今回はクラシック戦線や若駒の教育についての“太論”
先週は土日で3勝! その前には勝てない週が続きましたが、ここにきて確実に流れが変わってきました。レース回顧はまたじっくりとお届けするとして、今回のテーマは、「今年のクラシック戦線」についてと「小牧流、若駒の教育の仕方と癖馬の慣らし方」について。ユーザーからの質問に答えるかたちで、小牧騎手の見解と経験を語ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)
馬の癖といっても、なかには人間側が付けた癖も
──「桜花賞、皐月賞が終わりました。本来なら小牧騎手に騎乗していてほしいところですが、小牧さんは今年のクラシック戦線をどう見てらっしゃいますか?」という質問です。
小牧 有力馬のほとんどが、外国人ジョッキー2人でここまできた印象やね。桜花賞では、ダントツ人気のルメール(メジャーエンブレム4着)が負けてしまったけど、あれは競馬のアヤやね。速いからあの位置になったんやろうし、最終的に後ろの馬がきたように、ペース的には合ってたからね。結果、出るところがなくなってしまっただけで、そればかりは競馬だから仕方がない。皐月賞は、意外なところから勝ち馬が現れたねぇ。それにしても強かった。あの馬は強いね。
──結果的に、3強ではなかったという。
小牧 あの3頭で決まりかと思ってたけどね。そういえば、また邪魔されてたねぇ。久々にGIレースでの降着を見たわ。馬を寄せていった結果なんやろうけど、ミルコはほんまにもったいない。今年は3歳馬に乗り馬がおらんからねぇ。まだわからんけど、ダービーには今年も乗りたいなぁ。
──吉報をお待ちしています! 続いては、「小牧流若駒の教育の仕方、癖馬の慣らし方など、企業秘密に抵触しない範囲で教えてください」というリクエストです。早くも6月には新馬戦が始まりますし、なにしろ小牧さんは新馬戦に強いですからね。
小牧 人から言われて気づいたけど、どうやらそうらしいね(笑)。ただ、僕ならではの教育の仕方なんてないけどねぇ。たとえあったとしても、言葉で説明するのは難しいわ。
──中央では2歳馬を一から教育することはなかなかないでしょうが、園田ではずっとやってこられたんですよね。
小牧 そうやね。ハミ受けから始まり、まっすぐに走ることを教えたり。結局、何度も繰り返すなかで馬も覚えていくわけで、根気のいる作業を積み重ねていくのが教育といえば教育やね。ひとつ思うのは、ハミ受けの癖は人間側の影響が大きいんじゃないかということ。右手の握力が強い人が教えたら、自然と右の口が硬くなったりとか。もともと馬は何も着けていないわけで、人間にとって口がハンドルだということもわからないからね。
──初めてハミを着けたときから言うことを聞くものですか?
小牧 ある程度はね。なぜなら痛いから。人間だって、口の端をグイグイやられたら痛いでしょう。馬も痛いはずやねん。だから言うことを聞く。口が利かなくなる馬は、引っ張ることを繰り返すなかで鈍くなってくるんやろうね。引っ張り癖が付いているような馬はずーっと噛んでるわけやから。自分がやってきたことを振り返ってみても、よくも悪くも人間側の影響が大きいと思うよ。だから、馬の癖といっても、なかには人間が付けた癖もあるっていうことやね。
馬の癖といっても、なかには人間が付けた癖もあるっていうことやね
──2歳馬はとくに、そういった癖が付かないように左右均等の力で乗るということが大事なんですね。
小牧 そう、すごく大事。とくにデビュー前の調教は本当に大事やで。
──もうひとつの質問、「癖馬の慣らし方」についてはいかがですか? ハミ受け以外にも、競走馬にはいろいろな癖があると思いますが。
小牧 ゲートであったり、右にモタれる、左にモタれるなどいろいろあるけど、それはもう、その癖が出ないように扶助するしかないよね。競走馬は1頭1頭違うから、一言に癖といっても、ありとあらゆる種類があるからね。中央の馬のほうがパワーがあるぶん、癖を直すのも大変やね。気性の激しい馬も多いし。まぁ園田にもいたけどね、コーナーなのに真っ直ぐしか走れん馬とか(笑)。
──曲がれないわけですね。
小牧 そう。今でも覚えているけど、仕方がないからそのまま真っ直ぐ持っていった結果、騎乗停止になったわ。あとは、隣の馬に噛み付きにいく馬とか、ゲートを出たところでロデオをする馬とか(笑)。そういう馬は、簡単には治らんよ。癖というより、パニックになってるわけやから。人間側も必死やで。