(第2回のつづき)
──先ほどから度々セリの話が出てきていますが、一度のセールで使われる金額や1頭当たりの上限など、あらかじめ決められているんですか?
国本 決めているわけではないけど、高くても1頭5000万までとは思ってます。馬を見たときに、まずは“だいたいこのくらいだろう”と値踏みをするんです。その僕の評価額と実際の額が見合えば、それは落とします。
──では、目を付けていた馬でも、予想以上に値が釣り上がってしまった場合は下りると。
国本 そうですね。でも逆のケースもあるんですよ。この前のセレクションセールで買った馬は、僕の評価は1500万だったんです。それで実際のお台を聞いたら1200万だと。セリは600万から始まったんですが、すぐに「1500万!」と手を挙げたんだ。なぜなら、それが僕の評価額だったから。だいたい上限1割くらいまでは競るかな。でも、それ以上になったら競りません。自分のなかの評価額を大事にしていますからね。そこがブレたら、競走馬なんてキリがありませんよ。
▲「自分のなかの評価額を大事に。そこがブレたらキリがありません」
──確かにそうですよね。でも、セリで下りた馬が後々活躍したりすると、正直、「あのとき競ってでも買っておけば…」となりませんか?
国本 それはありませんね。正直、そういう馬は何頭もいますけど、後悔より「ああ、やっぱり自分の目は間違っていなかったんだ」という気持ちが先立ちますね。とはいえ、自分で馬を選ぶようになったのは、せいぜいここ5年くらいのものです。自分で選ぶようになってからは、馬の見方がガラリと変わりました。
──調教師から、「あの馬、買ってください」とお願いにくるケースもあると思うのですが、そういうときはどうされているのですか?
国本 いろんなセリに行きますが、まず僕のそばに調教師は寄ってきません。なぜなら、僕は人の意見を聞かないから(笑)。それに、調教師に言うんです