ベテラン騎手のレース後コメントには、サービス精神やらぶっちゃけ精神やらが混ざっていたりすることもあって(いつもじゃない)、油断できない。
たとえば先週のエプソムCの武豊騎手のレース後コメントはファンの心情を察したコメントで心地よくスカされた気がする。
「3走前のようなレースぶりを期待したファンもある意味裏切ってしまいました」(ラジオNIKKEI競馬実況webより)
3走前のようなレースぶりとはもちろん、アイルランドTでの大斜め走のことだけど、それを楽しみにしていた一人としては、それを武豊自身に、レースを勝った上に言われちゃ、お手上げだ。承知しました〜! としか言えない。
武豊騎手独特のサービス・コメントと受け止めたけど、なんか大人!って感じだ。ひゅーひゅー!
これはこれで素晴らしいけれど、今後の馬券的イマジネーションは広げにくい。いや触ろうと思えば触れるけれど、触り甲斐はあまりない。
馬券的にはもっと子供な、いや素直な、思わず出ちゃった的な本能型レース後コメントの方が触りごたえはある。
ここでも何度も引用しているけれど、その最たるものは柴田の善さんのベルシャザールへのコメント「なんだ、この馬。すげえな」だろう(2013年11月28日付けコラム)。
自分はこの本能型コメントに大いに揺さぶられて、ジャパンカップ・ダートでは大いに期待することができた。
その柴田の善さんから、またまた興味深いコメントが出た。
「能力あるね。折り合いがついたら、すごいよ! 最後、ギュンと沈んだから」(日刊スポーツより)
馬はサトノデプロマット。
4/4 中山芝1200
船橋S(1600万条件)1着時のコメントだ。
折り合いがついたら、すごいよ!
ギュンと沈んだから
滋味に溢れたイマジネーションを膨らませてくれるコメントだ。
サトノデプロマット 牡5 高橋亮厩舎
父ブライアンズタイム 母ピサノパーキン
母父サンデーサイレンス
中央成績
芝2-0-0-1
ダ2-1-0-7
地方成績
3-1-0-0
中央では1勝もできずに園田へ行って、3-1-0-0の成績を残し、中央に戻り、
500万ダートで2-1-0-0したものの、1000万に上がってからは、3戦して14着、5着、4着と馬券にも絡めず、芝を使ってみたら、1000万、1600万と連勝。
元々は池江厩舎で、地方を挟んで、高橋亮厩舎所属になった。
そんな馬。
前記したコメントは、前走の1600万条件戦で出た。
当時は、4人気。持ち時計がないことから、速い時計の決着では無理と言われていた。
しかし、1:07:4で勝った。時計を一気に2秒も縮めた。
2-2-2の位置取りだったから、ほぼ自力で叩き出したタイムでもある。
で、鞍上の善さんから、「能力あるね。折り合いがついたら、すごいよ! 最後、ギュンと沈んだから」とのコメントがこぼれたわけだ。
コメントは1紙だけでは不正確の場合もある。だからラジオNIKKEI競馬実況webでも拾ってみた。
「真面目すぎるところがあるので、逆に外枠がよかったです。真ん中ぐらいの枠だと他の馬にこすられてグンと行ってしまいますから。能力はありますし、距離は1200mがいいです。折り合いがついたらすごいですよ。最後はグッと沈むフォームでした」
ラジオNIKKEIのコメントは少しスマートな口調になっているけれど、言わんとしていることは同じだ。自分はグッと沈むよりギュンと沈むという表現の方が好きだけど、好みの問題でどっちだっていい。枠は14頭立ての14番だった。
このコメントからは「たとえ1200の距離でも、ちょっとしたことで、引っかかってしまう危険のある繊細な馬だけど、それが出なければ、ひじょうに強いのではないか? そういう意味では枠は外の方がいい」、そんな想像ができる。つまり、条件はつくけど「ただならぬ馬」と解釈できる。
サトノデプロマットは池江厩舎にいた頃は、ダート中距離を中心に使われ、勝てず(芝は2000で8着)、園田でダ1400ばかり使われ、頭角を表し、高橋亮厩舎に入って、そのままダ1400を中心に使われていた。
つまり善さんの言う芝1200が適距離ならば、ここ2走でやっと適性レースに出走できたわけで、実はまだまだ底が見えてないとも言えるわけだ。
池江厩舎時代
ダ18 7着
ダ18 5着
ダ14 8着
芝20 8着
ダ18 9着
未勝利のまま園田へ
園田時代 ダート14期
ダ14 1着
ダ14 1着
ダ14 2着
ダ14 1着
高橋亮厩舎へ
ダ14 1着(500万)←よ〜し、ダート1400だぁ〜〜!!
ダ14 2着(500万)
ダ14 1着(500万)
ダ14 14着(1000万)←あれ?
ダ14 5着(1000万) ←あれれ?
ダ12 4着(1000万) ←あれれれ? もしかして芝?
芝12 1着(1000万) ←おっと! 芝だったの!?
芝12 1着(1600万) ←ギュン!
地方を挟んだとはいえ、池江厩舎→高橋亮厩舎は厩舎力が少しダウンしたかのように思える。
けれど、馬の適性が短距離だとするならば、一概にマイナスとは言えない。
それは池江厩舎が芝中距離のスーパー厩舎だからだ。
池江厩舎は芝中距離で強い馬を作る王道系の厩舎だ。
重賞48勝中45勝が芝で、すべて1600以上。1600より短い距離で勝ったのはダート1400の2勝しかない。
つまり、池江厩舎に預けるということは、中距離路線の王道を歩むということでもある。スプリンターが入学するところではないとも言えるわけだ。
そう考えると、より一層、サトノデプロマットには未知の部分があることがわかる。
池江厩舎に所属していたということは、何かしら光るものがあったということでもある。それは池江厩舎の他のサトノの馬が証明している。距離適性を間違えることはあっても、素質の片鱗を間違える、もしくは見逃すことはないはず。
高橋亮厩舎は今年3年目の若い厩舎で、2勝(201位)→21勝(56位)→13勝(32位・6月14日付け)と伸び盛りの厩舎だ。
重賞は1勝だけだが、トーホウアマポーラでCBC賞(芝1200)を勝っている。
若手厩舎は短距離や牝馬で実績を積み、そこから中距離&牡馬で勝てる馬を預託されていきがちだけど、高橋亮厩舎もその段階を踏んでいる最中かもしれない。
そのサトノデプロマットが函館スプリントSに出走する。
前走条件戦だった馬には、初のG3は厳しいかもしれないけれど、まだ底を見せてないし、逃げを得意にしている馬のいる重賞なら、ペースも向くかもしれない。だから、そこは気にしないことにした。
これで外目の枠に入ろうものなら、たとえ開幕週といえでも、ギュンと沈んで駆け抜けることを期待せずにはいられない。予想9人気は自分的には少々不満だけど(11人気くらいがいい)、このくらいの人気なら、マークも少なくてすむ。悪くない条件とも言える。
鞍上は、善さんではなく和田騎手だけど、主戦騎手のはずだから気にならない。引っかかりそうな先行馬に騎乗するのは和田騎手も上手い。
善さんはこのレースで、セイコーライコウに騎乗するけれど、これももともと主戦だったから当然で、選んだとも思えない。セイコーライコウがサトノデプロマットより外枠に入って、こすって来たらヤバイけど、それは致し方なし。9人気ならばそこは飲み込める。
というわけで、函館スプリントSはサトノデプロマットの「ギュンと沈む走り」に注目している。
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函館スプリントS注目馬
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サトノデプロマットのギュン!
今年の函館SSは開幕週。これは2年前と同じ。開幕週は内有利だとしても、善さんが言う「外枠」意見を尊重したい。だとするとベストは7枠か8枠か。
2年前はパドトロワが7枠14番から好スタートを決めて、番手競馬で1着した。
もっとも、たとえ1枠に入ったとしても、いろいろと理由を付けて、買うような気がするけど…。
とにかくギュン!と沈んで欲しい。
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ユニコーンS 注目馬
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ラインルーフ
ジャパンダートダービーで買いたいと思っているライドオンウインドに、前走の鳳雛Sで0.1差で2着した。
この馬の先行力としぶとさが東京1600でも生きれば、3着できるのではないか?
予想では現在7人気。
重賞で7、8人気の武幸騎手は心配指数0ゾーンでもあり、そそられる。
1人気馬がとても強く、2〜4人気馬も強いレースだけど、ゴールデンバローズ以外の馬は勝ったり負けたりしてるメンバー同士でもある。ならば7、8人気になりそうなラインルーフでも食い込める余地はあるはず。そんな見立て。