(撮影:高橋正和)
勝った馬が強かったというしかない
今年から中央枠が1頭増えて7頭。そのうち期待を集めた5頭が単勝で3.1倍〜6.6倍で拮抗した。6.6倍の5番人気はコパノリッキーだが、5倍台で推移していたものが、馬体重プラス15kgが発表されるとオッズが上りはじめ、最終的にはこの数字になった。過去最高が昨年の東海S(1着)時の538kgで、輸送があってそれより9kg重いわけだから人気を落としたのも当然だった。
それら有力馬には先行タイプと追い込みタイプがいて、どんな展開になるかによって予想の結論がガラリと変わるメンバーだが、果たして今回もスタート直後は他馬の出方をうかがう“お見合い”になった。なるほど先行タイプが揃ったといっても、何が何でもハナに行くという馬はいないだけにそうなったのだろう。
ホッコータルマエは相変わらずスタートがいい。ただそれでハナに行くわけでもなく、内から枠順どおりにアスカノロマン、コパノリッキー、ホッコータルマエ、クリソライトと4頭が雁行状態で先行。しかしすぐにペースが遅いと見て仕掛けて行ったのがクリソライト。昨年の帝王賞、JBCクラシックと、大井では逃げ馬を2番手からつつく役目だったが、今回はみずからペースをつくった。
クリソライトが先頭に立って一気にペースが上がった……ように見えた。しかしそれは1周目の残り200mの標識からゴール板まで。単独で先頭に立って1コーナーに入るとすぐにペースが落ち着いた。その2F目のラップこそ11秒2だったが、前半1000m通過は62秒2。水が浮くほどではない不良馬場ということでは、このメンバーにとってはスローな流れ。それゆえ、3番手のコパノリッキーは向正面で掛かっていたし、末脚勝負のサウンドトゥルー、ノンコノユメが、レース中盤で5番手ホッコータルマエの直後に迫っていったのもうなずける。
レース中盤は12秒台後半から13秒台という緩いペースで流れ、そして3コーナー過ぎで一気に仕掛けて先頭に立ったのがコパノリッキーだった。すかさずホッコータルマエが追いかけた。4コーナー手前では、抜け出して一瞬息を入れたコパノリッキーに対して、追い通しのホッコータルマエ。ここでこの2頭の勝負は決した。あとは末脚勝負の2頭が追い込んでくるのかどうか。
しかしコパノリッキーのレースぶりが圧巻だった。3コーナー過ぎで仕掛けたところからのラップが12秒2、11秒5、12秒4というもの。残り600mの地点で先頭に並びかけていたので、レースの上り3Fとコパノリッキーのそれとはイコールで、なんと36秒1。ペースが緩いと見てノンコノユメも3、4コーナー中間から追いかけてきたが、コパノリッキーにその上りの脚を使われたのでは、さすがに追いつけない。ノンコノユメの上り3Fは36秒5で、それでついた着差が3馬身半。3コーナー過ぎからの勢いで遅れをとったサウンドトゥルーはさらに5馬身離されての3着だった。
夏は弱い、大井の2000mはベストの舞台ではない、さらには馬体増と、不安になる材料がいくつもあったコパノリッキーだったが、それらをすべて払拭して余りある強い勝ち方だった。
2着のノンコノユメにしても、36秒5で上がってサウンドトゥルーに5馬身差をつけたのだから相当に強いレースをした。衝撃の追い込みを見せたジャパンダートダービーが、同じ不良馬場とはいえあのときは水が浮くほどだったから一概には比べられないとはいえ、当時の上りはそれでも37秒3。今回も相当な能力を発揮したノンコノユメにしてみれば、勝った馬が強かったというしかない。
サウンドトゥルーは、勝負どころで仕掛けていくときの勢いがノンコノユメとは違っていた。
昨年はドバイ帰りにもかかわらずこのレースを制していたホッコータルマエだが、今回は4着。さすがに7歳になっての上積みもないし、相当に調教で乗り込まれていたようだが、そもそも実戦を使われて調子を上げてくるタイプ。
人気を集めた1頭、アスカノロマンは6着。スタート後は先頭も、仕掛けていったクリソライトには抵抗せず、すぐに2番手。コパノリッキーが仕掛けてペースアップしたあたりから徐々に遅れ、先頭からは3秒2離されてのゴール。前走の平安Sが圧勝だったとはいえ、さすがに今回GI/JpnI馬が5頭というメンバー相手では厳しかった。経験が問われる大井の2000mが初めてということもあったかもしれない。とはいえ、スタート後にクリソライトが仕掛けていかず、この馬が先頭に立ったままさらに遅いペースになっていればもう少し善戦できたかもしれない。そういう意味では、コパノリッキー圧巻のレースは、8着に敗れたクリソライトが演出したとも言える。
かしわ記念後には、アメリカの前哨戦を使って、ブリーダーズCのクラシックかダートマイルと言われていたコパノリッキーだが、どうやら南部杯を使ってブリーダーズCを目指すことになるようだ。