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オグリキャップの通った道へ!熱血調教師・斎藤誠の戦い

  • 2014年09月23日(火) 18時00分
斎藤誠調教師

斎藤誠調教師



斎藤誠師「オグリキャップは、競馬のロマンを体現してくれた、国民的ヒーロー、サラリーマンの星ですよ。その馬の孫をやらせてもらえるというのは、本当に嬉しいですね」

赤見:まずは、ヌーヴォレコルトでのローズステークス制覇、おめでとうございます!

斎藤:ありがとうございます。いい形で夏を過ごして、牧場にいる時には460キロくらいありました。厩舎に戻った時点で440キロくらいの馬体重で、特に増えているわけではなかったけど、中身がしっかりしましたね。岩田騎手が駆け付けてくれた1週前追い切りは、かなりいい動きでした。オークスの時にも1週前に猛時計を出しているように、これで仕上がりましたね。こうやって、強い調教をしても食欲が落ちないところがすごい馬です。本当に根性がありますよ。

ヌーヴォレコルト

オークス以来となるローズSを快勝したヌーヴォレコルト



赤見:この後は二冠へ向けての調整となります。

斎藤:今回は直前輸送もあって、少し体が減りましたけど、この辺りは想定内。チューリップ賞や桜花賞の時の馬体重(438キロ)を下回らなければいいと考えていました。ここからは栗東に滞在して調整するので、長距離輸送もないですし、いい状態で秋華賞に臨めると思いますよ。

赤見:そして今週は、芙蓉ステークスにストリートキャップが出走予定。オグリキャップの孫として注目されていましたが、デビュー戦から素晴らしい能力を発揮してくれましたね!

ストリートキャップ

素晴らしい能力を発揮し新馬戦を制したストリートキャップ(撮影:下野 雄規)



斎藤:キレましたねぇ。本当に、いい形のレース運びでした。デビュー戦はスピードに任せて逃げて勝つ馬もいますけど、ストリートキャップは馬の後ろで我慢して、直線は間を割って伸びて来ましたから。レースセンス抜群だし、根性もありますね。

赤見:デビュー前から、期待と共に注目も大きかったんじゃないですか?

斎藤:そうですね。なんといってもオグリキャップの最後の仔、ミンナノアイドルの初仔ですから。偉大なお祖父ちゃんの血を引いている馬ですからね。ただ、厩舎に来た頃はまだ粗削りだったというか、素質は高かったですけど、レースで能力を発揮するには時間が掛かるかなと思っていたんです。体の面だけじゃなく、最初はやんちゃで牧場時代は自我が強くて。でも先輩たちのいるトレセンに来て、先輩の後ろをしっかりとついて歩けるようになって、従順になりましたね。この仔は人に対して反抗心がなくて、すごく素直。頭のいい仔です。

赤見:父ゴールドアリュールなので、ダートデビューなのかなって勝手に思ってました。

斎藤:ゆくゆくはダートも考えていますけど、まずは芝でということで、芝1800mの新馬戦を選択しました。あれだけの脚を使ってくれたわけですから、芝でも十分戦えますよ。ゴールドアリュールにしては、まだ少し後ろ脚が薄いんです。だいぶ筋肉が盛って来ましたけど、まだまだ伸びしろはありますよ。

ストリートキャップ

斎藤誠調教師が「まだ伸びしろがある」と語るストリートキャップ



赤見:この仔の長所を教えて下さい。

斎藤:やんちゃな面もあったけど、人に従順なところですね。物覚えも早いんです。ただ、どこかで気にくわないと、バンと弾けそうなところを持っている馬で、そういう紙一重の強さみたいなものを持っている馬の方が伸びると思います。やっぱり、大人しいだけでは勝負出来ませんから。気が強くないとダメなんです。

赤見:“オグリキャップの道を受け継ぐ者”という名前の由来通り、オグリの気性を継いでいるのかもしれませんね。

斎藤:本当にそうですね。オグリは、地方競馬から階段を一歩一歩上がって来て、中央の舞台に出て来て活躍した馬ですから、野武士という感じで、インパクトは強かったです。僕はその頃に牧場に入ったんですけど、全く違う世界から競馬の世界に入って来たので、自分にも重なるところがあって、自分も頑張ろう!っていう気持ちをもらいました。現代に置き換えると、血統的にもマイナーな安馬が、サンデーとかディープとかのエリートたちを倒すわけで。それが競馬の醍醐味だなと思います。オグリキャップは、競馬のロマンを体現してくれた、国民的ヒーロー、サラリーマンの星ですよ。その馬の孫をやらせてもらえるというのは、本当に嬉しいですね。

赤見:斎藤調教師といえば、常に強気なコメントを言ってくれるという印象なのですが。

斎藤:僕は、調教師は最前線で、馬たちを送り出す父親であり母親でありたいと思っているんです。だから、その仔のいいところを見て競馬に向かうので、必ず頑張って来いよという意味でも、いい所だけ見てコメントしています。あとは、トラックマンさんが見て判断して書いてくれればと思っているので。まぁ、一番人気の時などは、そのコメントで自分の心の負担重量が大きくなりますけどね(笑)。でも、レースに出走させるからには、常に勝てる状態で出すのが仕事ですから。

赤見:斎藤厩舎は毎年クラシック戦線に乗るような若馬が出て来ますね。

斎藤:そうなんですけど、でもそこからの成長力がないので、そこが課題です。最初は花火が上がっても、その後がちょっと…。馬って稼ぎ時があるので、そこを見極めると今までは早熟が多かったように思います。でもこれからは、古馬になってからも活躍出来るような馬を育てたいですね。簡単なことではないけど、ヌーヴォレコルトのような存在がいますから、この仔がいると厩舎にとって本当に大きいです。みんなの士気が高まるし、マスコミも来るし、ファンの方も来るし、馬主さんの馬係の方々も常に出入りしてくれるようになるので。いつ来てもらっても、気持ち良く馬を見ていただけるように、厩舎の雰囲気と、見せる馬作りということを念頭に置いています。

ストリートキャップ

厩舎でのんびりするストリートキャップ



赤見:それでは、今後の抱負をお願いします。

斎藤:スタッフ一人一人がプロ意識が強くて、チームとしてもどこに出しても恥ずかしくないように育って来ました。馬たちとともに、これからさらにいい仕事をしてくれると思います。若い子も多いですし、稼ぎ頭ばっかりで、吸収力も強い。自慢のスタッフたちです。あとは…僕が馬主さんと喧嘩しないように(苦笑)。僕は、自分のポリシーを曲げてまでやりたくないと思っているので、ぶつかってしまうこともあるんですけど、それでいいかなとも思うんです。それだけ強い想いを持って、真剣にやっています。ファンのみなさんにも応援していただけたら、とても嬉しいです。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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