全員が集合して行われた記念撮影
浦河はかねてより「5000人乗馬の町」を目指し、乗馬普及にはひじょうに力を注ぎ、幅広く乗馬訓練が行なわれている町
浦河町では毎年春と秋の年2回、町民を対象にした乗馬大会が開催されている。回を重ねることすでに33回目。もう立派な伝統行事に育ちつつある。
浦河はかねてより「5000人乗馬の町」を目指し、乗馬普及にはひじょうに力を注いできた。現在でも、第3セクターで運営する「優駿ビレッジ・アエル」や町の施設である「うらかわ町乗馬公園」などで日々、乗馬に親しむ町民が少なくない。また、JRA日高育成牧場やBTC(軽種馬育成調教センター)でも、少年団活動や育成調教技術者養成研修などを通じて、幅広く乗馬訓練が行なわれている町だ。
今年の秋季町民乗馬大会は去る9月28日(日)、午前9時より、浦河町乗馬公園にて、行なわれた。浦河町教育委員会、JRA日高育成牧場、浦河乗馬クラブの共催である。
雲が多く、やや肌寒い気候の下、100人以上の出場選手と関係者が一堂に会し、開会式の後、午年に因んで全員が集合しての記念写真を撮った。競技開始は9時半。第1競技は、シンザン杯障害飛越競技である。12人がエントリーし、角馬場内に設置された10か所の障害(高さ110cm)を順路に従って飛越して行く。障害の横木を肢で引っかけて落とすと減点される。また障害の前で馬が飛越を拒否し立ち止まることを3回繰り返すと、その時点で失格だ。減点がなく、且つ規定タイム内にすべての障害を飛越できた選手たちは、ジャンプオフと称する「決勝戦」に進む。今度は、全障害ではなく、いくつかの決められた障害だけを回ってきてタイムを競う。もちろんそこでも落下があれば減点される。
同じ要領で、第2競技乗馬公園杯障害飛越競技は障害の高さが90cmに、そして、第3競技、第4競技と進むにつれて、障害の高さが少しずつ低くなり、最後はクロス障害(横木をクロスさせた障害を飛越する)で、午前の部を終えた。
第4競技のクロス障害まで計54人の選手が出場し、下は小学生から上は熟年までと、年齢層は幅広い。JRA日高育成牧場からは、山野辺啓場長氏や石丸睦樹・副場長も他の選手に交じって出場していた。
第2競技には、現役時代にG1を制したセイウンワンダーも登場。90センチ障害を次々に飛越し、元気な姿を見せていた。牡馬の場合は、種牡馬になれなければその後の馬生はかなり険しいものになりがちだが、こうして名の知れた元競走馬が、障害馬として再出発できるのはとても良いことである。同馬について石丸副場長は「ようやく安定的に1mの障害を飛越できるようになりました。もう少し訓練を積むと、110cmまではクリアできそうです。いずれにしても長い道のりですし、少しずつステップアップして行くしかありません」と語る。
第2競技に登場した2008年朝日杯FS勝ち馬のセイウンワンダー
昼休みを挟んで、午後は覆馬場に場所を移し、ジムカーナ競技(コーンやプラスチック箱、横木などを使用して作られた経路に従って進むタイムレース)からスタート。午前中の障害飛越よりは難易度が低く、キャリアの浅い人や年齢の高い人向きの競技とも言える。
町の乗馬公園を拠点に活動する乗馬サークルがいくつもあり、初心者には女性が多い。
午前の障害飛越競技は、若いJRA職員や乗馬少年団、高校生などが中心の、かなり本格的なものだったが、午後の部は一転して、微笑ましく和やかなムードに包まれた。
最後の競技は部班運動で、これは乗馬の基本中の基本である。分かりやすく表現すると、数頭が隊列を組み、真ん中に立つ指導者の号令通りに馬を歩かせたり、止めたり、回したりするのがこの部班運動だ。レベルによって、速歩や駆歩にまで進める。これも各人の技術が審査員によって採点され、優劣が付けられる。
数頭が隊列を組み、真ん中に立つ指導者の号令通りに馬を歩かせたり、止めたり、回したりする部班運動
また、番外編として、琴平(ことひら)競技という、乗馬による椅子取りゲームのようなアトラクションや、ヘルメットの上部に載せた透明容器の中にボールを入れたまま乗馬で経路を進むリレーなども行なわれ、会場には多くの声援や笑い声が響いていた。
番外編として行われたヘルメットの上部に載せた透明容器でボールを入れたまま進むリレー
番外編として行われた乗馬による椅子取りゲームのような琴平競技
全競技の終了後は、懇親会を兼ねたバーベキュータイムとなり、午後3時半には表彰式と閉会式が行われ、無事に乗馬大会の全日程を終えた。
ところで浦河には民間の育成牧場が数多く存在するが、そこで働く若者がもっと出てきても良いような気がする。日々、騎乗スタッフとしてひたすら馬に乗る生活では、たまの休日くらいゆっくり休みたいということでもあるのか、乗馬大会にはほとんど参加してもらえなかったのが残念な点だ。草競馬などでもそうだが、「遊び」のために乗用馬を置き管理することは、手間もお金もかかることだからそうそう簡単にできることではないのだが、
せめて1頭でも2頭でもそうした馬がいればまた違った意味でスタッフの励みにもなるのではなかろうか。町のあちこちからもっと数多くの人々が参加し、日頃の技術を競う場になればさらにすばらしい大会になるはずだ。