社台スタリオンの展示会風景
今年はかなり多くのファンがビッグレッドファームに集まりそうな気配がある
年明けとともに、早くも大手牧場ではどんどん新しい当歳馬が誕生している。それと同時に、生産地では、月が変わり来月になれば、今年度の配合種牡馬を選定する際の恒例行事である種牡馬展示会が各地で開催される予定だ。
昨年末で日高スタリオンステーション(浦河町)が閉鎖されたため、個人レベルの小規模な種馬場を除くと、胆振日高管内で現在稼働しているのは概ね次の9か所に集約される。
イーストスタッド(浦河町)、アロースタッド(新ひだか町静内)、レックススタッド(新ひだか町静内)、JBBA静内種馬場(新ひだか町静内)、ビッグレッドファーム(新冠町)、優駿スタリオン(新冠町)、ブリーダーズスタリオン(日高町)、ダーレースタッド(日高町)、社台スタリオン(安平町)である。
今年の種牡馬展示会は2月9日の社台スタリオンを皮切りに、一部は時間差で調整されており、12日イーストスタッド、15日JBBA静内種馬場、アロースタッド、レックススタッドの3か所合同、16日ビッグレッドファーム、17日ブリーダーズスタリオン、22日優駿スタリオンで幕を閉じる。また15日〜17日の3日間は、ダーレースタリオンが、個別に来場者を受け入れる「見学期間」として設定されており、改めて展示会は開催しないことになっている。
したがって13日間(9日〜22日)で8か所の日程になるわけだが、このうち社台スタリオンは「招待制」になっている。同スタリオンには今年は新たに5頭が種牡馬入りし、お披露目される予定で、エピファネイア、キズナ、スピルバーグ、フェノーメノ、リアルインパクトというラインナップは、競馬ファンにとってもなじみのある名前ばかりだ。もちろんディープインパクト、キングカメハメハを筆頭にここにはリーディングサイアーランキング上位馬が集中しており、ダントツの影響力を誇示している。
毎年、ここではかなり多くの競馬ファンと思しき人々が集まってくる。とりわけ名前の通った有名馬が晴れて種牡馬入りする年などはその傾向が強い。カメラ装備率も高いし、報道関係者もまた多い。問題は天候で、晴れて穏やかならば良いが、雪交じりだったり、強風が吹き荒れていたりすると、地吹雪が発生する季節でもある。
もちろん、これは社台スタリオンに限ったことではなく、2月の北海道はまだまだ真冬の季節。もし車で現地入りする予定のある方は、くれぐれもご注意頂きたい。
社台スタリオンと同様に、今年見学者の増えそうなのが、ビッグレッドファームである。拙稿でも以前触れたように、ファンの多かったゴールドシップがここで種牡馬入りしたからだ。オグリキャップ時代ほどの盛り上がりは無理としても、今年はかなり多くのファンがビッグレッドファームに集まりそうな気配がある。
一方、社台スタリオンから、シンボリクリスエスとゼンノロブロイがブリーダーズスタリオンに、またキャプテントゥーレ、ダノンシャンティ、ネオユニヴァースの3頭がレックススタッドに、それぞれ移動した。さらには閉場となった日高スタリオンからも、トビーズコーナーとプリサイスエンドが優駿スタリオンへ移った。
ところで、昨年最もブレイクし評価が急上昇したのは、言うまでもなくスクリーンヒーロー(レックススタッド繋養)だ。社台スタリオン繋養種牡馬の全盛時代にあって、モーリスとゴールドアクターを輩出したのは快挙と表現する他ない。
昨年最もブレイクし評価が急上昇したスクリーンヒーロー
一昨年が50万円、昨年でも100万円の種付け料であり、日高にいる種牡馬の中でも、決して高い部類ではなく、いわばどの生産者にも手の届く種牡馬であった。それが昨年の産駒の大活躍により、中央競馬リーディングサイアーランキングでは堂々の16位にまで上った。54頭が226回出走し、うち14頭が25勝を挙げたが、注目すべきは出走馬1頭当たりの収得賞金額を示すアーニングインデックスで、2.89は、平均値の3倍近い数字である。
もちろんリーディングサイアーランキング上位50傑の中では抜けており、かのディープインパクトの2.55さえも凌ぐ驚異的な数字だ。
日高で繋養されている種牡馬の中からも、稀にこういうシンデレラホースが出現する。評価が頂点まで高まったことにより、今年スクリーンヒーロー産駒を抱えている生産者にとっては、願ってもない“追い風”が吹きそうだ。市場での注目度もかなり高いものになるだろう。こんな種牡馬が出てくるのもまた、競馬のひとつの面白さと言えそうだ。