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どうした?サンビスタ/スパーキングレディーC

  • 2015年07月02日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



秋へ向けてさらなる上積みも

 ゴールドシップの宝塚記念ほどではないにしても、競馬はやってみなければわからないし、あらためて生身の馬が走って争っているのだなあと思わされる結果だった。

 ダート初参戦だったメイショウマンボについてはあとで触れるとして、女王サンビスタにとって当面の相手はトロワボヌールとサウンドガガ。対トロワボヌールということでは、今回と同じ斤量のマリーンCで楽々と4馬身ちぎった相手であり、同じ左回りの道悪ということで条件も似通っていた。逃げ馬がサマリーズからサウンドガガに変わっただけで、そのうしろをサンビスタとトロワボヌールが追走という、展開的にも同じようなものが予想され、実際にそのとおりになった。もう一方のサウンドガガは、昨年のこのレースを制しているとはいえ、依然として距離的な不安があった。

 それらを考え併せれば、サンビスタが単勝1.4倍の断然人気になったのは当然のこと。しかし結果は、トロワボヌールがゴール前で抜け出し、逃げたサウンドガガが1馬身半差の2着、サンビスタはそこからさらに3馬身遅れての3着と、斤量差があったにしても完敗といえる内容だった。

 活躍の舞台がダート1200mというサウンドガガのスタートダッシュはさすがに速い。ほとんど仕掛けることなく先頭に立った。大外枠から出ムチを入れて2番手につけたのがカイカヨソウ。中団や後方からの競馬で1年以上結果がでていなかったので、今回は思い切って前に行ってという意図だったのだろう。そのうしろ3番手にサンビスタとトロワボヌールがほぼ併走する形で続いた。

 前・後半4Fずつでタイムを分けると50秒0と50秒8で、勝ちタイムは1分40秒8。ちなみに昨年サウンドガガが逃げ切った時は、前半49秒1、後半50秒3で、勝ちタイムは1分39秒4というもの。川崎のレース回顧では再三触れているとおり、昨年秋の馬場改修以降は時計がかかるようになった。昨年のスパーキングレディーCは良馬場、今年は湿った重馬場だったが、昨年と今年の同日に行われた同じようなクラスで同じ距離のレースを比較してみても、今年のほうが1秒5前後時計を要している。平均ペースで流れて、前半よりも後半が少しタイムがかかってということで、馬場差を考慮すれば昨年とほとんど同じ質のレースだったといえる。1〜2コーナー中間から向正面に入る4F目でサウンドガガが13秒台にペースを落としてというのも同じペース配分。違っていたのはゴール前だけ。昨年は最後の2Fが13秒4-12秒5で、サウンドガガがゴール前でもうひと脚使って逃げ切ったが、今年の最後2Fは13秒5-13秒0というもの。最後の1Fのタイムはトロワボヌールが先頭に立ったあたりからのもので、サウンドガガ自身の最後1Fはさらにコンマ2〜3秒かかっているはず。サウンドガガにとっては、そこで余力を残していたトロワボヌールに屈する形になった。

 サンビスタはといえば、逃げていたサウンドガガが3〜4コーナーでもほとんど持ったままだったのに対して、3コーナーあたりから追い通し。すでにこのあたりで勝負あったという感じだった。サンビスタは前走かしわ記念でも3コーナーあたりから追走一杯になり、しかしそれは牡馬一線級が相手だからという理由にも思えたが、牝馬相手の今回もということになると、力を出し切っていないのは明らか。昨年7月以降、長くても2カ月以内の間隔で使い続けているだけに、秋に向けてということでは、ここで一息入れて立て直せるかどうか。

 勝ったトロワボヌールは、畠山調教師の話によると、前走のさきたま杯はここへ向けてほかに適当なレースがなかったという、あまり積極的ではない理由での出走だったようだ。それでも牡馬相手に1400mのやや忙しい競馬は、1200mのスペシャリスト・サウンドガガが逃げるという今回のレースに向けて、結果的にではあるもののいい経験になったはず。まだ5歳でもあり、秋へ向けてはさらなる上積みもという可能性を感じさせるレースだった。

 サウンドガガは自分のレースをしたまで。結果は、最後まで粘りがきいた昨年に対して、今年はそれが少し足りなかった。

 地方最先着の4着は名古屋のピッチシフター。サンビスタ、トロワボヌールの直後を追走して、4コーナーから直線に向くあたりでは2着か3着はあるかという勢いだった。2歳時のエーデルワイス賞、昨年のサマーチャンピオンと、ダートグレードで2度の2着があり、4着はこれで3度目。ほかに、2013年のJBCクラシック、昨年のレディスプレリュードと、レベルの高いメンバーが集まった中でも地方最先着の5着がある。さすがにここから一変して力をつけるということもないだろうが、相手関係やハンデ戦の斤量次第では引き続きはチャンスはありそうだ。

 最後に、メイショウマンボは掲示板にも乗れずの6着。斤量、ダート、ナイターなど初物尽くしで、さらにスタートでダッシュがつかずということはあったにしても、それほど無理することなく先行馬群のうしろ、ピッチシフターと併走する位置にとりついた。ところが3コーナー過ぎからはレースをするのをやめてしまったのか、鞍上が懸命に追っても反応はなく、4着のピッチシフターから5馬身ほども離され、さらに離れた後方集団を追走していたタッチデュールにもハナ差とらえられてという結果。昨年のヴィクトリアマイルでの2着以降、中央では二桁着順が続いていて、勝ち馬との着差はすべて1秒台。今回は2秒4も負けてしまった。馬を近くで見ているわけではないのであくまでも想像だが、相手なりに「この程度走っておけばいいだろう」と馬が思うようになってしまったのではないか。むしろ5着のタッチデュールにとっては、地元重賞勝ちに近い賞金を得る大きなハナ差だった。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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