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船橋のトラ!矢野義幸調教師の生き様

  • 2014年10月21日(火) 18時00分
矢野義幸調教師

矢野義幸調教師



矢野義幸調教師「(ここまでの厩舎作りの中で)ルースリンドと、佐藤隆の存在が大きいです」

赤見:まずは、地方の看板馬に成長したサミットストーンについてお聞きします。金沢の白山大賞典はレコード決着の中、3/4差の2着でした!惜しかったですね。

矢野:ねぇ。番手に行きたかったんだけど、そんな思った通りにはいかないですね。2頭の外回ってた分、ちょっと届かなかったです。こっちに来た時は、オープンではちょっと足りないかなっていう感じだったけど、そこから走れるようになったんでね。重い重いと思ってたんだけど、今の体重が適性っていうことは、それだけ成長したのかなって思います。

赤見:金沢時代はかなりゲートがやんちゃだとお聞きしたんですけど。

矢野調教師とサミットストーン

地方所属の看板馬となったサミットストーン



矢野:今もそうですよ。マーキュリーカップ(4着)の時が一番悪かったですね。中でガタガタしてて出遅れましたし。あの1コーナー手前から内田(クリソライト)が来た時にハミ噛んで。ちょうど折り合い付いたところだったからねぇ。そこを乗り越えて行かないと、中央の馬には勝てないのかなと。内田はそのまま行って2着に残ってるわけだからね。スタートは何とか尾持ちしてそんなに遅れなくなったし、切れる脚はないけど渋太い脚を使える馬。全体的に力付けてると思います。ダートグレードで勝負出来る地方馬は少ない中で、この馬はそこを目標に出来る馬になってくれました。あとはタイトルが欲しいですね。レース後も大丈夫ですし、この後は浦和記念の予定です。

赤見:矢野調教師は、2012年から連続で船橋リーディングを獲り、今や船橋の顔となりましたね。

矢野:いや、それはないでしょ。そんな風には思ってないけど。川島(正行)さん亡くなったからな…。本当に大きな存在でした。あんな風には立ち回れないからね、本当に。船橋は今危機的な状況で、累積赤字があるわけで、表面化した時が怖いですよね。オートレースも廃止が決まる時は一気だったでしょ。

赤見:来年度のナイター開始に向けて、着々と工事が進んでますね。

矢野:ナイターは最後の切り札でしょう。来年オートレースが廃止になる時に、競馬の方はどうなんだっていう話もあると思います。でも、とりあえず1年目はいいとして、再来年が勝負だと思ってます。赤字になったら即ってことになるんじゃないかな。これだけいい場所ですからね。

赤見:矢野調教師は騎手時代に、紀三井寺競馬場で廃止を経験なさっていますよね。

矢野:紀三井寺はのどかなとこでしたね。あの時の廃止は、最近の廃止とは違うというか、廃止にするほどの赤字ではなかったんですよ。でも、市長が変わって、急に方針転換したんです。1月に選挙があって、市長が変わってすぐ3月に廃止って。寝耳に水ですよ。廃止の署名もなにも、話し合いにもならなかった状態でした。まぁ、競馬場の中にも、辞めて補償金をもらった方がいいっていう意見もありましたから。

赤見:廃止から船橋移籍はスムーズだったんですか?

熱烈なタイガースファンの矢野調教師

メンコもタイガースカラーにするほど熱烈なタイガースファンの矢野調教師



矢野:全然(苦笑)。その時年齢が37歳でしょ。どこも受け入れてくれるところがなかったです。でも生活していかなきゃならないし、3か月くらい和歌山の中央市場の八百屋さんでアルバイトしてました。その中で就職活動してたんですけど、どこの競馬場もダメで。そしたら、益田の先生が声を掛けて来てくれたんです。俺ももうちょっと乗りたいから、南関東にもう一度当たってダメだったら、益田でお世話になるつもりでした。昔川崎で半年間下乗りをしていた縁で、河津のテキ(河津裕昭調教師の父・政明調教師)を頼って行ったら、「来いよ」って言ってくれたんだけど、調教師会の方から反対の声が上がって。やっぱり37歳っていう年齢で、すぐに調教師になられたら困るってことで。それで、大井もダメ浦和もダメで、どうしようって時に、船橋の安藤榮作調教師が騎手会に働きかけてくれたんです。「廃止になって露頭に迷ってるんだから入れてやれ」の一言で、船橋に入れることになって。その時はびっくりしましたね。まさかと思いました。

赤見:移籍してからはどうでしたか?移籍組が馴染むのはなかなか大変なことだと思いますけど。

矢野:移籍しての初騎乗で初勝利を挙げられたので、最初は順調なスタートでした。でも、3か月くらいしたら骨折して。それが始まりでしたね。退院したらまた骨折、また退院したら骨折…足掛け6年くらい、そんなんの連続でした。その間に安藤のテキも亡くなって、こんだけ体がボロボロになったら調教師受けた方がいいかなって思いました。でも、受けさせてもらえなくてね。

赤見:え?!何でですか?

矢野:拒否されたんです。移籍する時に調教師にはならないっていう約束で来てるわけだって言われて。そんな約束なんてないよって言ったんですけどね。それで騎手を続けてたわけですけど、50歳になった時に、NARグランプリの中で功労賞っていうのがあって、それを貰ったんですよ。それで、そろそろ認めてもらえたのかなって思って、調教師試験の願書出したら受け入れてもらえたんです。

赤見:矢野調教師はご自身がご苦労された分、とても面倒見がいいというか、人を育てる印象があります。

矢野:自分自身も、河津のテキに声掛けてもらって競馬の世界に入って来て、安藤のテキのお蔭で船橋に移籍することが出来ましたから。調教師として、馬たちを故障なくレースに送り出すというのは当然ですけど、厩務員たちは家族いる人が多いから、生活の不安のないようにしてあげたいですね。スタッフが露頭に迷うのが一番困るから。攻め馬もやらなくなりました。厩舎持った頃は何頭か乗ってましたけど、所帯が大きくなってからは俺が寝込んだりケガするわけにいかないでしょ。厩舎潰れるのが一番困りますよ。

赤見:現在は所属の騎手が3人(本橋孝太騎手、小杉亮騎手、張田昴騎手)いますが、3人とも黄色と黒のタイガースカラーの勝負服ですよね。

矢野調教師と小杉騎手

矢野義幸調教師と所属の小杉亮騎手



矢野:別にそうしろって言ったわけじゃないんですけど、みんな自主的にタイガースカラーにしてますね(笑)。生粋のタイガースファンなもんで。まぁでも、騎手を育てるのは難しいですよ。特に今の子は難しい。小杉には手も上げたことないですよ。あの子は乗馬クラブとか行ってたし、礼儀正しい子でしたね。本橋にはまぁやったけどね(笑)。反抗するところがあったから。寝坊したりね。その頃俺も血の気が盛んだったから、寝てるところにバケツで水掛けたり、ボロ場に頭突っ込んだり。殴ったらよけられて、自分の指が折れたこともありました(笑)。騎手はとにかく、厩務員に可愛がられないと。厩務員に信頼がなくなったら終わりですよ。

赤見:ここまでの厩舎作りの中で、やはりルースリンドというのは大きな存在ですか?

矢野:大きいですね。ルースリンドと、佐藤隆(2006年に落馬事故により死去)の存在が大きいです。ルースリンドは厩舎持ってまもなく来てくれて、初めて重賞も勝たせてもらいました。コイツ(飾ってある佐藤隆さんの写真を見ながら)は跨った時から、「絶対これはいける!」って言ってて。本当に頑張って活躍してくれました。種馬にもなっているので、子供たちのことはよく見てますよ。頭数が少ない割に勝ち上がってますよね。うちに来たのは2頭(ストゥディウム、ロイド)で、船橋にもう1頭(エスケイパサー)、浦和に1頭(レッツゴーウイン)います。一番最初に生まれた(ゴルデンドラマ)のは、道営で走ってて、新馬戦勝ったんですよ。あともう1頭(ガンバルタイヨー)は佐賀にいます。これからもっと成長して来ると思うので、子供たちにも頑張って欲しいです。

赤見:では、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

矢野:ぜひ競馬場に足を運んでいただきたいです。生で見てもらって、「また来たい!」と思ってもらえるように、わたしたちも努力を続けて行きます。船橋はこれからナイターもやるので、これまでのファンの方と、新たなファンの方に楽しんでいただけるよう、関係者一同で全力を尽くしていきます。

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※こちらのプレゼントの受付は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

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プレゼント

矢野義幸調教師からご提供いただきました「サミットストーンのパカパカフィギュア」と「厩舎オリジナルクオカード」を2点をセットで、3名様にプレゼントいたします



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常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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