狙ったレースは逃さない“スナイパー”村山師の勝負魂/トレセン発秘話
◆松田国調教師は村山調教師について「ここと狙ったレースにはしっかり仕上げてくる」
「競馬界七不思議」の一つと言っていいのかもしれない。今年で33回を数えるフェブラリーSで連覇を達成したのは、実は昨年のコパノリッキーが初めてだった。ダート戦線は芝の各路線より賞金を蓄えた年長馬が息長く活躍するイメージ。むしろ連覇しやすい環境にあるはずなのだが…。
「東京のダート1600メートルはスタートが芝なのもあって、前半からそれなりのラップで流れる。パワーだけじゃなく、スピードも要求されるんだよね。それだけ若い馬が台頭しやすい舞台ということなのかもしれない」とはフェブラリーSを回避し、ドバイWCに直行するホッコータルマエを管理する西浦調教師だ。
一方、かつてクロフネ、ベルシャザールなどのダートの超一流馬を育て上げた松田国調教師は違う観点からこんな仮説を唱える。
「年末から年明けにかけて、ダートの大きいレースは地方交流でも施行されていますからね。暮れは東京大賞典、年明けは川崎記念…賞金もそれなりに高いし、これらのレースの方がメンバー的にも戦いやすい。そういう意味でフェブラリーSを一番の目標にする馬というのがそこまでいないんじゃないですか。本当に強い馬はドバイを目指してしまうわけですし」
結局は“諸説あり”にしかならないのかもしれないが、とにかくコパノリッキーは難しい連覇を昨年達成し、今年はさらに難易度が跳ね上がるJRA平地GI史上初の3連覇に挑むことになる。
ノンコノユメを筆頭とした「新興勢力優勢」の声が大きくなっていることに対して「チャンピオンズCにしても勝ったのはサンビスタ(当時6歳)だったわけですし、まだ世代交代はないと思います」とベテランの意地を見せるつもりの村山調教師。ジョッキー時代の所属キュウ舎だったこともある松田国調教師はこんなことを言っていた。
「明(村山調教師)は抜け目がないですからね。ここと狙ったレースにはしっかり仕上げてくる。今年のフェブラリーSもおそらくそうでしょう」
常々「レースをしやすいのは1800メートルより1600メートル」と話している村山調教師だけに、松田国調教師の弁通り、ここ目標に目一杯仕上げてくるのは間違いあるまい。
天皇賞・春のメジロマックイーンに始まり、最近ではジェンティルドンナ(ジャパンC)、ゴールドシップ(宝塚記念)と連覇はできても、3連覇には至らなかった。
果たしてコパノリッキーが史上初の3連覇をやってのけるか!? 新興勢力が台頭してこようとも、これこそが今年のフェブラリーSの最大の焦点なのは確かだろう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)