(撮影:高橋正和)
緩むことがなかったペース
中央枠4頭のところアンズチャンが回避して3頭。これに地方勢ではグレード入着実績のあるブルーチッパーを加えた4頭の争いと見られ、実際にその4頭が上位を独占という結果。しかしその4着までの着差は、2馬身、6馬身、3馬身と大きな差がついた。
ブルーチッパーが逃げたのは予想通り。これをピタリと2番手で追走したのがホワイトフーガで、乗り替った蛯名騎手(といっても昨年5月の端午S・1着で騎乗経験あり)は1コーナーをまわるあたりから行きたがる馬を抑えるのに苦労していた様子だった。ハロンごとのラップタイムは次のとおり。
13.2 - 11.4 - 12.3 - 12.9 - 11.2 - 12.4 - 13.6 - 13.5
ブルーチッパーは行かせればグイグイと行ってしまうタイプで、ホワイトフーガにぴたりと付かれたこともあって道中でペースが緩むことがなかった。前半3F通過が36秒9で、5F(1000m)通過が61秒0。5F目に11秒2のラップがあるのは、行きたがるホワイトフーガを無理に抑えず、向正面で行かせてのもの。これに食い下がったブルーチッパーは、3コーナーを回るあたりで鞍上の手が動いて一杯になったようにも見えたが、むしろ行く気にまかせたホワイトフーガが行き過ぎた。58kgではさすがにゴール前で脚が上り、ブルーチッパーが差を詰めての2馬身差。
ホワイトフーガの勝ちタイム1分40秒5は、近年の勝ちタイムと比較すると平均的なもの。全体のレース内容は“並”といえるものだが、58kgを背負っていたことを考えると、やはり牝馬同士では圧倒的に力が抜けている。過去に58kgを背負ってこのレースを勝った馬では、2009〜2011年に3連覇を果たしたラヴェリータの3年目がそうだったが、ホワイトフーガはもはやそのレベルにあるといっていいだろう。このあとはレディスプレリュード(9月19日・大井)からJBCレディスクラシック(11月3日・川崎)連覇を狙うことになるようだ。
やや離れた4番人気だったブルーチッパーが2着で、ホワイトフーガと人気を分けたヴィータアレグリアが4着だったことでは、明暗が分かれた。
ヴィータアレグリアの近走は、1、1、2、1着と、着順だけを見れば派手だが、実際にはあまり厳しいレースを経験していない。エンプレス杯はアムールブリエに1馬身差の2着だったが、道中は13秒台後半から14秒台が続くゆったりとした流れ。加えて、アムールブリエ以外は重賞実績がほとんどない、いわばどんぐりの背比べというメンバーだった。続く前走の船橋・マリーンCで重賞初制覇となったわけが、逃げたのは今回と同じブルーチッパーだったとはいえ、1000m通過が62秒8というゆったりした平均ペース。ブチコの除外に、他の中央馬が自滅したことにも助けられた。マリーンCの回顧を見なおすと、<(東京シンデレラマイルと)ほとんど同じような流れで、同じような質のレースだった。>と書いているとおり。今回は、乱ペースとまではいえないものの、ヴィータアレグリアにとっては前2走とは違う厳しい流れに対応できなかったと考えられる。直線では苦しくなってよれていた。また、馬体重マイナス10kgの446kgが、3歳時以来の440kg台ということで、体調的なこともあったのかもしれない。
対して前走の川崎マイラーズ6着で人気を落とすことになったブルーチッパーだが、乱ペースには慣れている。昨年のレディスプレリュードでは1000m通過61秒2というペースで逃げて6着だったが、本番のJBCレディスクラシックでもみずからのスタイルは変えることなく、1000m通過が59秒4というイチかバチかというペースで逃げて見せた(8着)。そのときは結果はでなくても、そうした経験はあとになって生きてくる。JBCに向けては、今後のレースぶり次第ではスプリントという選択もあるようだ。
関東オークス勝利から中2週で挑戦したタイニーダンサーは、2着ブルーチッパーから6馬身離れての3着。ヴィータアレグリアがバテてしまったぶん、3着に残った。今回は54kgでも力が及ばずという結果だったが、4歳になってもタイトルをとれるかどうかは、今後の成長に期待したい。
実績馬4頭が上位を占めたとはいえ、5着に入ったクラカルメンは、4着のヴィータアレグリアにハナ差と迫った。走破タイム1分42秒8は、前に引っ張られたということもあるだろうが、南関東B級で勝ち切れないというレベルで、川崎の良馬場で、ということを考えれば頑張った。すでに7歳だけにこれを経験して上積みということも考えにくいが、南関東の牝馬同士の重賞、もしくは準重賞あたりではあっと言わせる場面はあるかもしれない。
ダートの牝馬といえばアムールブリエもいるが、1800mでも距離が短いというタイプで、今年はJBCレディスクラシックが1600mであることを考えると、この路線には来ない可能性が高い。となると、今年の牝馬路線もホワイトフーガ断然ということになりそうだ。残念なのは2度続けて除外となってしまったブチコで、JBCに間に合うかどうかは(賞金的にも)わからないが、定量戦になってホワイトフーガ1強で迎えるのと、ブチコが出るのとでは盛り上がりが相当に違うだろう。