エーシンモアオバーが鮮やかに逃げ切り連覇達成/白山大賞典・金沢
◆8歳にして衰えなく、むしろ昨年以上の力を発揮しての勝利
今回、人気面で中央勢とほぼ互角の評価を受けたのは、中央から金沢に移籍して、そして現在は船橋所属のサミットストーン。レース中盤までは金沢のセイカアレグロが4番手につけて、なんとか地元の意地を示そうとしていたが、さすがに向正面で後退。やはり実績・実力どおり、中央4頭+サミットストーンの5頭の争いとなった。その5頭の道中の並び順から、2番手のグラッツィアを3番手のサミットストーンが最後の直線で交わしただけという結果。前日の台風の影響か、湿った時計の出やすい馬場だったとはいえ、JBCクラシックでホッコータルマエがマークしたコースレコードを、0.1秒ではあるものの更新したということにはちょっと驚いた。勝ったのは8歳のエーシンモアオバーで、昨年に続く連覇となった。
エーシンモアオバーは、スタートこそあまりよくなかったものの、内の2番枠ということもあったのだろう、押してハナに立った。レコード決着を演出したのは、馬場状態もあったが、ピタリと2番手につけたグラッツィアだったと言ってもいいかもしれない。最後の直線までエーシンモアオバーから1馬身と離れることなくしつこくついてまわり、プレッシャーをかけ続けた。
ちなみに昨年もエーシンモアオバーの逃げ切りで、1300mの通過が1分23秒1、上りの800mが50秒5で、合計2分13秒6。今年は1300m通過が1分21秒8、上り800mが50秒7で、合計2分12秒5というもの。昨年が良馬場で、今年が湿った重馬場という馬場差はあるが、レース中盤までが今年速くなったのは、終始グラッツィアに直後で突かれたためで、しかし最後の800mでもバテることがなかったというエーシンモアオバーは、8歳にして衰えなく、むしろ昨年以上の力を発揮しての勝利だった。
昨年のレース後の沖芳夫調教師の言葉が忘れられない。「この馬の持ち味を出せるのはこのレースしかない」というもの。中央勢では、エーシンモアオバー以外のメンバーが昨年とはガラリと入れ替わっているのだが、それでも金沢2100mのレースを完全に支配してしまうのが、エーシンモアオバーと岩田康誠騎手のコンビなのだろう。
そして昨年の金沢所属時から船橋に移籍して進化を遂げたのがサミットストーンだ。大井記念の圧勝などで、それはなんとなく感じていたが、この白山大賞典でそれを証明して見せた。昨年はエーシンモアオバーから2馬身ほどの差で3番手を追走したが、向正面ですでに手ごたえが一杯になり、結果、着順こそ5着だが、勝ったエーシンモアオバーからは2秒7も遅れをとる惨敗だった。今年は前2頭からはやや離れた3番手を追走し、最後はグラッツィアを交わしたばかりか、エーシンモアオバーをとらえようかという勢いもあっての3/4馬身差まで。
思えばサミットストーンは、マーキュリーCもレコード決着の4着。早め先頭のクリソライトを追いかけ、盛岡の直線の坂を上がったところで一杯になってしまったが、それでも一気に追い込んで勝ったナイスミーチューから0秒6差だった。そして今回も道中緩みのないペースのレコード決着で見せ場をつくっての2着。たしかにエーシンモアオバーより3kg軽い54kgとはいえ、グラッツィアも同じ54kg。サミットストーンは厳しいペースのレースを経験したことで、いずれダートグレードを獲れるチャンスは巡ってくるのではないか。
それにしても1番人気に支持されながらほとんど見せ場がなかったのがソリタリーキング。帝王賞3着ということで、マーキュリーCに続いて1番人気に支持されたが、そのマーキュリーC(5着)同様、ほとんど追走した位置取りのままのゴールで、見せ場がなかった。一昨年の、ブリリアントSから、東海S、日本テレビ盃の3連勝があまりにも鮮やかで、いずれGIを獲れるのではないかと期待されたものの、その後の勝ち星は昨年のマーキュリーCのみ。一度落ち込むと立て直すのに時間がかかるタイプのようで、今年7歳だが年齢的なこともあるのかもしれない。