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「僕もいつかは“ダービージョッキー”と言われるようになりたい」浜中俊騎手にインタビュー

  • 2015年01月13日(火) 18時00分
競馬の職人

浜中俊騎手



浜中俊騎手「浜中から行こか・・・と言ってもらえるような騎手をめざしたい」

 あけましておめでとうございます。(ちょっと遅れましたが)今年も、いろんな厩舎を取材し、魅力あるコラムにしていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

 栗東は元旦早々大雪になり寒いお正月でした。みなさんはどんなお正月を過ごされましたか? トレセンでも2日間とも追切り時間が変更になったりと心配していましたが順調に開催できてよかったです。

 金杯の日、年末のコラムに登場していただいた阪上久美子さんの馬の絵が展示された京都競馬場の入口へ向かう通路が賑わっていました。絵だけでなく馬の缶バッチなどもあり、いろいろチャレンジされているのでこれからも楽しみです。

 そして宮本厩舎のウインフルブルーム。ダービー回避はとっても残念でしたが馬の状態をじっくり見極めての重賞勝利おめでとうございます。ここからの成長がたのしみになってきます。

 シンザン記念はグァンチャーレが優勝、おめでとうございます。やっぱり豊さんですね。勝つだけではなく29年連続重賞勝利。北出先生への誕生日プレゼント、シンザン記念最多勝利7勝と記録尽くしだった豊さんのコメントもキャッチでした。こんなところも魅力なんですよね。さすが、豊さんは立派ですよね(笑)。

 記録といえばジェンティルドンナも有馬記念で有終の美を飾って引退。2度目の年度代表馬になった“女帝”です。

 担当の日迫さんにおめでとうございます、と声をかけると

日迫助手 ありがとうございます。でも厩舎にいないので寂しいですよ。北海度へ行ってしまったよ。

常石 子供に会うのが楽しみですよね。

日迫助手 僕が担当できたらいいけどね。

と・・・寂しげに馬房の掃除をしていました。今度ジェンティルドンナの話をゆっくり聞かせてください、と言うと「1日では話せないなー」と笑いながら言っていました。こちらは何日でもおつきあいしますのでよろしくお願いします(笑)。

今週は昨年GI・2勝を挙げ、ワールドスーパージョッキーズシリーズにも優勝した浜中騎手に年末インタビューをしましたのでお届けします。

常石 浜中騎手はいつも取材殺到の人気者なのでなかなか声をかけられなくてやっと念願かないました。よろしくお願いします。

浜中 こちらこそよろしくお願いいたします。僕のほうこそやっと常石先輩のコラムに書いてもらえてうれしいです。

常石 ありがとう。確かうち、いやいや中尾正厩舎の馬にも乗ってもらいましたよね。

浜中 はい、お世話になりました。いろんな先生やオーナーさんから声をかけていただきお世話になっています。おかげでいい馬に巡り合うことが出来てうれしいです。

常石 デビューから毎年勝ち鞍を増やし2012年は131勝でJRAリーディング、13年119勝、14年125勝と3年連続すごい成績ですね。2014年もリーディングまであと少しだったのにまたまた岩田騎手に負けてしまいましたね。毎年これだけいい成績を上げられる秘訣は何ですか? 特に筋トレとかやっているんですか?

浜中 岩田先輩に負けて悔しいです(笑)。やはり上手いです。僕の修業が足りませんね。また、来年心を入れ替えて頑張ります。僕は趣味もないし筋トレも筋肉がすぐにつく体質なので何もやってません。2012年は本当にリーディングが取れるとは思っていなかったんですが、12月に入ってからひょっとしたらいけるかなと意識しました。毎年、秋に関東へ行ったりして勝ち鞍が減っていたんですが、この年は関東だけで2週連続重賞(アルテミスS、京王杯2歳S)を勝たせていただき、東京だけで8勝を挙げることができました。いつもブレーキがかかるこの時期の勝ち星は、大きかったし自信につながりました。でも福永さんや川田先輩がフランスへ行っていたからチャンスがあったと思うので僕はまだまだ本物ではないんでしょう。

浜中騎手

浜中騎手「また、来年心を入れ替えて頑張ります」



常石 自己アピールをしっかりする。それもチャンスだと思います。

浜中 そうですね。リーディングジョッキーならGIなどで活躍しもっと目立たないといけない存在なのかもしれませんね。

常石 デビュー3年目にスリーロールスで勝った菊花賞、2013年のフェブラリーS、そして今年は、ミッキーアイルでNHKマイルC、秋華賞をショウナンパンドラで優勝、と合計GI4勝。そして今年はワールドスーパージョッキーズシリーズ総合優勝と大きな勲章ですね。福永・田辺騎手3人のトップ争いを振り切って42ポイント獲得はすごいよな。

浜中 ありがとうございます。福永先輩たちもですがイギリスのR・ムーア騎手、R・ヒューズ騎手など強豪な外国人ジョッキーも8名もいたでしょう。地方の騎手もいて普段はなかなか一緒にレースをする機会がない中での勝ちは、自分の中で新しいものを見つけることが出来たように思います。みなさんほんまにうまいですからね。

 先輩方から僕を意識してくれるようになったのはうれしいことですね。岩田先輩から「今度はお前には絶対負けへんからな」と仰ってくださった言葉を自分の中へしっかり入れ込んでおきます。

常石 先輩騎手とも肩を並べてスタートを切れるようになったんですね。

浜中 とんでもないです。でもそうなれるように頑張る!! という大きな目標ができました。

常石 騎乗スタイルなどが変化したことはありますか?

浜中 うーん、特にはないですが出来るだけ多くの経験を積んでいき、そのなかで自分のスタイルを見つけていくことかな? 実績も積んでいかなくては、チャンスもやってこないと思うので来るのを待つのではなく自分からチャンスを作っていかないといけないと思っています。関係者の皆様に「浜中に任せよう!」と言ってもらえるようになりたいですね。

常石 そういう意味では、今年の実績は大きいでしょう。シンザン記念も11・12・14年と3回勝ち、豊さんに次いでの記録です。記録更新で15年の優勝も狙ってください。
※この取材は2014年の年末に行いました

浜中 重賞で強い馬に乗せていただけるのは、僕にもチャンスがあるということなのでうれしいです。強い馬に強い気持ちで騎乗していきたいです。

常石 自分なりの戦法ってありますか?

浜中 まずは自分のレースを見て僕に足りないところを少しずつ改良しています。表現するのは難しいですが、例えば手綱の長さを短くしこぶしがきくようにしたり、鐙の長さも短くしました。アクションが大きかったと思うんですが、馬に負担がかからないようにできるだけ動きを小さくして小さな動きで僕の思いが馬に伝わるといいレースができると思っています。こうしたい、という思いはいっぱいあるのですが、ダートの時なんかは力がいるので大きな動きになってしまうときもあります。ここが僕のまだまだ足りないところです。どんな乗り方が一番いいというのはないと思っています。だからいろいろ試しながら馬と会話しながら乗っていきたいですね。

常石 秋華賞は、見事な差し切り勝ちでしたよね。

ショウナンパンドラで制した秋華賞

内を突いて差し切り勝ちを収めた秋華賞



浜中 秋華賞でのショウナンパンドラはよく踏ん張ってくれました。焦らないように前に目標をおいてじっくり待つと内がパカって空いて内を突いて差すことが出来ました。中団からの差しや追い込む走りが好きですね。

常石 我慢のしどころが難しいですよね。狙ってもなかなか出来ることではないですよね。いろんな形のレースが出来るようになってきたからこそ今の3けた勝利の数字になってきたと思います。今までに印象に残ったレースはどんなレースですか?

浜中 僕が競馬学校時代に初めて生観戦した2005年ダービーです。武豊騎手が勝ったディープインパクトです。あれだけの騎手が喜ぶんだからダービーってすごいレースだなと興奮しました。そして僕もあの舞台に立ってみたいなーって思いました。子供のころ乗馬をしていた時も初めて見たダービーも武豊騎手が勝ったスペシャルウィークでした。だからダービーへの思いはずっとありますね。

常石 競馬学校時代に見たのがディープなの? 若いなー(笑)。そういえば浜中騎手とは一緒にレースしたことがないんですものね。僕も2005年のダービーは東京競馬場で生観戦したよ。落馬してリハビリ中だったけどディープがふわーっと浮くような走りをしていたこととか、あのレースことはだけはしっかりと覚えています。浜中騎手はダービーに何回騎乗したことがありますか?

浜中 ダービーには3回乗せていただきましたが、独特な雰囲気がありますよね。騎手だけではなくファンの方も含め競馬場が人馬一体になるというか・・・今思ってもゾクゾクします。僕が2回目に乗せていただいたクレスコグランドは5着とよく頑張ってくれました。土砂降りの雨の中レースでオルフェーヴルが優勝し、池添騎手がダービージョッキーという称号を手にされた時かっこいいなー、僕もいつかはきっと・・・“ダービージョッキー”と言われるようになりたい、と心に誓いました。騎手もですが調教師もオーナーも競馬関係者のみなさんもダービー制覇が夢ですよね。

常石 デビュー9年目に入りますが夢とかやりたいことは何ですか?

浜中 競馬が大好きなのでいつも馬のことを考えています。時々飲みにも行ったりしますがあまり出ないですね。岩田先輩には公私ともにお世話になっています。僕が落馬で怪我をして騎乗停止になって一番しんどい時に声をかけてくれました。声のかけ方が格好いいんですよ。「この頃強い乗り方してないやん、どうした?」と声をかけてくれたんです。教えてくれるとかではなく僕に気づかせてくれるんです。

 他にも「みんなのいいとこどりしたらいい。そこから自分のスタイルを見つけていくんやな」とか「お前には、負けへんで」といつも言われています。一緒に飲むとめちゃめちゃはじけて楽しいです。悩みも吹っ飛んでしまいます。他にも同期の藤岡康太騎手やお兄さんの藤岡佑介先輩は優しいのでよく話します。

浜中騎手と岩田騎手と坂口元調教師

公私ともにお世話になっている岩田騎手(右)と師匠の坂口元調教師(中)と記念撮影



常石 いい馬にもいい先輩に巡り合うのも人徳ですよね。ますます活躍が楽しみです。最後に応援してくれるファンの方へメッセージをお願いします。

浜中 まだまだ未熟ですが、馬への熱い思いはファンの方と同じです。(馬券は)浜中から行こか・・・と言ってもらえるような騎手をめざしたいと思います。日本の騎手として恥ずかしくないような騎乗をしていきたいです。これからも応援してください。

常石 今日は長い時間ありがとうございました。

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 浜中騎手にはまだまだお聞きしたいことはいっぱいありますが今回はここまで。浜中騎手の勝利も100勝以上ですが、取材への対応も100点以上でした。快く取材させていただきありがとうございました。

 新年早々いい雰囲気でスタート出来そうなこのコラム。ドクターコパさんも「未来とは未が来ると書く」とスポーツ新聞のコラムで書いておりました。みなさんにとって素敵な未来がやってきますように!つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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