◆昨春クラシック前に遺伝子検査を受けたことが話題になったイスラボニータ
昨年1月、西園厩舎の未勝利馬エイシンソルティーの出走レースが大きな話題を集めた。一介の未勝利馬になぜ注目が集まったかというと、当時、距離適性に関する遺伝子検査で「長距離向き」との判定が出たため、それまでの短距離戦から一気に1000メートル距離を延ばし、2200メートル戦への出走を決断。遺伝子検査の有効性が、これ以上ない形で検証されることになったからだ。
結果は9着敗戦。その後、短距離戦に戻して未勝利→500万下を連勝した結果も踏まえると、エイシンソルティーという“検体”に関しては、遺伝子検査のジャッジは正しくなかったことになる。
「結局、検査もひとつの目安でしかないということなんだろうね。距離適性は馬の気性で変わってしまう。仮に本質的なところで長距離適性があっても、前向き過ぎる気性でかかってしまったら、距離は持たないわけだから。今では遺伝子検査自体、受けている馬がほとんどいないと聞いているよ」(西園調教師)
遺伝子レベルでも“正解”は出ないのだから、競馬予想の根幹を担う血統にしてもまた同様だ。
「今年の菊花賞で母父にサクラバクシンオーが入っていたキタサンブラックが勝ったでしょ。昔、ウチの厩舎(二分厩舎=騎手時代に所属)にマチカネフクキタルという馬がいて、(97年の)菊花賞を勝ったんだけど、あれも父がクリスタルグリッターズで血統はどう見ても短距離だった。血統、遺伝子…ひとつのことで全てが決まるわけじゃないから競馬は難しくて、面白いんじゃないかな」(同)
マイルCSに出走してくるイスラボニータも、昨春のクラシック前に遺伝子検査を受けたことが話題になった。「中長距離タイプ」との判定だったため、ダービーも距離的には問題ないと判断されたとか。
確かにダービーに関して言えば、0秒1差2着に好走したのだから距離は持ったと言えるかもしれない。だが、昨秋からの古馬王道路線では、直線で追い出しを我慢する余裕を見せながら、追ってから手応えほど伸び切れずといったシーンが多く、坂路野郎の判定は「イスラボニータは距離に限界あり」。
マイル戦への出走は新潟2歳S(2着)以来となるが、今回こそがむしろ適条件。追い切り前の段階ですでに◎が決まりかけている坂路野郎である。
(栗東の坂路野郎・高岡功)