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キョウエイアシュラが快勝、森田師ともども重賞初V/テレ玉杯オーバルスプリント・浦和

  • 2014年09月12日(金) 18時00分

(撮影:武田明彦)



地方馬の好走も期待されたが…

 地方で行われるダートグレードでも浦和のレースはかなり地方馬が善戦していて、このオーバルスプリントも交流重賞になってからの過去3回、いずれも南関東所属馬が馬券にからんでいた。今回の中央勢もJpnIII勝ちまでという馬が2頭いるのみで、南関東勢の好走も期待された。しかし結果は、中央勢が3着までを独占。要因として考えられるのは、スタート後のハイペースに加えて道中もまったくペースが緩まない厳しい流れになったことと、さらに水の浮くタフな不良馬場もあっただろう。

 逃げ先行タイプはエーシンビートロンとセイントメモリーだが、今年5月のさきたま杯と同じように内枠に入ったナイキマドリードが出ムチを入れてハナを主張した。他馬より2kg以上重い57kgということもあり、控えて外に持ち出して後半勝負というより、ハナに立ってあわよくばマイペースの逃げになって、なんとか粘り込めればという可能性に賭けたのだろう。

 ところがエーシンビートロンの武幸四郎騎手がわずかに手を動かした程度で楽々と並びかけようかという勢いにはちょっと驚かされた。それで出た最初の3Fまでのラップタイムが11.9-11.1-12.2というもの。交流重賞としても速いペースだ。

 それでも向正面でペースが落ち着けば先行有利となっただろうが、スタート後は5番手にいたアドマイヤサガスが、レース中盤を迎える前の残り800mで一気に動いて先頭へ。それで終始緩むことがない厳しいペースになった。これを追いかけるように、さらにその後ろから進出したのがキョウエイアシュラだ。アドマイヤサガスは逃げたこともあるが、北海道スプリントCでは中団追走からの直線勝負がハマった。キョウエイアシュラはもともと後半の末脚勝負というタイプ。しかし直線の短い浦和で、直線だけでの勝負はありえない。おそらく3コーナー手前では動くと思っていたが、それよりもかなり早い仕掛けだった。鞍上は、岩田康誠騎手と戸崎圭太騎手。さすがに地方の小回りコースを熟知しているだけのことはある。

 結果、4F目以降も12秒台のラップが続き、13秒台を記録したのは最後の1Fだけ(13秒8)というペース。長く脚を使えるタイプのキョウエイアシュラが存分に力を発揮しての重賞初制覇となった。

 1番人気にはこたえられなかったものの、エーシンビートロンの最後までバテない粘り強さも素晴らしかった。アドマイヤサガスとキョウエイアシュラに交わされ、3〜4コーナーあたりで一旦は差を広げられたが、直線半ばでバテたアドマイヤサガスを交わしての2着。この距離で楽にハナを切れるスピードもあるが、パワーのいる馬場で最後までバテないスタミナもある。今回以上に水が一面に浮いていた佐賀で逃げ切り5馬身差の圧勝は、やはりダテではなかった。武幸四郎騎手に乗り替わって準オープンを勝ってから、(その間、一度だけ藤岡康太騎手があったが)これで7戦すべて3着以内。すでに8歳だが、地方のダート短距離でさらにタイトルを重ねることができそうだ。

 アドマイヤサガスは直線半ばで失速して3着。残り800mからの仕掛けで、先頭に立ったところで息を入れられればよかったが、キョウエイアシュラにピタリとついてこられて苦しくなった。のみならず、これで10戦して一度も連対がないという左回りにも課題があるのかもしれない。

 4着で地方最先着は、一昨年のこのレースでゴール前強襲して惜しくもハナ差の2着があったトーセンアレス。後方を追走して、上がり3F38秒2はメンバー中最速。一昨年のオーバルスプリントは、レースの上がりが40秒1で、トーセンアレスが38秒5だから追いついたが、今回はレースの上りも38秒5だからさすがに差を詰めるまでには至らなかった。この馬自信の力は発揮している。

 前走サンタアニタトロフィーの快勝、連覇で復活が期待されたセイントメモリーだが、スタート後にムチを入れ、ナイキマドリード、エーシンビートロンの直後にはつけたものの、3コーナーですでに手ごたえが一杯になっていた。昨年このレースを勝ったときは前半3Fが今年よりちょうど1秒遅い36秒2で、それを楽に2番手で追走していたことを考えると、今回の流れはいかにも厳しいものだった。そもそも前走で見せた復活の手ごたえというほどの状態にもなかったのではないだろうか。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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