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ワンアンドオンリー陣営の挑戦

  • 2014年11月25日(火) 18時00分
競馬の職人

甲斐純也助手とワンアンドオンリー



甲斐純也助手「(ワンアンドオンリーは) とっても扱いやすい馬です。性格がはっきりしていてONとOFFがわかりやすい」

 ダノンシャーク号、G1初制覇おめでとうございます。

 昨年は、一番人気で3着。3年連続の挑戦でつかんだ勲章は大きいでしょう。中間でためていた脚をどこで追い出すか? 進路はどこを取るか騎手の手腕にかかってくると思いますが、岩田騎手は、隙のない手綱さばきでハナ差勝利へ突っ込んでくれました。後方待機から末脚勝負へ持っていき、馬の根性もりっぱでした。やっぱりすごいなー。シャークのハートマークもかわいい。活躍の幅が広がってくるでしょう。今後が楽しみです。

 この秋のトレンドになっていた重賞未勝利馬のGI制覇の6連勝にファンの期待と夢が広がったフィエロ号でしたが、惜しくもハナ差、5cm差の2着。ユーイチの悔しそうな表情がヒシヒシ伝わってきました。

 古い話ですが、僕のデビュー年にエイティグロー号で1996年の阪急杯に騎乗したとき、ゴール板に突っ込む瞬間「勝った、やったあー」と思う間もなく、河内先生の(トーワウィナー号)にクビだけ差されてしまった苦い経験があります。あれはやっぱり悔しかったです。記憶にも記録にも残らないですよね。(苦笑)

 今週は待ちに待ったジャパンカップ。国内外のGI馬が12頭終結し豪華メンバー勢揃です。どの馬が勝っても・・・不思議ではない。

 みなさんはどの馬に注目されますか?僕は、やはり今年のダービー馬「ワンアンドオンリー」に注目したいと思い、橋口厩舎へ行ってさっそく甲斐純也助手にお話を聞いてきました。

 甲斐さんといえばお父さんの後を継がれて橋口厩舎で助手になりました。お父さんが手掛けた馬(ツルマルミマタオー)で橋口厩舎としてダービーに初挑戦。そして息子が手掛ける馬でダービー制覇、とドラマのようなエピソードもあります。(取材日:11月19日)

常石 今日は、よろしくお願いします。改めてダービー優勝おめでとうございます。

甲斐 ありがとうございます。何度思い出しても身が震るましたね。オンリーは、橋口先生をダービートレーナーにするために生まれてきたように思うほどダービーに向けて順調に仕上がってテンションも上がっていきました。全部条件がそろったんでしょうね。オンリーの背中に跨っていて負ける気はしなかったですね。調教の時、背中から伝わるものが違っていました。背中の弾みがゴムボールの様に柔らかくそしてバネがあり跨っていても気持ちがいいんですよ。でもこれだけでは終われないですからね。まだまだ上を目指して行きます。

常石 軽トラックとベンツくらいの乗り心地の違いですか? JCに出走も決まり楽しみですよね。

甲斐 ベンツに乗ったことないのでわかりませんが?(爆笑)楽しみというより、まだ若いから胸を借りチャレンジしたいと思います。古馬に交じってどれだけやれるのか?未知です。すごい経験した馬ばっかりでしょう。凱旋門賞遠征組に去年の覇者、そして外国からの挑戦も怖い存在ですね。でもうれしいです。これだけのメンバーがそろうなんてことないでしょう。ここにチャレンジできるのは楽しみもあります。

競馬の職人

ワンアンドオンリーに跨る甲斐助手



常石 今は、どんな状態ですか?

甲斐 前走は、本気で走ってなかった感じですね。最近は、とっても落ち着いて厩舎で過ごしています。ほらっ、見てもらったように飼葉を食べているときは、一心不乱というかもくもくと食べます。邪魔すると怒るんですよ。だからあまりそばへは、行かないでください。隣のレッドアリオンのほうから見てください。ちょっとやんちゃだけどね。

常石 レッドアリオンも担当されているんですね。マイルCS、JCと2週連続でGIに送り出すんですね。強い馬を作る秘訣はあるんですか?

甲斐 秘訣なんてありません。馬がしっかりしているから僕が世話をするだけです。

常石 オンリーのこと洗い場でずっと見ていたんですが、シャワーをかけても後ろから行っても足蹴りをせずおとなしいですね。

競馬の職人

おとなしくシャワーを浴びるワンアンドオンリー



甲斐 とっても扱いやすい馬です。性格がはっきりしていてONとOFFがわかりやすい。飼葉もしっかり食べるので体力もありますね。レースがあるというのもわかるので、装鞍所で鞍をつけるときは、うるさく言うので別のところへ行きます。きちんと置き準備するとレースに行くんだとわかりおとなしくなります。この馬は、顔がいいでしょう。男前ですよね。全体にバランスよく整ってます。調教では時計があんまり出ないのに本番では走ってくれます。僕と違って真面目なんでしょうね。(笑)

 ワンアンドオンリーと比べてレッドアリオンは、やんちゃで面白い馬です。僕の行くところを追いかけてきてニンジンをねだっています。走るときは、しっかり走ってくれるのでこの馬も面白いです。

常石 馬のことをよく観察されていますね。そこが走る馬づくりの秘訣なんでしょうね。

甲斐 いやいや僕なんかまだまだです。橋口厩舎は、スタッフみんな敏腕だから教えてもらうことばかり。だからダービーへ何年も連続で送り出せるんだと思います。先生に魅力があるんですよね。

常石 ダービーへ毎年出走させるのは、すごいことですよね。そうそう先生は、ホンマに魅力あります。いつもにこやかにほほ笑むっていう感じですよね。調教もいいことは、どんどん取り入れてやってるなと感じます。いつも「ありがとう」と言われますよね。あれがいいなーと思います。

甲斐 そんな感じが僕たちにも伝わってくるから仕事もたのしいです。

常石 楽しく仕事をするのが馬にも伝わるんでしょうね。

甲斐 オンリーも最初は、苦労したそうです。僕は3走目から担当させてもらいました。最初は女の子みたいで飼葉食いも悪かったです。
東スポ杯2歳Sの時、横山典騎手に初めて、乗ってもらったんですが状態がまだまだだったので怒られるかと不安でした。それくらい自信がなかったんです。

 そうしたらレース後、典さんから「これだけ走れたら十分」とほめてもらったんです。人馬ともうれしかったというか自信になりました。それから体つきも精神面もたくましくなり飼葉食いもよくなってきました。自信につながっていくのは成長させてくれるんですね。

常石 典さんは(横山騎手)馬をつくってくれるので厩舎と騎手とで最強の馬づくりができるんでしょう。馬の気持ちや持っているものを職人技で見極めてくれます。安心して任せられますよね。時々僕のことも調教してくれます。だから安心してお話しができます。(苦笑)オンリーの一番アピールしたいところはどんなところですか?

甲斐 走ったときは、すごい全力パワーを出して一生懸命ですが普段はマイペースで顔も女の子みたいにきれいでなかなかイケメンですね。普段の調教も後ろから来た馬に追い越されても平気でむきになって走らず自分のペースを乱しません。ここがすごいところなんでしょうね。根性の強さの表れだと思います。レースに行くと根性がドカンと座って自分の走りに徹してくれます。

常石 やっぱりダービー馬は、違いますね。最後にファンへメッセージをおねがいします。

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GI馬のゼッケンを手にワンアンドオンリーの馬房前でパチリ



甲斐 たくさんの人の心を振り動かすような走りを見せてほしいです。レースだけではなくパドックで馬の勇姿をみてたくさんの人の手でここまできて、たくさんのフアンの方の応援で育っていく様子を見てもらいたいです。

常石 ありがとうございました。

調教から洗い場、馬房までずっと追っかけしていたのですが、無駄なく淡々と仕事しながら僕の質問にもこたえていただきずっと楽しそうに話されるのが印象的でした。うまが大好きっていうのが伝わってきました。まだまだ大きな仕事をやってくれる甲斐さんだと実感。橋口厩舎訪問の楽しみが増えました。

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橋口先生に甲斐助手の印象をお聞きしました。

「いつも一生懸命だよな。任せてるから・・・」

山手助手からも

「僕と違って真面目なんだよな。確実に走る馬だから手を抜くと馬に見過ごされてしまう。でもそこをきっちり仕事をするのでいいよな。この間も獣医さんに足元を冷やしてあげてといわれ朝夕きちんと丁寧にやっていましたよ。真面目だなとおもう。同じ厩舎で安心して任せられるからね」

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 橋口先生、山手助手からのコメントからも信頼関係が十分伝わってきました。厩舎スタッフがお互い安心して仕事ができる信頼関係は大きな馬を育てていくんだなと感じました。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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