▲「シルバーステートの可能性は?」ユーザーからの質問にお答えします
Q.私はシルバーステートに出資しております。紫菊賞の勝利ありがとうございました。この馬の可能性について、福永騎手はどう感じているか、距離の適性、今後の課題など、率直なご意見をお聞きしたいです。
A.可能性でいえば、世界で通用するポテンシャルを持った馬だと思う。馬を手放しで褒めることはあまりないが、現時点での手応えは、これまで乗った馬のなかで一番といえるレベルだ。とにかくエンジンの性能が規格外で、だからこそ、そのエンジンに対して体がついてこれないのでは…という危惧がデビュー前からあった。
案の定、前走後に両前脚の球節に腫れが見られ、大事を取って休養しているが、今は治療を施しながら、あの排気量に耐えうる体ができるのを待っている段階とのこと。成長の過程として、あの馬にとっては必要な時間であり、ここで無理をさせなかったことが、のちのち吉と出る可能性は大きい。
距離適性については、今のところガーッと掛かっていくようなタイプではないので、2400mも何ら問題ない。前走の紫菊賞は、いくら時計が出る馬場だったとはいえ、最後はほとんど追うことなく上がり32秒7。結果的に、馬の脚に負担が掛かってしまったわけだが、エンジンの性能の違いから、どうしても身体の完成度を超えた動きが出てしまうのだ。だから、少なくとも自分が乗ったなかでは、調教でも競馬でも目一杯走らせることはしなかった。いや、できなかった。このあたり、走る馬ならではの悩みだが、逆に言えば、これで体が伴ってきたら…。一体どれほどの走りを見せてくれるのか、想像するだけでワクワクする。
▲紫菊賞で2連勝を決めたシルバーステート、走る馬ならではの悩みと大きな可能性を感じたという
それにしても、今年の2歳の男馬はレベルが高そうだ。ロードクエスト(新潟2歳S)やスマートオーディン(東スポ杯2歳S)、エアスピネル(デイリー杯2歳S)といった重賞勝ち馬はもちろん、サトノダイヤモンド、リオンディーズ(原稿作成後に朝日杯FSを勝利!)など、1戦1勝馬のなかにも大物感を感じさせる馬がちらほら。サウジアラビアRC3着のアストラエンブレムあたりも、今後さらに走ってくるのではないかと思う。
netkeibaの編集部宛に届いたたくさんの応援メッセージ、リハビリの合間にありがたく読ませてもらっている。本当にありがとう。「シルバーステートでぜひダービーを」というメッセージがたくさんきていたが、誰よりもそう願っているのは、ほかならぬ自分であり、シルバーステートという馬は、ダービーはもちろん、その先までイメージが膨らむ馬。ずっと乗っていたいと素直に思う。そのためには、シルバーステートに限らず、まずは自分が依頼をもらえるジョッキーであることが大前提。今、不思議なほどに焦りがないのは、自分が戻るべき場所、戻りたい場所が、明確に見えているからかもしれない。
Q.今回の休養で乗り替わりを余儀なくされると思いますが、鞍上を譲るのが残念と感じる馬はいますか?
A.残念な思いはどの馬にもあるけど、それはある意味、ケガをしてしまった以上仕方がないこと。今、大事なことは、復帰後にまた、“福永祐一を乗せよう”と思ってもらえるかどうかだと思う。そもそも自分には、“乗り馬を取られる”という概念も、“人の馬を取る”という概念もない。なぜなら、競走馬はジョッキーのものではないから。
もちろん、リアルスティールもシルバーステートもずっと乗っていたいと思う。エピファネイアだって、そう思った。ただ、依頼がなければ成り立たない仕事である以上、個人的な悔しさは置いといて、依頼がなければそれまで。ジョッキーとは、そういう立場の仕事であり、自分にとって走る馬の依頼をもらえることが何よりのモチベーション。だからこそ、自分は頑張れるんだと思う。
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