春のGIホースは夏をどう過ごしたのか〜丹下日出夫/セントライト記念・ローズS
一週前の追い切り過程は共同通信杯・皐月賞・ダービー前の一週前追い切りとピタリと符合する
関屋記念に続いて、クラレントは京成杯AHを連覇。前回の関屋記念から1キロ増のハンデ戦にかわるが、平坦・新潟マイルの連続開催なら力で押せる。ポンと好スタート、競りかける馬がいなければ、ハナを切ってもヨシ。3〜4コーナーは、荒れたインとのギリギリの境い目をロスなく抜け、直線入り口では馬場のいい外目にジワリ。田辺の自信と意趣があふれ出た京成杯AHだった。
先週の競馬ブックの巻末の、河内洋調教師のインタビューのページで、「騎手は騎乗馬が最大限に力を出せる競馬をしなくてはいけない。時折ですが馬任せにしている印象があります。自分でレースをつくる気持ちで位置取を獲りにいかなければならないと思いますね。勝つためには絶対いなければならない位置というのがあるんですよ」--田辺の騎乗はまさに、河内師の述べるジョッキー像を具現。怖さが常にある騎手になった。
秋の照準は京都のマイルCSにクッキリ。右回りに良績は乏しいものの、基本的に京都は平坦。田辺なら、だろうか。
セントウルSは、リトルゲルダがハクサンムーンを1馬身余に完封。GIIIの北九州記念からGIIのセントウルSへ。デビュー二戦目の新潟1000直を、16番人気で大穴をあけた、あの白い馬が、距離やクラスの壁、そして坂コースもジワリジワリと克服。「次はGIですね」--思わず口にしたGIという言葉に、丸田くん分が硬くなっているような(笑)、そんな初々しさも垣間見えたが、前半3F・32秒9のHペースを道中はインの6番手。前述した河内サンの「勝つためには絶対にいなくてはいけない位置」が、そこにあった。
2着のハクサンムーンは、前走比12キロ増。春先とは一変、栗毛の馬体が、いわゆる「ビッグレッド」に発色。
言われている旋回癖は、わずかクルリの1回で返し馬へ。「ウチで飼っている曲犬は、何か気に入らないことがあると、尾っぽを噛んでクルクル回る」と、先週の柏木さんとの“3分で斬る”で述べたが、肉体が充実していれば、心持ちも健やかになる。
外目の15番枠だけに、2番手で無理はしなかったが、鞍上の戸崎も、テンの2F・10秒3-10秒8のラップに軽々と対応して見せる、これほどのスピード馬に跨ったというのも初めてだったかもしれない。
スプリンターズSは、ひと絞り。そしてコーナーのタイトな内回りの平坦の新潟1200m。ある程度内目の枠さえ引き当てればなんとかなるという意識を、そっと心にとどめたハズだ。
なんて、セントウルSは、ここ近年前半3Fが34秒前後のスローになることが多かったが、32秒9のHペースでも、開幕週の阪神は、エピセアロームも、上がり32秒9で猛然と追い込んだマヤノリュウジンも、やっぱり一気差しは厳しい。スプリンターズSも、9月秋の新潟の天候や馬場コンディションなど、何かしらの前崩れの要素が必要になってくるかもしれない。
さて、今週はセントライト記念。蛯名とイスラボニータは、意識せずとも常に勝ちをうかがえるポジションにいる。
ひと夏の過ごし方はどうかが言われているが