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ワンアンドオンリーの馬房の前で
橋口先生「ダービー馬の品格を下げたくないね。いいレースを期待しています」
今週末は2015年海外競馬の幕開け、ドバイワールドカップデーが行われます。28日(土)深夜22:30から23:15、24:45から27:00までグリーンチャンネルでも放送があり、眠れない長い1日になりそうです。
今週のコラムはドバイワールドカップデー・今昔特集。今年出走を予定している陣営の意気込みと過去の出走馬の思い出をいろんな方々にお聞きしてきました。
今年出走を予定している7頭はエピファネイア・ホッコータルマエ・ハープスター・ワンアンドオンリー・ディアドムス・タップザット・ゴールデンバローズ。どの馬も楽しみです。
特に今年はオールウェザーコースがダートに変更になりましたね。この変更は日本馬にとって有利に働くのではないでしょうか?
そして日本では春競馬の始まりを告げる高松宮記念が行われます。あっちこっちで桜の開花宣言も。競馬を楽しみながらのお花見もなかなかいい感じですし、この春も盛り上がりが期待できそうです。
まずはドバイシーマクラシックに出走予定のワンアンドオンリー号に期待を寄せる橋口先生にお話をお聞きしてきました。
常石 昨年のダービー馬、ワンアンドオンリーがドバイへ出走しますが楽しみですね。ハーツクライと親子制覇を・・・と思うとワクワクします。
橋口 そうなれば嬉しいですが。まずはダービー馬の品格を下げたくないね。いいレースを期待しています。(レースでは)C・デムーロ騎手に乗ってもらいます。日本での短期免許は終わってもう帰っているので現地では万全の態勢で騎乗してくれるでしょう。メイダン競馬場のこともよく理解しているし、勝負どころも心得ているので安心してお任せします。僕は、見てるだけですね。
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橋口調教師が「まずはダービー馬の品格を下げたくない」と語るワンアンドオンリー
常石 帯同馬は行かないんですか? オンリーには誰が同行されるんですか?
橋口 日本から全部で7頭も行くから大丈夫でしょう。それに空輸時間も短縮されドバイへ直行できるのも好条件です。担当の甲斐君と調教師見習い中の息子が行きます。ちょうどいい時期に調教師試験に合格できたので勉強になると思うよ。馬はさみしがり屋だから知らない土地に行くと人を頼りにするので、慣れた人が大事だね。甲斐君なら安心して任せられます。人も外国へ行くことに慣れてきているし、向こうの競馬場などの要領もわかってきたので過ごしやすくなってきましたね。
もちろん最初は、わからなくて手探り状態だったけど、あきらめずにコツコツと頑張ってクリアしていくところが日本人のいいところだね。すばらしいと思います。9年前とは違って競馬場もきれいになってホテルもショッピングモールも出来て楽しいところになりましたね。国を挙げて盛り上がっていますから。
常石 シーマクラシックをハーツクライで制覇されていますよね。すごいです。あらためておめでとうございます。ことしも期待が大きいです。
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ルメール騎手の手綱でドバイシーマクラシックを快勝したハーツクライ(撮影:高橋 正和)
あっ、そうそうユートピア号も日本調教馬による初の海外ダート重賞制覇されています。この馬、ダートはめちゃめちゃ強かったですよね。今年、だったらダート競馬になるのできっと力を出してくれたでしょうね(笑い)。
橋口 そうだね。ダート王のアドマイヤドンに快勝した2004年のマイルチャンピオンシップ南部杯の時は強かったですね。2005年も勝利してトウケイニセイに続く史上2頭目の同競走連覇をやってくれました。あの馬は面白かったね。走るかと思うと走らなくなったりまた力を出して走ってくれたり長ーいローテンションで使っていきましたね。経歴も面白いですよ。中央競馬3勝・地方競馬4勝・ドバイ1勝・アメリカ1勝と世界で活躍した馬でしたね。ゴドルフィンマイル勝利後、アラブ首長国連邦のシェイク・モハメド率いるゴドルフィンへの移籍が決まりました。日本馬の現役GI馬が海外へ移籍するのは、シーキングザパールとこの馬の2頭だけでしたね。
常石 ドバイへ挑戦しようと思われたのは、どんなきっかけだったんですか?
橋口 国内ダートではいい成績を残していましたが日本にはダートレースが少ないでしょう。それでドバイ挑戦が決まったんですね。ドバイミーティング、ゴドルフィンマイル(ダート1600m)を豊クンとのコンビで逃げ切り勝ちだったからびっくりしたね。豊クンがうまくリードしてくれた結果だが6歳馬になってからのユートピアもよく走ってくれたね。
*ユートピアと一緒にドバイへ同行した蒲田助手(引退後ヘルパーとして競馬会で仕事中)に聞くと
蒲田 日本で乗っていた時は、繊細な気性だったので扱いが難しかった。フォーティナイナーの子なのでダートはよく走る。芝でも安田記念4着などよく頑張ってくれたね。ラジオを聞かせて音に慣れさせたり、花火への対応も工夫しました。広いのびのびした競馬場が気に入ってくれたのか豊さんを背によく走ってくれました。日本で勝つのとはまた違った感じで場内が盛り上がってくれたのがすごい。あの時は今ほどきれいじゃなく田舎だったので町まで買い物に行くのが大変でした。人が慣れることが一番大事だと感じましたね。人が不安に思うとそれが馬に伝わるからね。後はここで生活していたら何とかなるという担当の人間が根性を据えることが必要と実感しました。いかにドバイでの生活を楽しむかですよ。そうすれば馬も走ることを楽しんでくれると思うよ。
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武豊騎手とのコンビでゴドルフィンマイルを逃げ切ったユートピア(撮影:高橋 正和)
常石 蒲田さんありがとうございます。レースに行くというよりドバイでのレースを楽しむことが大事なんですね。面白いです。よくわかりました。僕も楽しんでTV観戦しします。
あらためて橋口先生に
常石 では、今年ワンアンドオンリーでシーマクラッシックに出走しますが、ドバイへの挑戦は3度目ですね? 先生もすごい経歴を持たれています。ドバイのことは知り尽くしているって感じですね。今日(取材日は3月11日)、調教を見ましたがオンリーの調子はどうですか?
橋口 いやいや、やっぱり日本がいいよ。日本馬が外国で活躍し少しずつ認められるようになってきたことは競馬会の発展のためにはいいことだよ。ヨーロッパの競馬にはなかなか追いつけなかったけど、ジャスタウェイの活躍などで日本の馬を意識するようになってきていますね。この馬もハーツクライの子供なんだよね。サンデーサイレンスの血統が活躍していますね。
オンリーは順調です。3月12日に免疫検査をしレース10日前に出発です。折り合いさえつけばどんな競馬でもでき、もともと器用な馬なので器用さを発揮できれば現地でも十分に対応できる能力を持っている。素直に馬自身が持つ力を発揮してくれたらいいね。マイペースの馬だからペースを乱されるとカッと怒りスイッチが入ると目つきも変わってきます。ON・OFFがはっきりしている。そこがいいんだよね。オンリーと一緒に頑張ってきます。応援してください。
常石 長い時間ありがとうございました。先生のお話をお聞きしているとチャレンジすることの意義がいかに大切なのかよくわかりました。結果も大事ですがそれだけにとらわれず一つ一つの積み重ねが日本馬を強くし世界にアピールしていることがよくわかりました。TVにかじりついて応援しています。
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昨年世界一に評価されたジャスタウェイ号の須貝先生と福永騎手にお話をききました。
常石 須貝先生、ドバイデューティフリーでのジャスタウェイの圧勝、あらためておめでとうございます。もう1年も前になるんですね。ドバイワールドカップデーが開催される前に昨年のことを少し振り返ってください。
須貝 なんの迷いもなく勝つと思って挑戦したよ。ドバイへ行ってからも変わらず落ち着きがあったし、自信はあったな(笑い)。今までは輸送に13時間もかかったけど今年はノンストップで行けるようになったからいいよね。
常石 ドバイの馬場は大丈夫でしたか? 花火がすごいんでしょう。お祭りのようだと聞いていますが、馬は大丈夫でしたか?
須貝 メンコを2枚かぶせて音が聞こえにくいようにしていた。日本にいる時もラジオをかけたり音に慣れさせることが大事だな。レース当日は、雨だったけど前日に芝を刈っていたので日本馬が走るのにはぴったりの芝になっていたのでこれなら大丈夫と思ったけど、レースでは何が起こるかわからないからね。だから『スムーズにゲートを出ていい位置でレースを運ぶ』Aプランと『ゲートで出遅れたとき後方からのレースになったとき』のBプラン、と2つの作戦を考えて福永騎手に伝えていた。外国馬に挟まれたときにどう動くか? が勝負どころだったけれど福永騎手がうまく乗ってくれた。
直線残り300m付近で外へ出して抜け出すと一気に切れる脚を使ってすごかった。2着馬に6馬身1/4もの差をつけたんだから強い馬だよね。レコードとなる1:45.52のタイムがよかったな。このレースで日本競馬史上初となる2014年ワールドベストレースホースランキングの単独1位になったしね。
タペタという人工のオールウェザーコースは慣れるのに時間がかかる。今年はダートに変わるので、その点は日本馬にとっては良いと思う。今年も楽しみだね。(ジャスタウェイで)ハーツクライと親子制覇できたから、今度はジャスタウェイの子でドバイへ行けるような強い馬を作るわ。
常石 1月4日引退式が京都競馬場で行われさみしくなりましたが種牡馬としての活躍を楽しみにしています。先ほどもお話に出ましたがその後、ワールドベストレースホースランキングで日本馬が初めて世界一になり、名誉な賞の受賞、おめでとうございます。
須貝 うれしいことですね。もっと強い馬をつくらなあかんね。
常石 2位もエピファネイアで日本馬のワンツーは日本馬の実力ですね。ジャスタウェイが切り開いてくれた功績は大きいですね。子供も楽しみにしています。ありがとうございました。
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須貝先生への取材は3月18日で、ちょうど岩田騎手を背にゴールドシップの追い切りが行われているときでした。ゴールドシップを見て『いい動きやな』と満面の笑みを浮かべる須貝先生でした。ゴールドシップの阪神大賞典3連覇おめでとうございます。須貝先生の太い二の腕からあふれるエネルギーを感じました。
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福永騎手にも聞いてきました。
常石 ドバイデューティフリーをジャスタウェイで勝った時の印象を教えてください。
福永 そりゃうれしかったよ。ヨーロッパの競馬が冬に休んでいて、シーズン開幕後すぐに行われるレースだから日本馬が有利になりますね。向こうの馬場も走りやすくなってきているし、人も慣れてきたから動きやすくなっていたね。お祭りだから花火も歓声もすごいけど、対策は取っていたから大丈夫だった。馬場もちょうどジャスタウェイにぴったりだったので外へ出してからいい脚使えたね。
常石 レコードタイムでの圧勝でしたね。その功績を認められワールドベストレースホースランキング1位になったというのもすごいな。あらためておめでとうございます。表彰式は、どこであったんですか?
福永 イギリスでありました。名誉な馬に乗れたことに感謝ですね。
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福永騎手も「名誉な馬に乗れたことに感謝ですね」と語るジャスタウェイのドバイデューティフリー(撮影:高橋 正和)
常石 まだまだ走ってくれそうなのに引退はもったいないくらいですね。
福永 ジャスタウェイの子を楽しみにしましょう。
常石 ありがとうございました。今年も大活躍なので楽しみにしています。ユーイチが活躍してくれると僕まで嬉しいです。
福永 つねちゃんも頑張ってや。
常石 ありがとうございます。
ドバイの話はまだまだ終わらないですね。豊さんにもステイゴールドの話をお聞きしたかったんですが今回は、残念でしたが次回の機会に。
ステイゴールドを担当していた厩務員の山元さんは現在引退され、息子さんが池江厩舎の助手をされているのでお父さんがよく話していたステイゴールドの話もお聞きしました。今度は是非、お父さんにお会いしてお聞きできたらいいなと思っています。
今年チャレンジする馬たちにもチャンスあり、世界に羽ばたく夢を見ながら・・・つねかつこと常石勝義でした。