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【ユーザー質問】祐言実行Q&A『日本人騎手が“折り合いに専念”するのはなぜ?』

  • 2016年07月13日(水) 18時01分


「折り合っている」の判断とは


Q. 安田記念の回顧記事は非常に興味深いものでした。とりわけ、「呼吸を合わせる技術」とはいったい何なのか、それがとても気になりました。もし、言葉で説明していただけるのであれば、ぜひお願いしたいです。

A.「呼吸を合わせる技術」イコール、「折り合いをつける技術」であることは間違いないが、そこにはどうしてもジョッキーならではの感覚が存在する。それを言葉で説明するのはとても難しいのだが…。

 たとえば、「手綱を引っ張っている」イコール「折り合いを欠いている」と判断する人が多いが、実際は、手綱を終始引っ張っていても最後に伸びるケースもあれば、手綱を引っ張っていなくても折り合っていないケースも多々ある。わかりやすく言うと、行きたがる馬を引っ張らずに放せば、見た目には気分良く走っているように見えるかもしれないが、それは決して「呼吸が合っている」、つまり折り合っているとはいえない。

 VTRを見返してみると、安田記念のリアルスティールもまた、見た目に明らかに引っ掛かっていた時間はごくわずか。その後は一見すると、4コーナーまで折り合っているように見えたかもしれないが、自分の感覚からすると少し違って、その感覚を言葉にしたときに、「呼吸を合わせることができなかった」という表現が一番しっくりきた。

祐言実行

▲安田記念の直線(撮影:下野雄規)


 競馬用語で、馬を「手の内に入れる」という言葉がある。馬を制御し、自分のコントロール下に置くということだが、あの日のリアルスティールでいえば、「手の内に入れることができなかった」ということになる。だが、見た目で判断できることばかりではないから、その技術を説明するのはとても難しい。

 野球やサッカーと違い、乗馬経験のある競馬ファンはごくわずか。だから、騎乗したことがある人間にしかわからない“感覚”を伝えることができず、説明する側としても常にもどかしさがある。だが、そこをきちんと伝えられなければ、競馬をより深く知ってもらうこともできないし、おそらく競馬人口も広がらない。乗馬経験のない人にも、できるだけわかりやすく伝えること──競馬に携わる人間として、これもひとつの課題だと思っている。

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Q. 外国人ジョッキーは、掛かるのを怖がらずにスタートから出していき、ポジションを取って折り合わせるのが巧い人が多いと思います。日本人ジョッキーはそうではなく、折り合いに専念している人が多いように思うのですが、こういった意見を聞いて、何か思うことはありますか?

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祐言実行 / 福永祐一
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祐言実行とは
2013年にJRA賞最多勝利騎手に輝き、日本競馬界を牽引する福永祐一。まだまだ戦の途中ではあるが、有言実行を体現してきた彼には語り継ぐべきことがある。ジョッキー目線のレース回顧『ユーイチの眼』や『今月の喜怒哀楽』『ユーザー質問』など、盛りだくさんの内容をお届け。

1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。

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