歴戦の古馬の場合、推測するときに役に立つこともある「12秒5」の法則
6月の「エプソムC」を勝ったときにも触れたが、
エイシンヒカリ(父ディープインパクト)がまたまた不思議な記録をつづけ、【8-0-0-1】となった。
ここまで1800mを速い時計で5勝しているが、自身の中身は、
▽未勝利戦……1分45秒7
「59秒3」-「上がり46秒4-34秒3」
▽500万……1分45秒5
「59秒2」-「上がり46秒3-34秒5」
▽都大路S……1分45秒7
「58秒8」-「上がり46秒9-35秒0」
▽エプソムC……1分45秒4
「59秒2」-「上がり46秒2-34秒6」
▽毎日王冠……1分45秒6
「59秒9」-「上がり45秒7-34秒0」
1800mを速い時計で乗り切った「5勝」は、京都コースと、東京コースに限定されることもあるが、恐ろしいまでに「1分45秒4-45秒7」に集中している。前半1000m通過の自身のペースは必ずしも同様ではなく「58秒8-59秒9」に分かれているから、上がり3ハロンの時計も「34秒0-35秒0」に分かれる。
ただし、最終的な1800mの時計は、ほとんど「同一」である。2000mは1回だけ、東京2000mのアイルランドTを昨年の10月に「1分58秒3」で逃げ切り勝ちしている好タイムがあるが、驚くなかれ、1800m通過は「1分45秒5」である。
春のエプソムC終了時に、安定した素晴らしいスピード能力は特殊に映るほどすごいが、デビュー戦の「1分45秒7」とまったく同一にも近い内容が続きすぎて、あまり強くなっていないのではないか。そういう物足りなさがあるとした。
そのときもエイシンヒカリのデキの良さ、しなやかな身体の使い方や動きを誉めたが、今回の毎日王冠では、また一段としなやかで、柔軟なフットワークになったように思えた。陣営の自信のコメントもそういうトーンだった。当然、充実の4歳秋。エイシンヒカリの1800mの記録は変化すると思えたが、マシーンのようなこの馬、絵に描いたように、いつもと同じ「1分45秒6」だったのである。
今回はスローだった。もう少しピッチを上げた先行策なら、タイムは短縮できたのだろうか。「イエス」ともいえるが、「否」の危険を否定できない。
歴戦の古馬の場合、ある距離の最高タイムに「12秒5前後」を足すと1ハロン長い距離の最高タイム(限界)になることが多い。かなり乱暴だが、推測するときに役に立つこともある「12秒5」の法則である。
たとえば、今回の毎日王冠だと、ディサイファの1800mの最高時計は「1分44秒8」である。同馬の2000mの最高は「1分57秒4」。差は【12秒6】である。
快速
グランデッツァの1600mは「1分31秒7」。1800mは「1分43秒9」。その差は【12秒2】である。これは、限界能力の目安を推し量るときにだけ通用する数字であり、キャリアのあるトップクラス古馬の最高時計の場合にのみ意味を持つ。
エイシンヒカリの1800mの最高時計は「1分45秒4」にとどまる。2000mの最高タイムは、「1分58秒2」である。したがって、その差は【12秒8】。エイシンヒカリは、1分57秒5前後が一般的な秋の天皇賞で大丈夫なのだろうか。
武豊騎手はペース判断に長けているから、妙なペースや、G1を変なスローに落とすことはない。エイシンヒカリは、どうやって1分57秒5前後で乗り切るのだろうか。
2着
ディサイファは、エイシンヒカリに完敗だったが、陣営は「昨年よりずっと内容は良かった」と、強気である。だいたい強気で前向きな陣営だが、時計の裏付けがあるのはたしかである。
イスラボニータは、2着は完全に確保したと見えたが、あそこからの伸びを欠くのが、一旦は勝ったかと思えたのに3着にとどまった昨年の天皇賞・秋を連想させてしまった。あそこから3着止まりは、ディサイファの伸びが良かったのか、イスラボニータの脚が鈍ったのか。後者だと苦しい。
人気で6着にとどまった
アンビシャスは、上がり33秒0。今週11、12日のM.デムーロ騎手は【2-2-1-11】。数字にするとわからないが、再三再四の出遅れなど非常にリズムが悪かった。マイルチャンピオンシップの可能性が高いだろう。
スピルバーグは、追い込み一手。レース上がり34秒0では、58キロの今年は苦しかった。仕上がり状態からも使って本番勝負だろう。