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国を超えて信頼関係を作っているダリオ・バルジュー騎手にインタビュー

  • 2015年03月10日(火) 18時00分
競馬の職人

ダリオ・バルジュー騎手



バルジュー騎手「日本で乗りたいと思い、イタリアでも頑張っていました」

 春なのに…ちょっと悲しい出来事がありました。何をどう話していいのか言葉になりません。耳にしたときは自分の耳を疑って絶句してしまいました。

 だって…、後藤騎手と22日の日曜日に京都競馬場で話したばかりだった、競馬場で出会った人はみんなそう思ったはずです。

常石 今日、後藤先輩にお会いできてよかった。先輩、昨日(ダイヤモンドSでの落馬)のケガは大丈夫ですか?

後藤 あー大丈夫。またやってしまったな(苦笑)。つねちゃんも頑張ってるから俺も頑張らないと。お互いに頑張ろう! また栗東トレセンへ行くよ。

常石 はい、待ってます。その時はぜひ取材をお願いします。

後藤 あーいいよ。

常石 今週は京都で2勝おめでとうございます。実は先輩にお願いがあるんですが…。前に栗東へ来られた時、派手なブルーのヘルメットカバーを付けてたでしょう。あれってとっても気になるんですが…

競馬の職人

派手なブルーのヘルメットカバーをつけている後藤騎手(写真は以前、栗東に来ていたときの取材写真)



後藤 あー、あれね。あれは特別に作ってもらったものでお気に入りだからあのキャップカバーはあげられないよ。あ、でも他にあるから今度持って行くよ。

常石 はい、お願いします。(ヤッター)

 まだまだ後藤先輩とのエピソードはいっぱいありますが何から話していいのか言葉が見つかりません。僕の怪我のことをいつも気遣ってくれ、会う度に「頑張れよ!」と励ましてくれました。

 後藤先輩、ありがとうございました。いやありがとうございます。僕のそばには後藤先輩がいつもいます。これからもずっと応援してください。よろしくお願いします。

***

 先週から春の夢舞台、皐月賞・桜花賞のトライアルレースがスタートしましたね。東西で4人の新人騎手もデビューしたほか、外国人騎手ミルコ・デムーロ、クリストフ・ルメール両騎手のJRA騎手免許取得によってまた違った楽しみが増えますね。

 今週は、ミルコ・デムーロ騎手と同じイタリア出身のダリオ・バルジュー騎手に注目し、通訳さんを交えてインタビューしてきました。

常石 常石と言います。今日はよろしくお願いします。

バルジュー よろしくー。

常石 日本語上手ですね。

バルジュー 少しね(笑)。

常石 僕は昔、JRAの騎手だったんですよ。

バルジュー あなたのこと知ってるよ。落馬後、東京競馬場に来たでしょう。その時、会って少し話したね。

常石 はっきりは覚えてないんですが外国の騎手に「がんばって!」と声をかけていただいたことは覚えています。あの時はとっても励みになりました。改めてありがとうございました。知らなくて失礼していたんですね。

 バルジュー騎手とは、まだまだご縁? があるんですよ。生まれた月が同じなんです。ホンマ繋がっているんだな、と思うと感激です!

バルジュー そうなんだ、僕も8月生まれだよ。わおー(爆笑しながら握手)。

常石 バルジュー騎手はいつごろから馬に乗っているんですか?

バルジュー 8歳です。イタリアのサルディニア島というリゾート地の出身で小さいころから馬に触れていたんだ。だからかもしれないけど馬に触れているといい気分になれるんだよ。

 競馬には春くらいが一番いい季節だよね。日本でも春競馬は盛り上がってくるしね。

常石 イタリアは世界遺産が多いので競馬場があるのは田舎のほうだと思っていたんですが都市部にあるんですね。

バルジュー そうですね、町の中心地にあります。家族と住んでるミラノにもいい競馬場がありますよ。でもマフィア組織がトップにいるから難しいところがありますね。

 日本競馬は、JRAが組織を作り、システムもきちんとしているからファンも馬も騎手もみんな守られています。だから安心してレースができる。ファンのためにお金も使って、色々なことを工夫されている。日本に憧れます。食べ物も美味しい。みんな親切。だからいつも日本に帰ってきたいです。

 今は、ミラノ・ローマ・フランス・ドイツ・イギリスの厩舎と契約して乗せていただいています。

常石 今年、同じイタリア出身のミルコ・デムーロ騎手が日本で騎手免許を取得されましたがバルジュー騎手は、日本の騎手免許を取ろうとは思いませんか?

バルジュー んーそうだね。デムーロ騎手の挑戦はとってもいいことです。どんどんチャレンジしてほしいと思う。同じイタリア人のリスポリ騎手は、香港で活躍しているよ。

 みんなそれぞれ活躍してくれていてイタリアの誇りです。だけど僕は生まれたイタリアのサルディニア島が大好きだし、妻も子供もミラノで待ってるからね。日本もいいけど子供が待っているミラノへ帰る。もうすぐ子供と妻が日本へ遊びに来るから楽しみです。2週間くらい滞在する予定です。

 伝統があるイタリアの競馬も守っていきたい。もっと発展するように努力していかないとね。競馬はライバルがいるから面白い。そして交流があって日本へ来ることもできるからいいよ。

常石 お子様に会えるのは楽しみですね。またトレセンにも来てください。イタリアを愛しているんですね。母がイタリアへ旅するたびに「母国愛がすごいと感じるし、古いものを大事に、大切に守っている。日本も古いものをもっと守っていかないと…」と愚痴ってます。かなりのイタリアファンなんですよ。余談でごめんなさい。

バルジュー そういってもらえるとうれしいです。妻と子供はここは仕事する場所だから駄目ね。日本へは2002年に初めて来たから、今年でもう13年間来ています。いつも日本で乗りたいと思い、イタリアでも成績を残せるように頑張っていました。子供と妻を守りたいから一生懸命頑張ってます。

競馬の職人

調教へ向かうバルジュー騎手の後ろ姿



常石 イタリアでは大活躍されていますよね。2002年にファルブラヴ号に騎乗しイタリア共和国大統領賞・ミラノ大賞典優勝。2003年と14年にはヴィットーリオディカプア賞、ローマ賞などのイタリアGIを制しています。

 2006年・13年・14年とリーティング1位になり、リーティングジョッキーになるなどすばらしい活躍です。06年なんて183勝ってすごい数字でびっくりです。そして日本でも大活躍ですね。日本のレースは覚えておられますか?

バルジュー もちろん覚えています。2002年のフェアリーステークスではホワイトカーニバルでJRA重賞を初めて勝利しました。その後、佐々木厩舎のコスモサンビームで2003年の朝日杯フューチュリティステークスでJRAのGIを勝ちました。コスモサンビームは乗りやすく、僕の思い通りの展開で乗れました。(コスモサンビームでの)GI勝利は、やっぱりうれしかったです。

 佐々木先生には、いつも乗せてもらってお世話になっています。小倉開催もいい馬に乗せてもらっています。

 他にも角居先生や中内田先生などいろんな先生にお世話になっています。どのレースも勝つ気持ちをしっかりもって乗っています。やっぱり勝つとうれしいね。

 僕たちのような外国の騎手と日本の騎手とこれからの若い騎手が交流し刺激になると競馬がもっと盛り上がるから面白い。

常石 イタリアの競馬場の特徴を教えてください。

バルジュー 直線が長く、800mもある競馬場もあります。馬場も広くて大きいし、直線も長いから最後までもたせるのが難しいですよ。

常石 だから折り合いをつけるのが上手いんですね。

バルジュー いつも強いハートを持っています。

常石 僕は障害者乗馬をしているんですが折り合いとか、すわりが悪いので苦労しています。大きな大会はヨーロッパへ行かないとないんですね。

バルジュー 乗馬は、ヨーロッパでは発展しています。生活の一部ですから。もっともっと乗って理解を求めていきたいです。応援していますよ。

常石 ありがとうございます。僕も日本での活躍、そしてイタリアでの活躍も応援しています。最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

バルジュー 日本大好きだからいつでも帰ってきたいです。応援してください。

競馬の職人

バルジュー騎手「日本大好きだからいつでも帰ってきたいです。応援してください」



常石 待っています。ファミリーで楽しい休日を過ごしてください。

***

 佐々木晶三先生にバルジュー騎手への応援メッセージをいただきました。

佐々木 僕の厩舎の馬、コスモサンビームでGIを勝ってくれたんだよ。最後まであきらめずにしっかり追ってくれるからうれしいね。小倉競馬は全部任せています(笑)。

 身元引受調教師の中内田先生にもメッセージをいただきました。

中内田 イタリア人特有の熱いものを持っていて、前向きの姿勢があり努力家ですごく頑張ってくれるからサポートする側もやりがいがある。イタリアの厳しい競馬も経験しているので自分自身をしっかり持っている。

 テン乗りが多いけど位置取りとか(こちらの)イメージ通りにレースを展開して、納得のいく競馬をしてくれる。攻めも積極的に乗り、道中折り合いをつけるのもうまいね。

 こう語るとやっぱりすごいよな。しっかり乗れるので頼もしい。うちのいい戦力です。家族が来日するのを楽しみにしているのでもっと頑張ってくれるでしょう。日本の騎手にもいい刺激になるので応援しています。

 佐々木先生、中内田先生ありがとうございました。

***

 国を超えて信頼関係を作っているのはバルジュー騎手の人柄と信頼度の高い騎乗力だと感じました。13年間も日本に来日し、乗り続ける精神力と熱いハートがあるよと言ったバルジュー騎手の馬を愛する本気をみました。何事も本気本物が一番ですね。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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