
「落馬事故」についてジョッキーとしての葛藤をストレートに明かしてくれました
今回のテーマは「落馬事故」からスタート。「落馬事故を減らすには?」「浜中騎手の落馬はどう思う?」といったユーザーからの質問に対し、ジョッキーとしての葛藤をストレートに明かしてくれました。また、最近薬物の抜き打ち検査を受けたという小牧騎手。はたしてその内容とは!?
(取材・文/不破由妃子)
閉まるかもしれないと思いながら入ることはない
──今回は「落馬」と「薬物問題」についての質問を取り上げたいと思います。まずは、「落馬事故を減らすには、競馬場の改修や枠順なども踏まえ、どうするべきだと思いますか? たとえば、競馬場を改修する際、騎手側から要望や意見を提出したりはできないのですか?」というものです。
小牧 それはもちろんできるし、実際にやってるよ。それ以前に、落馬のきっかけになるのは馬の故障も多いんでね。そればっかりは予測できないからどうしようもない。
──昔はスタートして最初のコーナーまでが短いコース形態も多かったですが、今はだいぶ減りましたよね。
小牧 そうそう、そのあたりもだいぶ改善された。気を付けて車を運転していても、事故に遭ってしまうことがあるでしょう。競馬もそれと一緒やからね。いくら自分が気を付けていてもなんせ相手があることやし、ましてや競馬は生き物に乗っているわけやから。気を付けるのは当然として、どんなに対策を施したところで逃げられへんシーンもある。
──東京新聞杯での浜中騎手の落馬についても、小牧さんの見解を聞かせてくださいというリクエストがたくさん届いています。
小牧 あれはしょうがなかったんやろうね。きっと4コーナーを回ったときには開いてたんでしょう。でも、馬がラチと接触してバランスを崩してしまった。ベテランになってくるとね、ああいうことが起こるから、狭いところに入られへんかったりする。だんだん怖くなってくるねん。とはいえ、同じシーンで自分がどうしたかはわからん。手応えがあれば入るやろうし。
──それこそ、経験に基づいた無意識の選択なのでしょうね。
小牧 そうかもしれんね。ただ、閉まるかもしれないと思いながら、入ることはないよ。そんな覚悟をするくらいなら、絶対に入られへん。ああいうときって、一瞬でも躊躇したらダメ。絶対に閉まる。ハピネスダンサーの愛知杯も、全然追うところがなかってんけど、一カ所だけ、ほんの一瞬パッと開いたところがあってね。でも、ほんの一瞬、考えてしまったらもうダメやもんね。
──でも、そこで入っていったら、もしかしたら事故が起きていたかもしれない。まぁ、それは誰にもわからないことですけど。
小牧 うん。若いときだったら入っていたかもしれんけど、何度も落ちたりしているとね、やっぱり勘が働くんですわ。狭いところに入るということは、どんな場面でも危険を伴うからね。
──考える間もなく、無意識に体が動くこともありますよね?
小牧 そうそう。若いころはそうだった。今はどうしても予測してしまうんやね。予測したらアカンと思ったりもするけど、予測するからこそ事故を防げることもある。まぁ、今でも(狭いところに)行くときは行ってるし、考える前に動いていることはあるけどね。その時々でホンマにいろいろですわ。そういえば、僕も中京で浜中のようにラチを飛び越えてしまったことがあったなぁ。それでも今のラチは柔らかいからまだいいけど、地方時代のラチはガードレールと同じ素材やったからシャレにならんかった。

狭いところに入るということは、どんな場面でも危険を伴うからね
──そうなんですか!?
小牧 接触して指がちぎれてしまったジョッキーもおったらしいよ。今はもう、中央も地方も一緒で、中が空洞になってるプラスチックやけどね。
──続いては、コントレラス騎手の薬物問題に絡んで、「抜き打ちで薬物検査をしていることを知りませんでした。それはいつどんなときに、どういう方法でやるのですか?」という質問です。
小牧 僕もこの前やったばかりだけど、尿検査や。きちんと係員に見張られた状態で採尿する。朝だったり最終レースのあとだったりいろいろやけど、僕らは減量をしているから、なかなかオシッコが出なくてね(苦笑)。そういえば、アルコールの検査もあるんやで。これも朝、抜き打ちで、フーッと息を吐くやつ。お酒が残っていたら、乗られへんらしいよ。
──そうなんですね。でも、誰かが引っ掛かったという話は聞いたことがありませんね。
小牧 そりゃあ、開催中にそこまで飲む人はおらんわ(笑)。そもそも最近の子は酒を飲まんし、この僕ですら、開催中はまったく飲んでないからね。