(撮影:高橋正和)
本来なら息が入る中間の4F目でもっとも速いラップ
予想で「中央馬はJpnIII勝ち馬が2頭だけ、地方馬にもチャンスあり」というようなことを書いたものの、残念ながら中央4頭が上位独占という結果になった。
その要因のひとつが、別定重賞。今回のオーバルスプリントの別定重量は以下のとおり(以下、グレード表記のGにはJpnも含むものとする)。
・基礎重量:3歳馬52kg、4歳以上54kg、牝馬2kg減
・平成27年9月18日までGI・1着馬5kg増、GII・1着馬3kg増、GIII・1kg増(2歳時の成績を除く)
※ほかにG勝利数による加増があるが、今回は対象馬がいないので省略
地方で行われるJpnIIIのグレード別定では、同じような別定重量戦が珍しくなく、GI勝ち馬が出てくると59〜60kgを背負うことになる。ダート短距離路線で言えば、JpnIのJBCスプリントを勝ってしまうと、その後地方のJpnIIIでは斤量を背負わされることになり、かなり苦戦が目立つ。昨年のJBCスプリントを勝ったドリームバレンチノは、その後のGIIIでは58〜59kgを背負って勝ち星がない。それ以前の、タイセイレジェンド、スーニ、サマーウインドなどもJBCスプリントを勝って以降は斤量に苦しめられた。
一方で、今回のようにGI・GII勝ち馬がいないメンバーになると、中央馬には俄然お得感が増すことになる。今回はJpnIIIで1勝のタガノトネールとサウンドガガが別定1kg増、重賞勝ちのないレーザーバレット、ルベーゼドランジェは加増なし、というもの。これによって、勝ったレーザーバレットがハンデ戦だった前走サマーチャンピオンより2.5kgも軽い54kgだったのをはじめ、中央のほか3頭も近走と較べて楽な斤量だった。
こうしたJpnIII競走における極端な別定重量は、地方馬にもチャンスをということで設定されているものだろう。中央からGI・GII勝ち馬ばかりが出走してくれば、たしかに地方馬には有利になるが、そうでないと地方馬には逆に苦しいものとなってしまうことがある、というのが今回の例。
さてレースだが、有力馬の中に逃げ・先行の馬が何頭かいたため先行争いが激しくなるかと思ったが、意外にも最初の3Fは36秒5。浦和1400mのダートグレードとしてはゆったりとしたものだった。内枠のルベーゼドランジェがダッシュよく飛び出し、やや外目のサウンドガガも二の脚が速く、その間にいた浦和のリアライズリンクスが競り合うことなく3番手に控え、隊列がすぐに決まったためだろう。レースのラップは次のとおり。
12.1-11.9-12.5-11.8-11.9-12.5-13.6
しかし道中、本来なら息が入る中間の4F目で11秒8というもっとも速いラップを刻んでいる。逃げていたルベーゼドランジェがペースを上げて、後続を離しにかかったためだ。そこから一転、前は厳しい流れになった。地方勢でもっとも人気を集めた(全体では4番人気)リアライズリンクスが向正面中間から徐々に後退。一方、勝ったレーザーバレットは、スタートで出遅れというほどではなかったものの、躓くような格好で中団からの追走。レース中盤からの先行勢のペースアップは、図らずも後手を踏んだレーザーバレットには向いた流れとなった。
一般的に末脚勝負の馬に、直線の短い地方の小回りコースは不利に思われがちだが、必ずしもそうではない。たとえば地方競馬の中でもゴールまでの直線がもっとも短い部類に入る名古屋コースなどでもそうだが、末脚勝負の馬が3コーナーあたりから仕掛けて行って、そのまま直線突き抜けるというシーンはしばしばある。
特に今回、レーザーバレットの鞍上は、乗替り初騎乗ではあるものの、南関東のコースは熟知している戸崎圭太騎手。3コーナーあたりから勢いをつけていって、直線中間から並ぶ間もなく前を交わし去るという騎乗は見事だった。レースの上り38秒0に対して、道中脚を溜めたレーザーバレットは37秒0。ルベーゼドランジェも実績のない1400mで、早めにペースを上げてよく粘ったものと思う。
それにしても今年もあと3カ月ほどを残し、ここまで地方馬がダートグレードを勝ったのは、マーキュリーCでのユーロビート(大井)のみ。ガンバレ、地方馬!