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実力の違い見せた、連勝アムール、復調サンビスタ

  • 2015年08月14日(金) 18時00分

(撮影:田中 哲実)



いよいよ身が入っての本格化

 出走していればおそらく中央馬ではもっとも人気がなかったと思われるアクティビューティが出走取消となって中央馬は4頭。それゆえなおのこと4頭に人気が集中して単勝オッズは4倍以下。地方馬はもっとも人気を集めたサンバビーンでも40倍と、地方で行われるダートグレードではしばしばあるが、極端なオッズとなった。

 逃げが予想されたのはサンバビーンかキャニオンバレーのどちらかだったが、逃げたのは、やはり枠順が内のサンバビーン。キャニオンバレーは半馬身ほどの差でぴたりと2番手につけた。前半1000mの通過が1分4秒0。前走2着に6馬身差をつけてサンバビーンが逃げ切ったノースクイーンカップの1000m通過が1分3秒4で、同レースの距離が1800mであることを考えれば、ペースはほぼ同じようなものだったと考えられる。ただ実際のタイム以上に、キャニオンバレーにぴたりとつかれて息の入らない流れは厳しいものだったのだろう。サンバビーンは3〜4コーナー中間でキャニオンバレーに、さらにホワイトフーガにも並びかけられると、抵抗できるだけの余力はなく、徐々に後退していった。

 それらを目標にレースを進めていたのが、サンビスタとアムールブリエ。直線を向いて間もなくサンビスタが前をとらえると、アムールブリエも追ってきて、残り200mからは2頭の一騎打ち。最後はアムールブリエ(57kg)がサンビスタ(58kg)をクビ差とらえてのゴールとなった。5馬身差がついての3着ホワイトフーガが55kg、さらに5馬身差4着キャニオンバレーも55kgという斤量差を考えると、なお2頭の力が抜けていたという結果。

 しかも勝ったアムールブリエは、エンプレス杯以来5カ月ぶりの実戦に加え、馬体重はプラス28kg。ただ昨年10月には496kgで出走したことがあり、そのころはなかなか勝ち切れない時期だった。その後昨年末からの3連勝では馬体を減らし続けていたが、休養で戻した馬体にはいよいよ身が入っての本格化といえそうだ。過去最高の57kgを背負っていたことでも、今後の期待が高まる勝利となった。

 サンビスタは、2着に負けたとはいえ、牝馬としては酷量ともいえる58kgを背負ってのクビ差。レースの上りが39秒0のところ、この馬自身は38秒5で最後までしっかり脚を伸ばしていた。前走のスパーキングレディーCが3コーナー過ぎですでに手ごたえ一杯という負け方をしていただけに心配されたが、それを払拭する走りを見せた。このあとはダートの牝馬路線を目指すのか、それとも牡馬とのGI/JpnIを目指すのか。いずれにしても秋はさらに状態を上げて臨んでくるに違いない。

 このレースが牝馬のJpnIIIとなって今年で2年目となり、昨年の勝ちタイムが2分7秒4で、今年は2分8秒1。対してこのレースが門別2000mで行われるようになった2009年以降、牡牝混合のJpnIIとして行われていた2年前までの勝ちタイムでは、もっとも遅いものでも2分5秒0。当時の勝ち馬にはスマートファルコンやハタノヴァンクールといったGI/JpnI勝ち馬もいた。GI級もしくはGIを目指すクラスの牡馬とでは、それだけレースの質に差があるということだろう。

 地方馬最先着の5着は、3歳のステファニーラン。4着のキャニオンバレーからは4馬身離され、走破タイムの2分11秒0は勝ち馬から2秒9差。牡馬の時代も含めて門別2000mとなった2009年以降で、地方馬で好走したといえるのは2009年のフリオーソ(4着、勝ったスマートファルコンとは0秒6差)だけ。それ以外、地方最先着馬は勝ち馬から少なくとも2秒以上の差をつけられている。牝馬限定戦となってもなお、中央の高いカベを認識させられるレースではある。

 今回、地方馬でもっとも人気になったサンバビーンは、今年中央で準オープン勝ちがあったという実力だけに、もう少しやれると思ったのだが……。自らペースをつくってマークされる展開は相当に厳しいものだったのだろう。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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