合計21冠のメンバーが集結
かつて、ジャパンカップは、比較材料が少なく、不確定要素の多い外国馬が上位に来ることが多かったので、ファンの購買意欲が下がり気味になるのが普通だった。「買うレース」ではなく「見るレース」だった、と言ってもいい。
ところが、だ。今年のジャパンカップは、日本馬だけでも「ジャパンカップ史上最高」の「ジャパンカップ」を外してもいいのではないかというぐらい、ものすごいメンバーが揃った。外国馬3頭を含めGIホースが12頭で、合計21冠というからハンパじゃない。
「世界に通用する馬づくり」をスローガンとし、「本場・欧米に追いつき、追い越せ」を合言葉にジャパンカップがつくられたのは33年前、1981年のことだった。
それにともない、天皇賞・秋の施行時期がひと月早められ、84年からは距離が3200mから2000mに短縮されるなど、番組の大きな改革が行われた。
設立当初は、けっして一流とは言えない外国馬に、日本の強豪が簡単にひねられ、世界との間にある高い「壁」の存在を、嫌というほど感じさせられた。
そうした背景があるこのレースに、レーティング世界一の日本馬が出走するようになったのだから、当時を知るファンや関係者にとっては、ゲートがあく前から感慨深いものがある一戦なのではないか。
このコラムをいつも読んでくれている人は、ここで、
――そろそろ得意の我田引水が始まるな。
と気づいたことだろう。
そう、ジャパンカップの歩み、すなわち、競馬の歴史といえば、11月28日から発売されている拙著、競馬歴史小説『虹の断片(かけら)』(産経新聞出版)である。
最近は便利になっていいのか悪いのか、発売前から、ネット書店のアマゾンなどで予約によるランキングが出て、どのくらい売れるのか予測できるようになっている。
実際、アマゾンのランキングを見て注文を出すリアル書店も多いという。
実は私は、自著の2日前に出た『世界一の馬をつくる チームノースヒルズの飽くなき挑戦』(前田幸治・著/飛鳥新社)にも編集協力という形でかかかわっていた。キズナとワンアンドオンリーで、生産者として、またオーナーとしてダービーを連覇した前田オーナーが、馬づくり、人づくりについて持論を展開する一冊である。
そちらのほうは、予約の時点ですべの本を含めた総合順位でふたケタになったり、競馬部門で2位や1位になったりと、売れることはほぼ確定していた。現に、発売前に重版が決まり、動きを見て3刷を出すかどうか、版元は考えているようだ。
自分がかかわった本が売れるのはものすごく嬉しい。嬉しいのだが、そのぶん、自著が前田オーナーの本ほど売れるかどうか自信がなく、
――売れなかったらどうしよう。
とばかり考えてしまった。
武豊騎手はレース前「負けたらどうしよう」ではなく「勝ったらどうしよう」と考えるようにし、プレッシャーに押しつぶされないようにしているというが、それを真似て、
――売れたらどうしよう。
と考えようとしてみたが、どうしてもできなかった。
――売れたらどうしようと考えて売れなかったらどうしよう……。
と考えてしまうのが普通だと思う。やはり武騎手は普通ではない。
ツイッターにアマゾンのリンクを貼って呟いたり、当サイトのニュースでとり上げてくれたページをツイートしたりと地味に宣伝をし、発売日、28日の朝を迎えた。
恐る恐るアマゾンの自著のページを見たら、「新商品情報1位−カテゴリ さ行の著者」となっていた。
午後になり、「新商品」の表記が外れてからは、「さ行の著者」でずっと5位をキープしている。私より上は「重松清」「瀬戸内寂聴」「沢木耕太郎(上下巻)」である。
――さ行は強いから損かな。
と一瞬思ったが、あ行はあ行で「伊集院静」「浅田次郎」「池井戸潤」「伊坂幸太郎」「小川洋子」など、それこそ今年のジャパンカップかと思う強さである。要は、どの行も強いのだ。
ちなみに「楽天ブックス」では「さ行の著者」で11位だった。
打合せのついでにリアル書店を数軒覗いてみたら、だいたいは「日本文学」の新刊のところに面陳や平積みで置かれ、品川駅港南口のあおい書店などは、日本文学の棚と競馬の棚の両方に置いてあった。書店スタッフの工夫と、版元の営業部の努力によるものだろう。
まったく売れていないわけではないようなので、少しほっとした。
だからというわけではないが、本稿の読者の方々に、感謝の気持ちをこめて、サイン本を3冊プレゼントさせていただくことにした。
これがノンフィクションなら別なのだろうが、小説を媒体でプレゼントすることはあまりないので、本書に関しては、基本的に、プレゼントのみの告知はお断りしている。その代わり、情報として紹介してもらったあと、こうしてサイン本を差し上げるようにすれば、すでに買ってくれた人も応募してくれるかもしれない――ということで、ほかの媒体の担当者にもわがままを聞いてもらった。
この稿がアップされているときには世に出ている29日付の「産経新聞」東京版に、半5段という大きさで本書の広告が掲載される。半5段とは、紙面下部の文字5段ぶんの半分のスペース、という意味だ。
内容を言うのはマズいと思うので、その広告に、本書のゲラを読んで感想を寄せてくれた人の名前だけ記したい。
帯文をくださった、作家の伊集院静氏。競馬評論家の井崎脩五郎氏、作家の吉永みち子氏、キャスターの草野仁氏、元騎手の細江純子氏、タレントの土屋伸之氏(ナイツ)という超豪華メンバーである。
また、来週月曜発売の「週刊ギャロップ」に、「虹の断片セルフライナーノーツ」として、本書に寄せる思いや、再取材で見ることのできた前田長吉の新資料などについて寄稿した。
ということで、プレゼント、たくさんのご応募をお待ちしております!
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