガイアは残念ながら見せ場をつくれず9着だった。
地方競馬の3歳戦は、6月上旬に“ダービーウイーク”という一大イベントをつくり、そこから7月上旬のジャパンダートダービーJpnIへという流れをつくったことで、全国的に連携した盛り上がりを見せるようになった。ただ現実問題としてジャパンダートダービーは中央一線級の壁が厚く、黒潮盃が南関東以外の地区の有力3歳馬が目指すレースとしても定着してきているが、これも悪いことではない。
そして牝馬に関しては、グランダム・ジャパンのシリーズによって全国的な盛り上がりを見せている。
こうなると気になるのが、古馬の(牝馬も含めた混合の)牡馬戦線だ。特に東海・北陸・近畿地区は、重賞での交流が日常的になったわりに、まだ交流がほとんどなかった時代の重賞体系を引きずっている部分もあって難しくなっているように思う。
たとえば笠松では、夏のくろゆり賞、年末(または正月開催)の東海ゴールドカップといえば、かつてはトップクラスの馬が集結する、いわば柱となる重賞だった。しかし交流が進んだことでメンバーが分散し、近年ではA級下位のメンバーが目立つこともあるなど、レースとしての重みがなくなってきている。
また金沢や兵庫の古馬重賞は昔ながらの中長距離偏重で、マイル以下の距離が得意の馬が活躍する場が限られている。
ここはさらに交流を進めて、東海・北陸・近畿地区は、全体で古馬の重賞体系を見直したらどうだろう。
たとえば、3月の園田・六甲盃(2400m)、4月の笠松・オグリキャップ記念(2500m)、6月の金沢・百万石賞(2300m)を、古馬長距離三冠として、同一年に三冠制覇(もしくは三冠のうち二冠制覇)した馬にボーナスを支給するなどということは考えられる。
短距離路線なら、11月の笠松・全日本サラブレッドカップ(1400m)が地方全国交流として賞金が高く、これを三冠目として、8月下旬から9月上旬に行われている園田(姫路)チャレンジカップ(1400m)を一冠目に、そして昨年から7月に行われるようになった金沢スプリントカップ(1400m)を、オータムスプリントカップとして行われていた秋に戻して二冠目とし、全日本サラブレッドにつなげれば、短距離三冠となる。
また今の開催日程からは思いつかないが、1600〜2100mの中距離三冠も組めば、東海・北陸・近畿地区で、短・中・長距離それぞれの古馬三冠体系ができることになる。
ただ呪縛となっていると思われるのが、中央のGIステップ競走代表馬選定競走だ。この地区では今でも律儀に(?)この選定競走を設定しているが、ごくまれに中央挑戦がある2、3歳戦はともかく、最近ではまったくといっていいほど中央挑戦が見られない古馬重賞は完全に形骸化している。中央への挑戦自体がなくなっている古馬に関しては無理に選定競走を設けるのではなく、推薦の形にしてしまってもいいのではないか。
距離体系の整備は、厩舎関係者にとっては明確な目標ができるし、ファンに対してのアピールにもなるはずだ。