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1番人気にこたえる好騎乗/サマーチャンピオン

  • 2015年08月19日(水) 18時00分

(写真提供:佐賀県競馬組合)



絶妙だった川田将雅騎手のコース取り

 前走北海道スプリントCの逃げ切り快勝で2番人気に支持されたシゲルカガには厳しいレースになった。トップハンデ57kgは、ほかにダートグレード勝ち馬が浦和・オーバルスプリントのキョウエイアシュラ(56.5kg)、名古屋・かきつばた記念のタガノジンガロ(56Kg)2頭しかいないというメンバーゆえ仕方ないが、何が何でもという逃げ馬に大外12番枠。しかも当日発表された馬体重はマイナス12kgの500kg。芝からダートへと転向した前走までの4戦3勝2着1回という好調時はすべて510kg台での出走だったゆえ、やはり減りすぎていたのだろう。大外枠でも最初のコーナーまではある程度距離があるので、ほかに行く馬がいなければすんなりとハナをとれただろうが、そうはならなかった。地元佐賀のエスワンプリンスは、昨年のJBCスプリント(盛岡)でもスタート後は先頭に立っていたほどダッシュ力のある馬。今回もスタートダッシュは抜群。二の脚ではシゲルカガのほうがまさっていたため、1周目のゴール板あたりで先頭を譲る形になったが、そこまでに脚を使わされたシゲルカガは勢いがついてしまい、向正面まで行きたがっている様子だった。加えて、ダート転向後の前走までが1200mだったのに対し、今回は200m長い1400m。最初の3F通過36秒1は、やや速いとはいえオーバーペースというほどではなかったものの、結果、それらさまざまなマイナス要因が重なって、3コーナーで失速(7着)となった。

 向正面半ばでまず仕掛けたのは、5番手を追走していたタガノジンガロ。主戦の木村健騎手は持病の腰痛が悪化し、出馬投票前、地元佐賀では不動のリーディング、山口勲騎手に乗り替わることになった。ちなみにスタート後、シゲルカガに脚を使わせたエスワンプリンスの鞍上は鮫島克也騎手で、レースの流れでカギを握ったのは、地元のベテラン名手2人だったといってもいいかもしれない。

 がらりと形勢が変わる3コーナーのあたりで映像は中団あたりを映していたので、カメラが先頭に切り替わった4コーナー手前では、いつの間にかという感じで、内ではタガノトネール、外ではタガノジンガロが先頭に抜け出していた。2頭の勝負になるかに思われたが、直線を向いてタガノトネールが突き放しての勝利となった。

 それにしてもタガノトネールの川田将雅騎手のコース取りは絶妙だった。スタート後にハナを争った3頭を前に見ての4番手を追走。3コーナー過ぎでは逃げていたシゲルカガの内を突いて先頭に立っている。そして直線では少し外に持ち出し、タガノジンガロ、さらに4コーナーで最内を突いて伸びてきたレーザーバレットを振り切っている。

 知られているように佐賀コースは内の砂が重く、普段はラチ沿い2〜3頭分を空けてのレースとなる。ただそれも雨が降って湿った馬場になると微妙に変化することがある。佐賀競馬場は前日に雨が降ったようで、この日は不良馬場でスタート、3レースからは重になり、サマーチャンピオンも重で行われたが、見た目にはだいぶ乾いてきているようだった。川田騎手は、そのあたりの砂が重くないギリギリのところを通ってきて、直線では確実に伸びるところに持ち出したのだろう。思えば2012年2月の佐賀記念をピイラニハイウェイで勝った時も、不良馬場で4コーナー最内を突き、普段なら重くて伸びないと思われるところを通って抜け出したということがあった。川田騎手は、2011年スーニ、2013年エーシンウェズンに続いて、このレース3勝目。佐賀記念でも前出2012年の勝利があり、故郷の佐賀競馬場でダートグレード4勝目となった。

 2馬身半差をつけられたとはいえ、タガノジンガロの2着は見事だった。8歳で、しかもタガノトネールと同じハンデ56kgを背負ってということを考えればなおさらだ。5月の兵庫大賞典(1870m)を勝ったときには、中央時代にも4勝を挙げている中距離に路線変更ということが伝えられたが、結局は1400m路線に戻ってきた。このあと、地方での1400mのダートグレードというと、9月23日の浦和・オーバルスプリントのあとは、しばらくあいて年末の地元園田での兵庫ゴールドトロフィーになるが、もうひと花咲かせてほしいところ。

 レーザーバレットは、前3頭が競り合ってやや速いペースとなったためにタガノジンガロのうしろ6番手からの追走となった。3〜4コーナーでは、バテて下がってきたケージーヨシツネの内を突いて位置取りを上げ、直線でも最内。タガノトネールの外に持ち出すわけにもいかず、結果的に砂の重い部分をかなりの距離走らされることになったのではないだろうか。美浦から一旦小倉に入って最終調整が行われ、前走からプラス12kgは、過去最高馬体重(2走前の京葉S・1着)よりも7kg重い489kgということもあったかもしれない。

 馬券的なことでは、中央4頭が単勝オッズひと桁台と人気が集中し、ダートグレード好走歴があるタガノジンガロが15.6倍、ピッチシフターが58.5倍、それ以外は100倍以上と、近年のダートグレードではありがちな数字を示していたが、結果、地方馬ではタガノジンガロが2着に食い込んだ。

 今回はハンデ戦でもあり、中央勢がJpnIIIかオープン勝ちまでというメンバーゆえ、それほど極端なオッズにはならないのではないかと想像していたが、人気はやはり中央馬に集中した。以前にも書いたが、JRA-IPATで地方競馬の馬券が発売されるようになってから、実力差以上に中央馬に人気が集中しすぎる印象を受ける。もちろんダートグレード全体では、馬券圏内を中央馬が独占ということが多いのだが、馬券圏内に入る可能性のある地方馬を見極められるかどうかに、馬券の狙いの妙味がある。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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