自分に合ったリズムで追走できるはず
人気を分ける西の
シンハライト、東の
チェッキーノともに、特に大きな死角を抱えるわけではない。東京2400mになるからといって評価は下がらないが、コースと距離が大きく変わってプラスが加わるはずの
デンコウアンジュに期待する。
2歳の10月に「アルテミスS」1600mで、当時すでに断然の評価を受け始めていたメジャーエンブレムを、大外から鮮やかに差し切っている。あの時点でメジャーエンブレムも自己最高の1600mを1分34秒1(上がり34秒2)だったから、失速したわけではない。デンコウアンジュは鋭い切れ味で一気に差したというより、速い脚が長続きした印象があった。中味は「60秒8-上がり33秒3」だった。
そのあと、「阪神JF→チューリップ賞→桜花賞」と1600m戦を3連敗しているが、阪神JFは先行したら末脚がなし崩し。チューリップ賞は出負けして追い込み、シンハライトと0秒3差の1分33秒1(時計が速すぎた)。桜花賞はインに詰まり、馬群をさばけずロスの多い競馬。チューリップ賞の中味は悪くないものの、アルテミスSこそ勝っていても、マイルの速い流れを追走は合わない印象が濃い。
ちょっと期待を裏切っている形の父メイショウサムソン(社台SS→イーストスタッド)は、4世代目の産駒デンコウアンジュが初めての重賞勝ち馬となったが、マイラー型を送る可能性は低いから、当たり前でもある。まして母の父になるマリエンバード(凱旋門賞馬。父カーリアン)は、スピード能力が足りず6年間だけで再輸出された、不成功種牡馬。完成度が高いわけでもなく、デンコウアンジュは2歳時のマイル戦で秘める能力の一端は見せたが、ここまであまり合わない条件のレースばかりに出走してきたと考えたい。
今度は、1戦1勝の東京コース。距離は一転、2400mに延長するから、自分に合ったリズムで追走できるはずである。折り合いの心配はない。アルテミスSと同じようなレースができて不思議ない。
デンコウアンジュの祖母の父は、なんともう「12頭」ものオークス勝ち馬の血統表に顔を出している天才種牡馬サンデーサイレンス。直仔の勝ち馬は3頭なのに、父方、母方を合わせた孫の世代が9頭もオークスを制しているのだから(目下8連勝中)、その影響(遺伝)力たるや信じられないところがある。デンコウアンジュは、血統表の3代前にサンデーサイレンスが顔を出すだけだが(ひ孫世代になる)、ほかの種牡馬ならともかく、サンデーサイレンスの血が入っているのは無形の強みだろう。
オークス向きの種牡馬というなら、1970年代に産駒が4連勝しているのはパーソロン。デンコウアンジュの3代母もまた無類のオークス血統パーソロン産駒であり、4代母の父ハードリドンもオークス勝ち馬リニアクインを送っている。古い牝系などといわれるが、デンコウアンジュの牝系はオークス血統の積み重ねだった。
追い込み競馬ではなくても、川田騎手はジェンティルドンナのイメージで乗ればいい。2強が大本線。伏兵には、同じメイショウサムソン産駒の
フロンテアクイーンを加えてみたい。