ホッカイドウ3冠第一弾の北斗盃を制したスティールキング
照明設備が変わったことで明らかに昨年よりは明るくなっており、撮影がしやすい
去る4月20日(水)、門別競馬場にて今年度の道営ホッカイドウ競馬が開幕した。昨年11月中旬から今年3月末までの工期で、新たに内回りコースに照明設備が新設され(4基)、さらに41基ある外周の既存照明施設も全てLEDに変換されたことにより、ナイターレース時の輝度が増した。さっそく開幕日に現地で観戦してみたが、明らかに昨年よりは明るくなっており、撮影がしやすい。同じ感度と絞りで設定しても、昨年と比較すると、ほとんど倍くらいのシャッター速度を確保できる。見た目の印象もさることながら、実際に撮影してみると、その違いをいっそう体感できる。
明るくなったパドック
同様に、パドックも、レース後に馬が引き上げてくる検量室前の広場も、昨年よりもずいぶん明るくなった印象だ。新しいLED照明は、白色と黄色の二種類を組み合わせており、調整ができるとのことで、これから時々発生する「海霧(ガス)」により視界が悪くなった際に威力を発揮するという。門別競馬場は昨年までしばしばこの海霧に悩まされてきた。海霧が濃くなると、スタンドから向こう正面がまったく見えなくなるほどで、時にはやむなく開催中止に追い込まれる事態も招いていた。今年はそうしたアクシデントを回避できるかもしれない。
昨年よりもずいぶん明るくなった検量室前(写真はコスモバルク記念時の検量室前)
開幕日には、いきなり、3歳3冠路線の第1弾である「北斗盃」がメインレースで実施された。また、第5レースには、全国で最も早い2歳戦である「2016開幕記念JRA認定スーパーフレッシュチャレンジ競走」が行われた。
まず「スーパーフレッシュチャレンジ」の方は、8頭立てが2頭の出走取り消しにより、結果的に6頭立てとやや寂しいメンバーになってしまった。1着賞金は「スーパー」の名前がついているようにメインの「北斗盃」と同額の300万円である。
レースはエブリモーニング(牝、父サウスヴィグラス)が先行し、それをマークしながらタイセイプロスパー(牡、父プリサイスエンド)とバンドオンザラン(牡、父スズカコーズウェイ)が好位で続く展開だったが、直線に入ってエブリモーニングを捉えたタイセイプロスパー、バンドオンザランとの追い比べとなり、4分の3馬身差で1番人気のバンドオンザランが今年の2歳戦勝利馬第1号に輝いた。鞍上は阿部龍騎手。角川秀樹厩舎の所属で、馬主と生産者は(有)グランド牧場。
今年の2歳戦勝利馬第1号のバンドオンザラン
今年から初年度産駒がデビューする父スズカコーズウェイは、いきなり産駒が認定勝ちを収めたことになる。
開幕日のメイン「北斗盃」(内回り1600m)は、最終第10レースに行われた。中央競馬ならば「皐月賞」に相当する3冠路線の1冠目であり、せめてトライアルレースをひとつ挟んだ日程にできないものかという気もするが、近年はこの開幕日に合わせて実施されている。
今年は12頭が顔を揃え、昨年の開幕日のスーパーフレッシュチャレンジ競走にてデビューした(ハナ差2着)スティールキングが単勝1.6倍の断然人気に支持された。レースは先行するジャストフォファンを直線半ばでスティールキングが交わし、1馬身差で勝利を収めた。スティールキングは父シルバーチャーム、母グルカッシュ、母の父Machiavellianという血統の3歳牡馬。桑村真明騎手が騎乗。管理調教師は角川秀樹師。なお2着馬ジャストフォファンも角川師の管理馬で、同レースワンツーの完全勝利であった。馬主は菅野守雄氏。生産は登別市のユートピア牧場。スティールキングはこれで通算成績が9戦2勝2着4回となり、残りの「北海優駿」「王冠賞」に向け、3冠(過去に4頭いる)特別ボーナス2000万円への挑戦権を獲得した。2冠でも250万円で、これらは、2歳で門別デビューした後に半数以上が各地に転籍してしまい、3歳馬の層が薄くなっていた従来の馬の流れを何とか食い止めるべく新たに設立されたボーナス制度である。
北斗盃の口取り風景
ところで、ホッカイドウ競馬は、開幕週の20日と21日、翌週の27日と28日のそれぞれ水木で第1回開催4日間を終えたわけだが、初日が10レース、以後の3日間はいずれも9レース編成であり、出走頭数も、初日77頭、以後76頭、71頭、68頭と、かなり少ない状態が続いている。全国に先駆けて実施されている2歳認定レースでも出走取り消しが目につき、結果的に6頭立て、7頭立てというようなレースになっている。
昨年の開幕週とその翌週は3日間しか開催していなかったが、それでも計34レースを組み、319頭が出走していた。今年は4日間で37レース、292頭である。1レース平均で7.89頭となり、とりわけ前半の下級競走での少頭数が目につく。
馬券売り上げこそ、開幕2週目の27、28両日が昼間開催の浦和競馬と重なったことから、3億2773万円、2億5849万円と比較的健闘し、大井と重複した開幕週と比較すると大きく数字を伸ばした。しかし、肝心の出走頭数がこれでは何とも心もとない。
古馬の絶対数をいかに確保するか、が今後の大きな課題であろう。2歳はおそらく十分な頭数がすでに入厩していると思われるが、春のこの時期に臨戦態勢まで仕上げるのは並大抵ではなく、現に出走取り消しも少なくない。その分、3歳以上の古馬のレースを充実させなければならないが、シーズンオフに他場に遠征、転厩した馬たちを再び門別に呼び戻すには、それ相当の“餌”を用意しなければなるまい。具体的には賞金や出走手当の思い切った増額が最も効果を期待できるとはいえ、それには財源が要る。今の売り上げでどこまで古馬確保のために予算を割けるか、がポイントだ。