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音無師が「ウオッカのように真っ黒なんだ」と目を細める大型馬ブラックスピネル/吉田竜作マル秘週報

  • 2015年07月15日(水) 18時00分


◆このブラックスピネルは入厩前から音無師のお気に入り

 突然ですが、当コラムをご覧の方々は“イクメン”してますか? かく言う記者は尻に敷かれ…ではなく、共働きゆえ、それなりに育児も手伝ってきた次第。子供を相手にする生活はなかなか経験できないことの連続で、そうは巡り合えないシーンにも何度となく立ち会ってきた。先に断っておくと、出産には立ち会えなかったので、今でもその時の嫌みは言われるのだが…。

 最も面白かったのが6か月健診。首の据わり具合や発育状況を見てもらうのだが、小柄だったウチの娘は動きもキビキビとしていて、どちらかといえば活発に見えた。一方で同じ月齢とはいえ、腕も足もギフト用のハムのような巨大児もいるわけで。こちらは活発に動けるはずもなく、顔にもあまり表情が出ない感じ。当たり前と言われれば当たり前だが、それぞれ成長のスピードが違うのだなあと感心したものだ。

 長い前振りになったが、ここからが本題。人の子供と2歳馬の共通点…それは小柄な方が“動ける”。もちろん、例外は人にも馬にもあるが、まだろくにトレーニングも積んでいない状態では、動かすものが軽ければ軽いほど動けるし、重ければそれなりに鈍くなるものだ。

 土曜(18日)の中京芝1600メートル新馬戦でデビューを予定しているブラックスピネル(牡=父タニノギムレット、母モルガナイト・音無)も2歳馬としてはかなりのサイズ。8日の坂路の追い切りは4ハロン53.2-13.3秒とそれなりの時計は出たが、見た目にはモタモタ映った。音無調教師も同じ印象を受けたようで「まだ体を持て余しているように見えたよな」。

 それでも人間とサラブレッドでは成長のスピードが違う。音無師ほどのキャリアがある人ならば、一度の追い切りでどこまで変わるか、ある程度の予測はつくもの。「これでも入ったころに比べれば良くなってきたし、あとひと追いで何とか」とトレーナーも期待を持って見守っている。

 このブラックスピネルは入厩前からトレーナーのお気に入り。「タニノギムレットの子はカリカリして線の細い馬が多いが、この馬はまずサイズが大きい。それに毛色がウオッカのように真っ黒なんだ」と、希代の名牝の名を挙げたほど(こっちは牡馬だが…)。中京競馬場にお越しの方は、ぜひその迫力ある馬体をナマで見てほしい。

 この時期はモッサリ見えがちな大型馬でも、やはり例外はいる。その一頭に挙げられそうなのがラニ(牡=父Tapit、母ヘヴンリーロマンス・松永幹)だろう。ご存じ“天覧競馬”のヒロインとなった名牝の子はなかなかのヤンチャ坊主で、「前の馬とすれ違おうとすると馬っ気を出すし、人を見たら蹴りに行く。まだ子供っぽいね」(松永幹調教師)。

 2歳馬特有の幼さは残るものの、芦毛の馬体はガッチリとしていかにもパワフル。“悪さ”をできるだけの体力と筋力はすでに身につけている。

 もちろん、御す側も2歳馬にやられっぱなしではいけない。サラブレッドとしての基礎や作法を教え込もうと必死だ。

「まず疲れさせようと思って、コース(トラック)でも2周乗ったりしているんだけどね。バテるどころか、とにかく元気が良くて…」と松永幹師も苦笑い。今でも自らまたがって調教をつけるが、「この馬には乗りたくない。だって怖いんだもん」というほど。笑顔交じりだけに冗談なのだろうが、それほどに手ごわい逸材なのだろう。

 しかし、うるさいだけではない。9日にはゲート試験を難なくクリア。「環境に慣れるまでこちらに置こうかとも思いましたが、徐々に慣れてくれたので一度放牧に出すつもりです。2歳戦からというタイプには思えませんし、これから成長していってくれれば」(松永幹師)

 大きなワルガキが放牧を挟んでどのように成長して帰ってくるのか。父の視点…はちょっと言い過ぎだが、温かい気持ちで帰厩の日を楽しみに待ちたい。

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