ジェイエス主催による「2014繁殖馬セール」の会場風景
個人馬主からの上場馬などもいて名簿上では210頭が上場申し込みを済ませており、多彩なラインナップとなった今回のセール
去る10月22日(水)、新ひだか町静内の北海道市場にて(株)ジェイエス主催による「2014繁殖馬セール」が開催された。
やや肌寒いながらも天候に恵まれ、会場には午前中から数多くの生産者や馬主などが訪れた。この繁殖馬セールは、国内唯一の繁殖馬売買のための市場で、毎年、この秋と冬季の年二回開催される。日高を始め、胆振、あるいは青森などから、新しい血を求めて生産者が次々に来場し、名簿片手にそれぞれ目的の繁殖馬が待機する馬房まで出向いて実馬を熱心に見て歩く姿が見られた。
セールに出る馬の待機馬房
開場は午前7時半。その後、11時までが下見時間として確保されており、1歳市場のように比較展示は行なわれない。
今回のセールは、名簿上では210頭が上場申し込みを済ませており、中でも、社台ファーム22頭、社台ブラッドメア18頭、社台コーポレーション白老ファーム6頭、ダーレー・ジャパン25頭、ノーザンファーム14頭、ノーザンレーシング7頭など、大手からの大量上場があった。また日高でも、千代田牧場やグランド牧場、ベルモント牧場などの上場馬も多く、個人馬主からの上場馬もいて、ひじょうに多彩なラインナップとなった。
セリ開始は午前11時。一部に欠場馬がいたため、199頭(受胎馬154頭、空胎馬45頭)が上場され、154頭(受胎馬120頭、空胎馬34頭)が落札された。
売却率は前年(2013年秋)と比較して15.51%もの伸びを示し、77.39%に達した。また売り上げ総額は5億7763万8千円(税込)で、平均価格は375万0896円であった。
本体価格での比較では、前年が4億7757万円に対し、今年度が5億3485万円となり、実質的に5728万円の増である。また平均価格では、前年の約346万円に対し、347万3051円とほぼ前年並みであった。
最高価格馬となったのは、113番「ボディーダンシング」(父ホワイトマズル、母ダンシングサンデー、母の父サンデーサイレンス、4歳鹿毛、ワークフォースを受胎、最終種付け日4月19日)の2430万円(税込)。半兄にフサイチオフトラ(萩Sなど2勝、札幌2歳S4着)、半姉にポルカマズルカ(日本海Sなど5勝)などがおり、本馬も1勝している。また祖母はダンシングキイ(ダンスインザダーク、ダンスパートナーなどの母)という名血で、今年度より供用開始という若さにも注目が集まった。熊癖(ゆうへき)があると公表されたものの、激しい競り合いが展開され、最終的に(有)新冠タガノファームが落札した。販売者は社台ブラッドメア。
ボディーダンシングの落札場面
ボディーダンシングの立ち姿
次点は、73番「レースドール」(父クロフネ、母ビスクドール、母の父サンデーサイレンス、10歳芦毛、シンボリクリスエスを受胎、最終種付け日4月15日)の2160万円(税込)。半姉にアイスドール(エニフSなど6勝)、全弟にバトードール(端午SなどJRA3勝、地方1勝、ユニコーンS2着)などがおり、母の全姉にはトゥザヴィクトリー、全弟にはサイレントディールがいる筋の通った血統馬である。自身も2勝2着3回3着2回と堅実な成績を残しており、すでに4頭の産駒がいるが、競走成績が出てくるのはこれからで、今後に期待できることが評価された。販売者はノーザンファーム。落札者は(有)天羽牧場。
レースドールの立ち姿
3番目の高額馬は89番「カレンナホホエミ」(父タイキシャトル、母テンシノキセキ、母の父フジキセキ、7歳栗毛、タニノギムレットを受胎、最終種付け日5月20日)の2106万円(税込)。カレンナホホエミ自身がフェニックス賞など2勝しており、年齢も若く、これからの将来性が買われた。販売者は(有)駿河牧場、落札者は(有)ディアレストクラブ。
なお、カレンナホホエミの母テンシノキセキも上場され、1404万円で(有)北嶋が落札、購買した。本馬は16歳ながら、現役時に重賞2つを含め9勝を挙げた女傑で、ロードカナロアを受胎している。
また、昨年引退し、今年度より供用が開始された道営記念馬ショウリダバンザイ(父プリサイスエンド、母オレンジスペシャル、7歳鹿毛、ネオユニヴァースを受胎)も売りに出され、1188万円で六郎田靖氏が落札した。
今年の繁殖馬セールは、10万円台、20万円台がおらず、最低でも30万円を超えており、明らかな肉値の取引がほとんどなかったのも大きな特長だ。全体的に活発な競り合いが続き、ひじょうに高い売却率を記録した。
「全体的に売却率も上がり過去最高を記録して良いセリでした。1歳セールの好調さに連動する形で結果が出たと思います。徐々にこの繁殖セールの存在が知れ渡ってきたことを実感しております。牝馬の流通を円滑にという目的で始めたセリですが、多くの方々に認知されてきていますし、来年は1歳馬市場がさらに数字を伸ばしてくれそうですから、それを見越して多くの生産者が本市場で繁殖牝馬を求める動きに繋がったのだろうと考えています。過去のセリを上回ったことなど考慮して90点をつけたいと思います」と主催者を代表して(株)ジェイエスの藤原悟郎氏は以上のようにコメントした。
「過去のセリを上回ったことなど考慮して90点をつけたいと思います」と語った藤原悟郎氏
次回の繁殖馬セールは来年1月21日開催となるが、「日本軽種馬協会の有料繁殖牝馬導入促進事業を活用するなどし、より多くの上場馬を確保したい」とのこと。国内唯一の繁殖馬専門市場として、生産地には必要不可欠な存在になっている。