昆師が描くレガッタの壮大な未来予想図/吉田竜作マル秘週報
◆今春のクラシックを占う重要な一戦に出走する予定のレガッタは、順調に1週前追い切りをこなしていた
いよいよ注目のきさらぎ賞ウイーク。地元関西の良血ポルトドートウィユ、アッシュゴールドだけでなく、関東からは怪物牝馬との誉れ高いルージュバックも参戦予定。今春の牡馬、牝馬クラシックを占う重要な一戦となりそうだ。
なかでも先週、当コラムで最注目馬に取り上げたレガッタは、順調に1週前追い切りをこなしていた。結果的には未勝利馬相手に後れを取る形となったが、ウッド6ハロン82.5-67.8-53.3-39.0-13.4秒とタイムは十分に合格点を与えられるもの。昆調教師も「思った通りの数字になった」と満足げな表情だった。先週お伝えした通り、「デビュー戦から比べると基礎体力の面で違っていると思う。それを同じ舞台で比較して見てみたい」というトレーナーのもくろみ通りに事が運んでいる。
未来というものは現在の積み重ねで完成する。それはレガッタとて同じこと。まして引退が目前に迫ったころには「(気難し過ぎて)調教できるコースがない」状況にまでなった名(迷?)牝スイープトウショウ(05年宝塚記念などGI3勝)を母に持つ血統。陣営は用心に用心を重ね、目の前のレガッタの“現在”と対峙している。
「この馬自身はすごくおとなしいんだけど、お母さんがお母さんだからね。レースではそれなりに走れても、調教が満足にできないというのでは後が困る。そのへんはこちらも慎重になってやっているんだ」と昆調教師。この言葉の後には壮大な“未来予想図”が明かされた。
「もし海外挑戦となった時、環境の違うところで走らなければならないのに“調教ができない”では話にならないし、直前になって泡を食って対策をしても間に合わない。そういったところまで、この馬については考えてやっているつもり。それだけの素材だと思っているのでね」
ナントその目はすでに海外へと向けられているのだ。果たしてレガッタにとって、このきさらぎ賞は将来、どういった位置づけのレースになっているのか? 数年後に振り返った時、「あのレースがあったからこそ」と言われる結果になってほしいものだ。
壮大な未来を意識して慎重に基礎をつくり上げているのがレガッタなら、また違った意味で慎重に調整されてきたのが、きさらぎ賞と同日に行われる小倉芝2000メートル新馬戦でデビューを予定しているタムロミラクル(牡=父ディープインパクト、母タムロイーネー・西園)だ。母は同じく西園キュウ舎で4勝を挙げた活躍馬。そこにディープを配合となれば、オーナー、キュウ舎サイドの期待のほどがうかがえるというもの。しかし、困難は生まれてすぐにやってきた。
「脊椎が弱くて『このままでは競走馬になれないかもしれない』という声もあったくらいなんだ」と西園調教師。しかし、「馬は牧場で元気に走り回っていた。『ひと月は様子を見よう』って時間をもらったんだ」。
父の圧倒的な生命力によるものか、ダートで鍛えられた母のたくましさか、はたまた周囲の人々の思いの強さか…。原動力は特定できないが、タムロミラクルはここから驚異的な成長を見せ、サラブレッドとして鍛えられる段階にまでたどり着いた。
いや、たどり着いただけではない。1週前のウッド追いでは「将来はオープン入り間違いなし」とされるエイシンアロンジー(古馬1000万下)に堂々先着。「ビックリしたよ、アロンジーがついて回れないんだから。やっぱりお父さんの血なのかな。走りや体形が芝のそれだもの」と西園調教師も目を丸くしながら、手応えを口にした。その名が現すように「ミラクル」が起きるのか、きさらぎ賞当日の小倉の新馬戦にも注目してもらいたい。